魔王と毛玉
大きな魔力を持つ何かの元へ向かう魔王。
魔物やコウモリは見かけなくなっている。
おそらく大きな魔力を持つ何かには近づきたくないということだろう。
やはり強い魔物であるという確率が高いな。
上から垂れる水滴が当たるたびに微量に魔力の魔力を感じられる。これが目的の鉱石の元となるのだろう。鉱石の場所も近そうだ。
(ヒュォォ)
どこからか空気が動く音が聞こえてきた。
洞窟の壁で反響し、どこから聞こえるのかはわからないが魔物の呼吸音ならばかなり大きい魔物かもしれない。
ついに大きな魔力を持つ何かの待つところへ着いた。位置はこの大きな岩の向こう側か。
岩陰から頭だけ出して覗いてみる。
そこに居たのは、よく分からない白い毛玉だった。
そこそこ広い空間で、周りには目的の鉱石っぽいものがあり、その真ん中にその毛玉はいた。ふわふわのモサモサで雪のように真っ白な毛玉だ。空気の音も毛玉から聞こえるてきているようだ。
何か確かめるためにちょっと近づいてみる。
動かないし触ってみてもいいよな?
(ファサファサ)
なんだこのふさふさ加減は。
柔らかくてすごく手触りがいいな。
(もぞもぞ)
動きだした⁉︎魔力が多いからやはり強いかもしれない。油断できないな。
(もさっむくり)
「グオオォォォォォォォ!」
ぬおっ⁉︎ギャップが!
丸まっていた毛玉が立ち上がると形容し難い
二本のツノと牙を持った腹の出たいかつい顔の人型っぽい魔物だった。
本当になんなんだこいつは。
あのもふもふがこんないかつい感じの魔物だったとは…
さっさと狩って毛皮をもらって行くとしよう。
「オオォォォ!」
魔物が短く叫ぶと共に魔物から冷気が吹き出した。もふもふで過剰なほど暖かそうだと思ったがそういうことだったのか?
洞窟内に外と同じような大吹雪が吹き荒れる。さっさと倒さなければかなり面倒だ。
身につけている魔道具のおかげで寒くはないし雪は溶けてくれるが、溶けても水にはなるので大量の水の中では戦いにくいだろう。
真っ白な吹雪の中魔物が動く。意外と素早い大きな腕の一振りをなんとかかわす。幸い少しは気配が読めるからなんとかなったが、魔物自体あのもふもふで真っ白な毛によって吹雪と同化しているためかなり見えづらい。
魔物の腕を、足を、時々飛んでくる氷の塊をかわしていく。
何度も避けて安定して避けられるようになってきた。魔物も何度も避けられている怒りからか、動きが単純になってきている。
剣を抜き、次は気配を読むことに集中する。
……ここだ!
振り抜かれた腕を斬り飛ばす。
魔物が慌て、よろける。
魔王もそれを見逃さず、魔物の首に向けて剣を振るう。鋭く綺麗な刃が首に吸い込まれるようにスッと入っていき、抵抗なく頭と体を別れさせた。
魔物は崩れ、真っ白な吹雪が嘘のように止んだ。
魔王は死体をストレージにしまい、目的の鉱石を依頼の分と自分の分を採取し、洞窟の入り口へ戻っていった。
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