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秋葉原ヲタク白書55 萌えょ剣!

作者: ヘンリィ

主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。

相棒はメイドカフェの美しきメイド長。


この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第55話です。


今回は、ご町内の安全を守る"コスプレ火の用心"がバスターソードを持つ通り魔に襲われ、全員下着姿にw


敵討ちをリクエストされたコンビは、裏に国営放送によるAVのドラマ化をめぐる確執があるコトを知りますが…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 "パリオッシュ・ドーヌ"の惨劇


ミユリさんは、バイトをしている。


パリ発のベーカリーカフェなんだけど、日本上陸1号店が秋葉原駅のコンコースにある。

今朝は早番。可愛い制服に赤いベレーを被ってシャッターを開けると…スピアがいるw


「あ、あら?」

「ミユリ姉様…うわーん!」

「ど、どうしたの?」


突然泣き出したのはスピアだけではなく、両脇の魔法少女?と戦隊ヒロイン?も一緒w

あ、あれ?後ろにアメコミ娘もいるけど、何コレ?早朝のコスプレ大会?最近の流行(はやり)


「姉様、コチラのみなさんは御存知ですょね?」

「え?え?誰も知らないwどちら?」

「"セクボ"の"コスプレ火の用心隊"のみなさんです。うわーん!」


"セクシーボーイズ"とはアキバの外堀通り界隈を仕切るストリートギャングのコトだ。

私が知らないから泣き出したの?と狼狽するミユリさんだが、大泣きの原因は他らしい。


「ミユリ姉様は、ネカフェ難民支援でコスプレの古着を集めておいででしたょね?今から私達、着ているコスプレを寄付します。うわーん!」

「ええっ?!ネカフェ難民ってオシャレ感度高いのに着の身着のままの人とか多いから…って私がやってるのではなく、私のお友達がボランティアでやってルンだけど、わ、わ、わ、何が始まるの?」

「今から脱ぎます!着ているモノ全て寄付します!でも、下着は…ブラとパンティだけは勘弁してください!うわーん!」


すると、同じく大声で泣きながら、魔法少女とアメコミ娘&戦隊ヒロイン、ソレにスピアが一斉にコスプレを脱ぎ出す。この寒空に!


天気予報じゃ昼前から雪なのにw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「もぉ驚いてしまったわ、流石の私も。だってコスプレっ子が4人、突然、ほぼ雪空の下、中央口の駅前広場でみるみる下着になるのょ!」

「おおおっ!よく動画が拡散しないな。探してルンだけど」

「乙女なのっ!片っ端から鉄壁消して回ってるに決まってるじゃない!ダークウェブまでカバーして24時間体制よっ!」


ココは、僕の推し(てるメイド)ミユリさんがメイド長を務めるアキバの御屋敷(メイドバー)

宇宙空間に生命の水を噴き出すサマに準えて"土星の衛星(エンケラドス)バー"とも呼ばれる。


ベーカリーカフェ"パリオッシュ・ドーヌ"の惨劇?から12時間後。

御屋敷には(朝は下着姿だった)スピアほかの面々が御帰宅している。


「そもそも、私達のはコスプレじゃなくて、ある意味、仕事着。だって、夜な夜なアキバの街をコスプレしてパトロールしてるの!負け犬のヲタクが、コスプレして世のために働く、気高いサブカルチャーです」

「え?だから"コスプレ火の用心"なのか。酔っ払いのポイ捨てとかをガンガン注意しちゃうワケ?」

「何ソレ?バカにしてんの?痴漢や引ったくりなんかは平気で懲らしめちゃう。この前なんか、秋葉原公園から売人を追っ払ったのょ!」


こーゆーのを赤い気炎と逝うのだろうか。

"火の用心隊"に任せておけば安心…か?


