番外編:魔王の生産日記 (1頁目)
〜まだ元の世界にいた頃の魔王〜
(よし、ここなら誰も来ないはずだ)
魔王はストレージから何かを大量に取り出した。それは大量の金属塊や宝石などだった。
それらの一部を魔法陣に置くと魔法を起動させた。魔法陣が輝き、その光が金属塊や宝石などを包み込んだ。
しばらくして何かが完成したようだ。
魔法陣の上に置かれていたのは数々のネックレスや腕輪、指輪などだった。どれも間違いなく最上級に入るような出来で、神が作ったと言われてもおかしく無いほどにもはや神々しい作品だった。…実際作ったのは魔王だが。
「エンチャント/守護障壁/状態異常無効/魔法効果増幅/自動回復」
…エンチャントによりさらに付加価値が付いた。価値は金貨100枚を超えただろう。
おもむろにそれらをストレージにしまうと、
魔王城をこっそりと出て行った。
魔王城から少し離れた街道まで出ると、魔王はとある魔道具の指輪を指にはめた。
すると、魔王らしい禍々しく強大な魔力は最初から無かったかのように鎮まり、魔王っぽい角は消え、血のような色の瞳も黒い瞳に変化した。
これは魔王が敵軍の偵察をする時が来るかもしれないと思って作り、結局偵察ではなく人間の街でお忍びで色々なものを見たり買ったりするための魔道具になってしまったという過去を持つ指輪だ。盗難防止のため、ただただ頑丈で見た目は地味な仕様にしてある。そもそも人間が使っても意味はないのだが。
そうして変身した魔王は人間の街に入って行った。
・・・・・・・・・
ここは人間の街のとある大商人の店。
そこに一人の青年が入ってきた。
青年が店員に店長に自分の名前を伝えるように頼むとすぐに店の奥に通された。
「おお、ベルク殿、今回はどのようなご用件でしょうか?」
「今日はこれを売りにきた。」
そう言って青年がどこからか指輪を取り出して商人に見せた。
「鑑定…おぉ⁉︎こ、これはまたとてつもない逸品ですな…」
「まだいくつかあるが、後いくつ買い取る?」
「そうですなぁ、これ程になると金貨500枚といったところでしょうから多くは買い取れませんが、後3つ買い取らせていただきます。」
(…それにしても、こんな素晴らしい作品をそんなに作れるなんて実は鍛治の神様なのでしょうか?あとで拝んでおきたいですな。)
ではこちらが指輪4つ分の代金、金貨2000枚です。これからも是非この店をよろしくお願いします。
「ああ、また何かしら売りに来ると思うから待っていてくれ。」
そう言って去って行く青年が見えなくなるまで、大商人の男はずっと拝んでいた。
その後の店はより繁盛したとかしなかったとか。