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転生魔王は異世界を廻る(めぐる)  作者: 逸雲 仁弦(いつもにーと)
魔王、初めての転生、最初の世界。
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魔王とレベルアップ

魔物の群れへ突っ込んでいった魔王は例の自作した剣を振るい進行方向の魔物のを全てスパスパと一刀両断していった。今は少し余裕があるので他の冒険者の様子を見ておく。


他の冒険者達は重めの武器、大剣やハンマーを使って力任せに叩き斬ったり、叩き潰したりしている。すぐ近くの冒険者も魔王に当たらない範囲で思い切り大剣を振って魔物達を吹き飛ばしている。


「お前の武器すげぇな。魔物を薄っぺらい雑草を刈るみたいに斬ってやがるじゃねぇかよ。」


なんか少しだけ独特な例えな気がするが突っ込んだりはしない。


「だろう?間違えて俺の間合いに入ったら真っ二つだから気をつけろよ?」


「ハハハ、その腕なら間違えて入っただけで斬っちまったりしねぇだろうが。まあ、結構魔物を倒してるようだがこっちも負けてられねぇからな。期待の新人だろうと新人は新人だから先輩としてお前よりも活躍してこねぇとな!」


なんか知らない間に俺のことが広まってるようだ。初対面のやつまで俺を知ってるみたいだしな…


主に広めているのが某受付嬢と試験官だということを魔王はまだ知らなかった。

それに容姿のこともあり、街娘の間でもアイドルのファンクラブのようなものが作られていて、若干崇拝されているのだった。


さておき、哀れな魔物達は冒険者達にどんどん殲滅されていった。しかし、魔物はまだ残っている。


基本的にスタンピードでは比較的強い魔物が弱い魔物を追うように来るのでこれからさらに強い魔物が多くなってくるだろう。さらに、スタンピードの中には一番後ろに一際強い魔物がいる場合が稀にあるので最後の方で魔物が少なくなっても気は抜けない。


最初は牙の鋭いオオカミや額のツノから小さな炎弾を飛ばしてくるウサギと言った弱い魔物が出てきていたが、今は熊のような魔物や虎のような魔物が突っ込んで来たり、「オレタチニンゲンクウ」と言い出しそうな牙の生え揃った植物が体を鞭のようにしならせながら来た。


このくらいの強さの魔物になると苦戦する奴や怪我を負う奴らが出てきたりして衛生兵、ヒーラーも大変そうである。


魔王は多少強くなってもまだ大丈夫だ。相手のレベルはおそらく50くらい。レベル99の魔王は実質的にそこらの冒険者のレベル99より強い。レベル99のドラゴンにレベル99のネズミが勝てないのと同じような感じだ。


そんなわけでまだまだ魔物を斬り、殴り、蹴り、魔法を放ち倒していく。残りの魔物はあと三分の一ほどだろうか。このくらいになると他の冒険者達も集団でかかってこられたり不意打ちされたりすると危険なレベルの魔物が出始めてきた。


魔王がふと横を見ると衛兵のおっさんが無双していた。おっさん強し。魔物が旋風に吹き飛ばされる枯葉のように散っていく。魔物達もおっさんに吹き飛ばされ、解せぬと言いそうな表情(?)で倒れていった。


おっさんを見ているとなんだか他より大きく、色違いな魔物が目の前に出てきた。

リザードマンから知性を取り除いてゴツくした感じだ。ちなみにリザードマンは種族として元の世界に存在したが、この世界では見かけていない。


「ギュアァァァァ!」


鋭そうな長い爪を魔王に振り下ろす。魔王は剣で受け止めた。それにしても、魔王の剣でさえ斬れなかったことからしてかなり硬い爪なのだろう。


両腕を上から正面から横からと結構な早さで振り回してくるが受け止め、時に流し、隙ができるたびに相手を斬る。魔物は腕を落とされ、胸を斬られ、弱ったところで魔王に首を刈られてゆっくりと地面に倒れ伏した。