「ソレが昨夜はどーしちゃったワケか、御町内の安全を脅かす何者かに"火の用心隊"は全く太刀打ち出来なくて!ブラックホールょ!"セーラーブラックホール"が現れたの!」

「誰ソレ?ムーンに出て来る新しい悪の女幹部?ムーンの遠縁の親戚のおばさんでキャットウーマンか女ジョーカー並みに強い、って辺りがお約束だ」

「ええっ?"セーラーブラックホール"を知らないの?ヒロピン…いえ、今や特撮AV界のメガヒットシリーズとして有名ょ?!テリィたんともあろうお方が…ミユリ姉様にコスプレさせて遊んでばかりいるから不覚をとるのょ!あぁ」


"ヒロインピンチ"とは、最終的にヒロインが敗北するバッドエンド系の作品群を指す。

負けちゃうヒロインは、魔法少女や戦隊&アメコミのヒロインなどが定番のアダルト系w


恐らく、セーラー戦士のオマージュで"セーラーブラックホール"も登場したのだろう。

いや、発売された、かな。ところで、オマージュとパロディの境目ってよくワカラナイw


「とにかく!強かったの、"セーラーブラックホール"が。私達もストリートギャングの端くれ、少なくとも女子に負けるワケにはイカないわ!と4人で袋にするハズが…」

「逆にカモられたのかwで、武器は?えっ!バスターソード?あの両手で握って振り回す大きな刃の奴?そんなの、よくストリートで使えるな」

「そうなの!もちろん、コスプレ用だから真剣ではナイのだけど、見事に斬り伏せられて有無を言わせず、朝になったらコスプレを寄付するよう約束させられてた。屈辱ょ。だから!テリィたん、仇を取って!"セーラーブラックホール"の正体を暴いて欲しいの!」


フト見遣ると"火の用心隊"の全員が、すがるような目で僕を見ている。

まぁ4人もいると玉石混淆だけど、乙女の祈り的なパターンで(あらが)えナイw


「でもなー。相手はその"バスターソード"で戦隊ヒロインの防弾ベストを切り裂いてるょね?スピア、以前に何処かで恨みとか買ってナイか?そもそも、何で相手をヒロイン名で呼ぶンだょ?」

「やむなくょ。だって、正体不明なんだモン仕方ナイでしょ。しかし、よく出来たコスプレだった。マントを止めるボタン穴とか、絶対に自作や工場製じゃナイわ。オーダーメイドによるプロの縫製だと思う。コスプレを扱う仕立屋なんて余りナイから、その筋から聞き込めば何かわかルンじゃナイかしら?例えば…その…センムさんとか」

「ええっ?!またセンムかょ。出来ればお近付きになりたく無いンですけど。ってか、最初からソレが狙いで御帰宅したな?」


スピアがペロリンと舌を出す。


センムは、新幹線の高架下に広がるコピー商品生産拠点"リトル広州(キャントン)"の総代理人だ。

昔は気の良いブルセラショップの親父だったがAI"アキバ皇帝"と出逢い見事廃人にw


目の前で話してる最中に意識が飛んだり失禁したりするから苦手なんだ。

幸い僕は上司?の"アキバ皇帝"に貸しがあるコトだし会うだけ会うかw


ブラックホールの話が何か聞けるカモ。


カウンターの中のミユリさんを見遣ると僕を見て彼女も小さく頷く。

今回は、自分の目の前で始まったコトで何か責任も感じてるようだ。


まぁ話はウケるとして、1つ気になる質問。


「でさ。スピアのトレードマークは、確かスク水だったょね。じゃ今朝はスク水を…寄付しちゃったの?じゃ…その時、スピアは…全裸?」

「だから、下着になったの!」

「ええっ?あのスク水の下って下着だったの?」


そりゃあ…良かったね←


第2章 野ウサギは跳ね逝く


珍しくセンムは正常だ。


「おぉ。"セーラーブラックホール"って、あの黒いセーラー戦士のコスチュームだろ?ウチの受注生産だ。伝票もある。発注者の名前もわかるぞ。えーっと…"(つき) 野兎(のうさぎ)"か。スマン。その名前しか聞いてナイ。役に立てんな」


