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届いた手紙の検分1

感想ありがとうございます。

 そうして新生活は始まった。だけど、バルドウィン様の時間が取れたのはその翌日までだった。


 領地からの報告、陳情、男性だけの集まり、というのもある。それらに逐一対応しているのだから、当主というのも大変だ。


 まあ、中でも一番大変だと思うのが、結婚祝いという名目で押しかけてこようとする身内の方々の手紙。それらを一々読んで返事を書かないといけないのだろうかと、うんざりした表情のバルドウィン様に同情してしまった。


 バルドウィン様が忙しくなったのもあって、私もガーデンパーティーに向けて準備に取り掛かることにした。


 ◇


「奥様、ご用意いたしましたが……」


 執事がバルドウィン様が読み終わった身内の方々からの手紙を自室に持ってきてくれた。


 バルドウィン様から絵姿を見せてもらい、名前や性格を教えてもらってはいた。だけど、又聞きだし、バルドウィン様の性格上相手が余程性格が悪くても、言葉を濁したり、庇うこともあるかもしれないと思っていたのだ。


 だから、この手紙から相手の人となりを知るのもいいかもしれないと、用意してもらった。


 だけど、執事の表情は優れない。


「旦那様が奥様に見せるのは、と渋られておりました。わたくしが申すのも憚られますが、あまり読んで楽しい内容ではないと思います」

「いえ。楽しくなくても読まないと。招待状を出さないといけないでしょう? 実際にガーデンパーティーでもお会いすることになりそうだし」

「それはそうですが……」

「心配してくれてありがとう。だけど、これも私の仕事だから」


 にっこり笑って告げると、執事は黙礼をして部屋を後にした。


 さて、一人になったことだし始めましょうか。


 まずは一通目。

 差出人はアルバン・ミュラー。この方はバルドウィン様のお父様の兄、つまり伯父にあたる。本来ならこの方が先代当主になるはずだったけど、素行に問題ありということで、後継者から外されたそうだ。

 本人的には納得がいっておらず、虎視眈々と未だに当主の座を狙っている、らしい。


 手紙を開いて文字を追っていく。が、突っ込みどころが多すぎて、読みながら目が滑る。


 要約すると、魔法の制御もできず人から後ろ指をさされ、笑われている甥が忍びない。結婚もしたことだし、自分に当主の座を譲って結婚相手とのんびり余生を過ごせ、というような内容だった。


 この方は不適格と言われて後継者から外されたのではなかったっけ。今度は自分が不適格だと笑われそうだけど、気づいてないんだろうか。


 まあ、先先代でこの方を後継者から外したバルドウィン様のお祖父様が亡くなられたから、後継者争いに再び参加できる、と考えたのかもしれない。


 ある意味では幸せな人なんだろう、きっと。


 それにしても遠回しに嫌味を言うのが上手い人だ。こういう人は陰湿なことをしてくるから気をつけよう。


 二通目は、と。

 ツェーザル・ミュラー。

 確かこの方は、バルドウィン様の又従兄弟。祖父同士が兄弟で、当主の座を奪い合っていたけど、この方のお祖父様は負けた。子の代、孫の代になってもいつか奪還してやると言っているそうだ。ちなみにお祖父様はご健在らしい。そんなお祖父様に負けず劣らずの血気盛んな方だそうだ。


 手紙には、お前は当主に相応しくない、こちらが正当な血筋だのなんだのと書いてある。この方は至ってわかりやすい。


 しかも、お前くらい出来が悪いと嫁も出来が悪いんだなとあり、それに対して自分の嫁がいかに素晴らしいかが書いてあって正直引いた。きっと、表面上は偉そうだけど、家の中では嫁の尻に敷かれているんだろう。


 それにしても、自分が祖父の操り人形になっているとは思わないのだろうか。もしくは当主というのは余程魅力的に映るのだろうか。


 まあ、いいか。この人は物理攻撃に走りそうだから要注意、と。


 ……まだ二通。思った以上に読むのがしんどい。バルドウィン様がうんざりするのもわかる気がする。


 なんでこんなにうんざりするのかと思ったら、差出人に相手の意思を汲む気を感じられないからだ。


 一方的に要求を突きつけて、断られるとも想像していない。まあ、手紙だからかもしれないけど、この調子だと実際に会って話しても話が通じるかどうか……。


 想像すると頭が痛くなってくる。手紙を片手にこめかみを揉みながら、重いため息をつくのだった。

読んでいただき、ありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 要求ばかりで相手に与えようとしない人は、どうしようもないので相手にしないが吉ですよね~…
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