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ユーディットという人

ブックマーク、評価、感想ありがとうございます。

 私は声にならなかった。


 ──濃い。すごく濃い……!


 ユーディット様と思しき女性は、絵姿通りの綺麗な女性だった。金髪碧眼で少し目つきがきつい。そう感じるのは化粧のせいかもしれないけれど。


 でも、私が何よりも気になったのは、羽とドレスの輝き。輝きとは内面からにじみ出るもの……なんて比喩じゃない。物理的に光っているのだ。


 今日は雲一つない晴天で、今は昼下がりの屋外。ユーディット様が纏う光沢のある真紅のドレスに、もしかしたら宝石か何か光る物を縫い付けてあるのかもしれない。おかげで光が乱反射して眩しい。ぶっちゃけ、目が灼かれる。


 しかも、そのドレスに合わせてツバのある黒い帽子を被っているのだけど、何故か極彩色の大きな羽飾りが付いている。いや、羽が本体で帽子がおまけだろうかというくらいに羽が大きい。毛先から赤、青、黄に色が変わる羽を持つ鳥がいた覚えがないから、きっと染めたんだと思う。


 ちらりとバルドウィン様を見ると、バルドウィン様と目が合った。バルドウィン様も助けて欲しいような何とも言えない顔をしていたから、気持ちはわかると、頷くに留めておいた。


 すると、ユーディット様が刺々しい声でバルドウィン様を詰る。


「バルドウィン様、どうしてそんな地味な娘と見つめ合っているのです? それに、あなたを脅して無理矢理結婚させた奥様はどちらにいらっしゃるの?」


 おおっと。早速来た。これは暗に、そんな地味な女はあなたには相応しくない。私は認めません、ということだろう。しかもさりげなく毒を交えている。


 というか、あなたに比べれば皆地味な部類に入るでしょうよ。そのドレスの輝きはシャンデリアの光にこそ映えるもの。夜会向きでガーデンパーティー向きじゃない。


 反対に、今日の私は新緑に合わせて若芽のような緑色のドレスに、金糸の刺繍が所々に施されたおとなしめなデザインだ。そして、赤毛を三つ編みにしてシニヨンにしている。今日は内輪のものだけど、伯爵夫人としてのお披露目も兼ねているのだ。その地位に相応しい服装をするのは当たり前だろう。


「ああ、ユーディット。こちらが私の妻のメラニーだ。よろしく頼む」


 バルドウィン様がユーディット様から目を逸らしつつ私を紹介する。きっと彼も同じく眩しいのだろう。


 ここで、君がすごく眩しくて、とバルドウィン様が言ったら、きっと新しい物語ができるのだろう。ちょっと想像してウキウキしてしまった。これを言うとまたバルドウィン様のご機嫌を損ねるので、しばらくは言わないでおこう。


 とりあえず、私もバルドウィン様の紹介に続いて挨拶をする。


「はじめまして、メラニーと申します。よろしくお願いいたします」

「フン。こちらでは使用人も名乗りますのね」


 おおっ。当たらずとも遠からず。すごいわ、この方。

 私を馬鹿にしているようでいながらも、核心を突くとは……。内心で舌を巻いていると、バルドウィン様が驚きに目を見張りそうになっている。


 いや、駄目でしょう。こんなハッタリに狼狽(うろた)えちゃあ。


 私はこっそりバルドウィン様の手をつねった。それに驚いたバルドウィン様が私を見る。そうそう。私が悪戯したから驚いた風にしてくれないと。


 だけど、それが更に彼女の怒りを煽ったようだ。


「……っ、わたくしを無視しないでくださいませ!」

「ああ、すまない。ここで時間を取らせてしまって。もう何人か来ているから、先に会場に入っていてくれ。それではごゆっくり」


 怒られて正気に戻ったバルドウィン様が、フィッシャー一家を促した。ここでようやく気づいたけど、男爵夫人も負けず劣らずの派手さだった。ただ、こちらはまだ直視できるくらいの眩しさだったのでよかった。あちこちで乱反射すると、招待客たちの目がやられる。


 メイドに連れられてフィッシャー一家は奥へと向かう。男爵夫妻の後を付いて歩いていたユーディット様はしばらくしてから振り返った。バルドウィン様を切なそうに見ている。


 だけど、当の本人は呑気なものだった。


「いや、眩しくて直視できなかったよ。会場は日陰があるから大丈夫だとは思うが、見続けていたら目が見えなくなりそうだ」


 バルドウィン様は私に向けて苦笑まじりに言う。それを見たユーディット様が再び(まなじり)を釣り上げて私を睨む。


「バルドウィン様、わかってやってます?」

「うん? 何がだ?」


 ただ鈍いだけだった。それにしてもユーディット様は本当に夫人の言いなりになっているだけだろうか。あの視線は紛れも無い嫉妬。ただ、残念なことにバルドウィン様には通じていない。


 バルドウィン様に特別な感情を持っていない私が、そんな彼女の恋路の邪魔をしていいものだろうかと、ちょっと悩んでしまうのだった。

読んでいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 物理的に光っているとは… 私も負けてられないっ 彡´⌒`ミ ( ´・ω・)  
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