全くだw


「でも、どーだテリィ。コスは良い出来だったろう?自信作ナンだ。一目でウチの縫い目だとワカルょな」

「その"野ウサギ"がメイドさん達を下着姿にして被害届が出てルンだけど」

「"リトル広州"界隈は、昔から犯罪が多くて…え?存在自体が犯罪だ?ほぉ上手いコトを逝うなwで、実は1ヶ月に2度も強盗に入られたコトもある。だが"ブラックホール"とやらがコスプレで出歩くようになってから、治安が良くなり安全になった。"野ウサギ"なんてフザけた名前だょな。ゴッサムシティでブルースウェインと名乗るようなモンだ。ま、脳天気なアキバ系と逝うよりはダーク入ってるアメコミ調なんだが"セーラーブラックホール"絡みなら、とりあえず"大宇宙企画"へ逝けょ」

「やっぱり?でも、気が進まないンですょ、センム。確か、昔、AVを撮ってた会社だょね」

「バカ。"大宇宙"と逝えば、今じゃ国営放送からも仕事が舞い込む立派な映像制作会社だ。確かパリのJapan Expoで"カワイイムービー"とか上映してたぞ。口が裂けても昔のAVの話とかするな」


流行りの"ヲタク長者"みたい。

世に逝う"大人リア充"って奴?


「とにかく!"セーラーブラックホール"の著作権は"大宇宙"にあるワケょ。テリィも昔"大宇宙"には世話になった口だろ?」

「リア充だったんで間に合ってました!しかし、そもそも"ブラックホール"自身がムーンの著作権を侵害してる気がするンですけど」

「まぁそー固いコト逝うな(いや、逝い出したのはセンムでしょw)。実はな"大宇宙企画"と"ブラックホール"のコスプレ女とはモメてるらしい。何があったのか知らんが"大宇宙"は著作権侵害を不服とし1年以上も彼女を探してる。いずれにせよ、情報は持ってるハズだ。"月 野兎"のな」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"大宇宙企画"は、意外にも高層タワーマンション中腹の1室にある。

てっきり、雑居ビルの小汚い1室だと思ってたら逆に小綺麗な1室だw


「やぁ。こんにちわ。"セーラーブラックホール"を撮ってる監督のバスクと申します。"ブラックホール"のコスプレをした女の件で、何か御質問があるとか?」

「"ブラックホール"のコスプレ女が昨夜、界隈をパトロール中の"コスプレ火の用心隊"と遭遇、全員を下着姿にしてしまったのです」

「ええっ?その下着姿も何かのコスプレ?しかし、昨夜のアキバはコスプレの花盛りだったのですね。知らなかった」


ヤレヤレと逝う顔のバスク監督。

白ニットのセーターにジーンズ。


スタートアップの若きCEOって感じ。

どう見てもAVの監督には見えない。


「で、コチラに来ればコスプレ女"月 野兎"のコトがわかる、と逝う人がいて」

「誰ですか?その"野ウサギ"って?例のコスプレ女なら、彼女の名はアンリ。ウチも彼女には迷惑してルンです。最悪のタイミングなので」

「最悪のタイミング?こんな路上コスプレ合戦にもタイミングがアルのですか?逆に良いタイミングが何時なのかを知りたいな」


ココで、バスクは溜息をつきながらも実は話したくて話したくてしょうがナイと逝う風情w


「未だ企画段階なので、厳秘でお願いしたいのですが"セーラーブラックホール"には国営放送から深夜枠で連続ドラマ化の話が来てイルのです。既にライセンス契約を締結したので"大宇宙"は契約遵守の観点からもアンリを探していたトコロです」

「うーん。御社に無断で"ブラックホール"のコスプレをすると、国営放送とのライセンス契約に抵触するワケか。しかし、そのキャラクターの権利にしたって、どーせ平成の頃に作者から騙し取ったンでしょ?当事はソレが普通でしたからね。でも、国営放送が変身モノをドラマ化か。しかも、ヒロインで?ひと昔前ならあり得ない話ですねw」

「ようやく、ヒロイン企画で一儲け出来る時代になりました。監督仲間からはAV、AVとバカにされ、子供も学校で"お前の父ちゃんAV監督"とイジメられて苦節10年。ついに、私にも"モテ期"が来ましたっ!」


えっ?誰かにモテてるの?