その時、魔王のレベルが1上がった。


「おぉ⁉︎レベルが上がった!」


この世界の法則はしっかりと魔王にも適用されていたようだ。まあ転生したわけだからおかしくないが。


事前に集めていた情報ではこの世界では世界最強と呼ばれる人間がレベル300近くだそうである。元の世界の勇者の2倍近くあると知って「マジヤバくね?」とキャラが崩壊しかけたほどの衝撃だった。ちなみに「世界最強」の名を持つ者として歴代最強だそうだ。


兎にも角にもレベルが上がった魔王はもっとレベルを上げようとさらにハイペースで魔物達を血祭りにあげた。魔王は身体中に返り血がついていて、なおかつ興奮で目が血走ったようになっているため魔物達が生まれたての子鹿のように震えたり逃走したりした。冒険者達もそれを見て引き気味な様子だ。


残った魔物達はすでにほぼいなくなっていた。残った少しの魔物は強い魔物だ。

オーガ系の魔物が主で、最後尾にはワイバーンがいた。ワイバーンは以前出くわしたやつより少しだけ低く、レベル100のようだ。魔王もレベル100なので倒せるだろう。

魔王はオーガ達の首を刈りつつワイバーンのところへ向かった。オーガも首がポンポン飛ぶ様子はさながら地獄絵図だ。

オーガは女性の様な悲鳴をあげて逃げ惑った。しかし刈られた。


ワイバーンの元へたどり着くと、すでに冒険者が二人いた。剣で斬ろうとしても鱗が硬いらしく、何度も叩きつけて破壊しようとしている。魔王もワイバーンに斬りかかる。鱗が斬れて落ちていった。


「おっ!すごい切れ味じゃないか。こいつを倒したら製作者教えてくれないか?…おっと危ない。」


ワイバーンは炎は滅多に吐かないがその巨体と硬い鱗、爪や尻尾による攻撃は強力だ。


「そんなに斬れる剣があんなら俺たちが引きつけるからサクッとやっちまってくれ!」


魔王は二人の冒険者達がワイバーンの顔面を殴ったり剣を叩きつけたりして注意を引いている間にワイバーンの首に向かって跳び、思い切り剣を突き刺した。ワイバーンは炎をあらぬ方向に吐きながらあっさり倒された。


「おつかれー。ほんとにその剣作った職人きいていいかい?」


「お疲れさん。ナイスファイトだぜ新人。」


「注意を引きつけてくれて助かった。剣は俺が作ったもんだ。」


「君が?随分アグレッシブな鍛治師だね…」


戦闘に参加している魔王が剣を作ったと聞いて苦笑するしかない冒険者。


苦笑されたが、スタンピードがちょっと面倒なイベント程度って認識してることに苦笑したいぐらいなんだがな。


魔王はこの規模のスタンピードがこんなに簡単に片付いてしまったことになんだかショックを受けていたのだった。


・・・・・・・・・


(そわそわ)


「あ!おかえりなさいベルクさん。初めてのスタンピードはどうでした?いい経験になりましたか?」


「まあ、なんというか、色々と驚いたな。」


「あ、それと怪我はないですか?」


「特にないな。それにある程度の怪我なら回復魔法で治せるしな。」


心配されるというのは結構いいものだ。元の世界は各々が自分に明日が来るかの心配をするだけでいっぱいいっぱいだったからすごく新鮮感じがする。


「怪我が無いなら良かったです。では冒険者カードをここに置いてください。討伐した魔物に応じて報酬が出るそうです。…えっと、報酬は金貨12枚です。」


ワイバーンを倒したおかげか、報酬はそれなりに多かった。


なにより、レベルが上がることがわかったのが一番の収穫だった。転生してきた自分もレベルを上げられるという保証などどこにもなかったのだから。


レベルの上がった魔王はひとまず世界最強を超えるために動きだしたのだった。

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