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GEDACHTNIS  作者: 渦蔦楓月
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第二章:雪国の悲劇(2)

リンの精神状態が大分落ち着いたところで、稔と裂が帰ってきた。

裂はパンパンに中身が詰まったビニル袋を持って帰ってきた。

そのビニル袋の表面にはスーパーのロゴが印刷されていた。

竣は腰掛けメモをまとめながら、それがここの近所にあるスーパーだと瞬時に思った。


それから、稔は事務所の隅っこに置いてある古びた棚から、全員分の食器と鍋やらを取り出した。

棚は昔からこの建物に残っていた物であり、ずっと残しておいたものであった。

食器や鍋などは後に買い揃えた物でまだ綺麗であった。

稔はそれらを持ち、左の部屋にあるキッチンの所まで運んだ。

だが、部屋と言っても扉で仕切られてはいない。

どうやら、昔この建物に住んでいた人が壊したか、あるいは湊がわざと壊したかだろう。

竣はその事を湊には聞いてはいない。

後者だった場合、後々めんどくさい事になるのは目に見えているからだ。


そんな事を思っていると、稔が料理を作り始めた。

気持ちよさそうに鼻歌を歌いながらだ。

だが、音がほとんどあってないことは音楽センスゼロの竣から聞いても分かる程だった。

竣も何か手伝おうかと、思ったが料理センスもゼロの彼が足でまといになる事は誰もが予想できることである。

それを自分でも十分理解している竣は一度稔の方へ目を配り、右の方へ向きたった今まとめ上がったメモを湊に渡した。


「う〜ん。完璧。竣はこういうことやらせるとやっぱり天下逸品ね」

メモに素早く目を通した湊はざらっと感想を述べた。

そして、そのメモを前に座っているリンに渡した。

リンはその細い手を遠慮がちに伸ばしゆっくりと受け取った。

「リンちゃん。依頼内容はこれでいいわよね?」

リンは軽く一通り読み流して、返事を返すつもりだった。

しかし、ある一点が目に止まり、もう一度ゆっくりと読み返した。

そこには【依頼金:なし】と、可愛い文字でそう書かれていた。

「どうかしましたか?」

リンの表情が少し固くなったのを見て竣が問いかけた。

「あの、依頼金なしと言うのは?」

リンが顔を上げて、小さい声でそう述べた。

「あ〜それわね。その城の奴らからチビチビ集るから大丈夫よ」

湊は顔の前で腕を左右に振った。

「で、でも・・・」

「大丈夫よ。私は困ってる人から金は取らない主義なのよ」

「おっ湊かっこいい〜!!」

湊は調子に乗って立ち上がり、胸の前に握り拳を作った。

それに便乗し、裂が湊をおだてあげた。


そして、気持ちよくなったのか湊は、

「私は正義の見方よ!!」

そう言って、リンに向かって親指を立てた。

「クス。湊ちゃん。おかしいぃ」

それを見ていた優衣が声を出して笑った。

それにつられて、竣と裂も笑った。

裂の場合は声をあげて豪快に笑っていた。

竣は笑いながら、リンの方に目を向けて見ると、彼女は口元に拳をあて、遠慮がちだが確かに笑っていた。

竣は彼女の純粋な笑顔を始めて見た。


事務所内に笑いの渦に包まれたのだった。


そして、暫くすると今度はカレーの匂いが事務所内に広がった。



シュウは城の王室にある大きなテーブルの一番奥の席に座り食事をとっていた。

大きな、大きなシャンデリアがここが王室であることを改めて実感させる。

だが、こういう大きなテーブルで一人での食事は何処か寂しい物があった。

しかし、彼は食事をただの栄養補給の場としてとしかとらえてはいなかった。

彼はテーブルに置いてあったナプキンで口を軽く拭いた。

そして、右に目線を移し、そこにいた執事に声を掛けた。

「レン」

「何でございましょうか?シュウ様?」

彼はレンの返答を聞き、フッと失笑した。

それを見てレンは少し困ったか顔になった。

「敬語はやめろと言ったはずだぞ。幼馴染なんだからな」

そう言って、シュウはレンにむかって微笑みを送った。

その表情が彼の美顔をより一層引き立てる。

「ふっ。ちょっと癖になっちゃてな。何年もやってると自然とこうなる」

レンはシュウに一瞬だけ微笑みを返した。

そして、真顔になり彼は問い掛けた。

「で、何で今、俺を呼んだ?」

シュウの表情はその言葉に反応し、微笑みが消えた。

「あぁ。例の事だ。後、一週間で実行しようと思う」

レンは、“はぁ”と溜め息をして、一回上を見た。

シャンデリアが眩しい。

そして、一拍置いて言葉を返した。

「やっぱり、やるんだな」

レンの声音は先程までと違い、重い物になっていた。

それは、シュウにも違いは一目瞭然だった。

「あぁ。遂に終わる。長かった・・・」

「そうだな」

レンはシュウの顔をジッと見つめていた。

少し涙目になっているのが分かった。

「やっと・・・やっと・・・」


シュウの声は明らかに涙声になっていた。

一滴の涙がシュウの目から落ちるのをレンは確かに見ていた。



竣はベッドの上に仰向けに寝転び、明日からの工程に付いてもう一度確認していた。

明日の早朝から移動を開始する。

まず、ここの近くにある駅まで行き、一気にこの国の最北端まで行く。

おおよそそこまで行くのに6時間はかかる見込みだ。


そこまで行くとまずは宿探しを決行する。

そして、宿を見つけるとその日とその次の日で聞きこみ調査を行う。

どうやら、次に兵隊が来るまでに一週間はあるそうなので余裕は十分にある。


大よその情報を手に入れることができれば、一気に突入と言うわけだ。


と、そこまで思い返していると、いつの間にか竣は夢の世界の住人になっていた。



「メイ・・・もうすぐ会えるよ・・・本当にもうすぐだから」

夜中。シュウは実験室に来ていた。

そして、例の通りその一番奥にある機械の前に立ち、小さく呟いていた。

その声音は今にでも消えそうなものだった。


「君が目を覚ましたら・・・行こう。空に一杯に光る星を」

そう言って、彼は俯いた。


そして、彼は周りの機械の音にかき消されそうな声音でかすかにこう言った。


「今度は絶対に君を守る―絶対に―」


彼は身を覆しゆっくりと歩いていった。

そして、扉をゆっくりと開けた。


“おやすみ”そんな声が扉の閉める音と同時にほんの微かに聞こえた。


また今回も戦闘シーン書けなかった・・・

次回に期待・・・

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