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非難の応酬

よろしくお願いします。

 出席予定の方々が全員揃った。ということでようやくパーティーが始められる。


 バルドウィン様と顔を見合わせて二人で大きなため息をつくと、気合を入れ直して会場へ向かう。


 庭に等間隔に並べられた白いテーブルと椅子には、もうすでに皆着席していた。


 一応の主役である私とバルドウィン様の席から一番近くにアルバン様、ツェーザル様夫妻、そしてユーディット様。そして、ユーディット様とご両親は申し訳ないけど離させてもらった。というのも、やっぱりユーディット様がご両親と一緒だと、いい影響を受けないと思ったのだ。


 ユーディット様本人がバルドウィン様を好きなのか、ご両親の影響なのか、見極める上でもそうすることにして正解だったのかもしれない。


 そして、そのユーディット様の周囲には独身男性を配置した。男はバルドウィン様だけではないということに気づいて欲しかったから。だけど、正直言ってユーディット様が彼らに興味を持つことはなさそう。だって、ねえ……。平民として汗水流して働くのが嫌だから当主になりたいっていう、性根が微妙な男性に惹かれる女性っているの? 根性を叩き直したくはなるけれど。


 彼らの方も、ド派手なユーディット様に引いているようで、目を逸らしている。


 うーん……ユーディット様は、性格はよくわからないけど美人だし、それさえわかれば男性陣の見る目が変わると思うんだけど。って、そんな男も嫌だわ。でも、まあ、選ぶのはユーディット様だし。


 とりあえず外に目を向けようって思わせることが大事よね。うん、そうだ。


 バルドウィン様と席に着くと、バルドウィン様が始まりの挨拶をする。


「今日は忙しい中、私たちのために来てくれてありがとう……」

「そんなのはいいから、本題を言えよ」


 だけど、バルドウィン様が言い終わる前に遮る声があった。ツェーザル様だ。明らかに邪魔しようとしているのがわかる。隣でクララ様がツェーザル様の袖を引っ張って止めようとしているけど、ツェーザル様は止まらない。


「俺たちはそんな言葉を聞きたくて来たわけじゃない。お前がどういうつもりで俺たちを呼んだのか、それが聞きたいんだが。この時期に結婚して、披露パーティーなんておかしいだろ」

「それはわたくしも思いましたわ。弱小過ぎてまったく眼中になかったヘルツォークなんかと縁を結ぶ意味がわからなくて。余程ヘルツォークの娘が魅力的なのかと思いきや、こうして見ても地味で平凡で何の変哲もないつまらない娘にしか見えませんし。魔法を使えなくなったことで、当主の気が触れたのかと思いましたわ」


 ツェーザル様に乗っかってきたのはユーディット様の母親である男爵夫人だ。よくもまあ、こうも本人を前に悪し様に言えるものだと思う。ただ残念ながら私は堪えていない。


 バルドウィン様が私を心配そうに見遣るけれど、私は笑顔で首を振る。そんな心配よりも先に、彼らを黙らせて欲しい。バルドウィン様が何か言わないと、私には答える権利がないのだ。


 そう、いくら私がやり込めたいと思っても。


 だけど、バルドウィン様にこの人たちをやり込めることができるんだろうか。反対に私が心配してしまう。本来なら当主権限というのは強いはずなのだけど、今現在のバルドウィン様の立場では当主権限を発動するのが難しい。どうするか……。


 私が考えを巡らせていると、バルドウィン様が朗々とした声でツェーザル様の問いに答える。


「文字通り、結婚披露パーティーのつもりだが? 時期がと言われても、私たちはきちんと婚約期間を経て結婚した。それのどこに問題があるんだ?」

「ありまくりだろうが。弱小男爵家と縁ができたところで、ミュラーに何の得がある? そんなこともわからないほどお前が馬鹿だとは思わなかったぜ。さっさと当主を降りた方が賢明だと思うがな」


 そう言って鼻で笑うツェーザル様に、周囲からそうだそうだと次々に同意の声が上がり始める。


 ……ツェーザル様はともかく、他の人たちって一人では何もできなさそうだわ。自らが声を上げないくせに同調圧力をかけて数の暴力で相手を威圧する。本当にどこまで性根が腐ってるのかしら。だから当主になれないんじゃないの?


 当主というのはある意味では孤独だ。自分の選択や決断に責任を持ち、一族を導かなければならない。そういった面でも、私はここにいる誰よりもバルドウィン様は当主に相応しいと思う。


 さて、バルドウィン様はどうするだろうか。成り行きを見守るしかできないのが歯痒い。


 だけど、バルドウィン様は落ち着き払っていた。


「さあ、それはどうだろうな。お前たちはヘルツォークを馬鹿にしているが、彼らは領主として優秀だと思う。事実、領地の規模は小さいものの税収はいつもきっちりしているし、領民からの不満はあまり聞かれないそうだが。発展させることは難しいが、維持をし続けるのは更に難しいとお前たちは知っているのか? ああ、すまない。治める土地がないから知る由もないか」


 おおっ。バルドウィン様が予想外に嫌味を言った。穏やかなだけの人ではないのね、やっぱり。だけど、そんなことを言ったら──。


「っ、名ばかり当主が偉そうに!」


 ツェーザル様が顔を真っ赤にして声を荒げる。怒りのせいか、ツェーザル様の手のひらから赤いものが出ているような……。


 気のせいじゃなく、爪くらいの大きさだった火が徐々に大きくなっている。このままでは危ない。今のバルドウィン様は魔法が使えないのだから。


 そして、ツェーザル様はその火をバルドウィン様に向けて放った。


「クソが……っ!」

読んでいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  こんばんわ。 今回の話は、現在日本の抱える問題とオーバーラップしました。 あくまで私の感想ですが、当主=首相に浴びせられる罵詈雑言で、 国を良くするための建設的な論議が進まない…  声を…
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