「しかし、国営放送の関心を買い続けるためには"セーラーブラックホール"に現代社会が抱える孤独と苦悩を、もっともっと凝縮投射する必要がある。時には暴力的な絵も厭わずに、です。つまり"セーラーブラックホール"を、もっとアメコミ調のダークな作品に作り変える必要がアルのです。そして、ソレが完成した時にこそ、アキバは日本のハリウッドとなる!"セーラーブラックホール"は、その前衛とナルのだ!」


おお!見事なアジテーション!

さすがは団塊ジュニア世代だw


「となると、今回、アンリさん、でしたか、例のコスプレ娘が夜のアキバで無目的に見える闇討ちをして回ってるコトによる影響は?」

「はかりしれません。国営放送の耳に入る前に何としても退治しなければ。そのためにも、貴方達ヲタクの力を借りたい。(コスプ)レイヤー同士のネットワークとかアルのでしょ?幸い、ドラマ化の時期は未定、仮に話が映画化まで進むとしても数年はかかる。運がよければ、この事件?も忘れ去られてるだろう。とにかく!ウチで集めたアンリの情報は全て渡します。だが、多くはありません。彼女は、神出鬼没。加えて逃げ足の速さコソ超人的だ。あるのは、ピンボケ写真と出没場所のメモ位です」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ところが、そのメモだけでサイバー屋のスピアの手にかかれば、アンリはたちまち丸裸w


「電話番号からスマホが割れて、ネットの履歴から銀行口座をたどって大体のコトはわかっちゃったけど、何から逝く?」

「アンリって、どんな人?一言で」

「ヲタクね。かなりキモい」


その夜、外堀通りに面した国民的ハンバーガーショップのB1。通称"パレス"。

ストリートギャング(セクシーボーイズ)の溜り場で彼等専属のサイバー屋であるスピアの仕事場だ。


「先ずね、テリィたん好みの話題から。アンリって、多分"パパ活"やってると思う。決まった男から、毎月振込を受けてる。しかも…何と今月はボーナスが出てるわw」

「おおっ!セーラー戦士の愛人!どストライクだなー生きてて良かった!」

「ハイ、鼻の下伸ばすのソコまで!お楽しみはコレからょ。で、彼女のパパは誰だと思う?毎月の御手当を振り込んでる男の名義は…バスク」


えっ?さっき会った特撮監督のバスク?

彼自身はアンリを敵視してたハズだが?


「どうやら、お2人には、男と女の事情がありそうね。しかし、あのメモからココまで調べがつくとは夢にも思ってなかったみたい。男って脇が甘いのょ」

「何だょ。僕達の前では、彼女が愛人だなんて、お首にも出さなかったのに。もう1回呼び出して是非とっちめてやろう!」

「待って。その前にアンリ御本人と会ってみましょうょ。彼女のスマホの電波をキャッチした。ソレに因ると彼女は…今、秋葉原公園にいるわ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


秋葉原公園は、昭和通り口改札を抜け、直ぐ右側にあるビルの谷間の小公園だ。

観光客でごった返す電気街口と比べ勤め人の往来がメインの"アキバの裏庭"。


"パレス"の入ってるビルの真裏だから、早速スピアとお出掛けし周囲に目を凝らす。

既に23時過ぎで新年会帰りの勤め人が家路を急ぐがポケGOやってるのか佇む人影も。


その内の1人目掛けてスピアが詰め寄るw


「ちょっち!アンタ!こんなトコロで何やってんの?」

「え?うるせぇな…ってか、わ!わ!あの時のスク水かっ?!ご、ごめんなさい!もうしませんっ!」

「そのセリフ、先週聞いたわよっ!何でまた舞い戻って来たのょ!アキバのストリートギャング、ナメてンの?えっ?!」


ココで、スピアは白ジャージのジッパーを下げてスク水の巨乳の谷間をチラ見せw

ソレだけで大の男がビビってシドロモドロだから、前回よっぽど懲りたのだろう。


でも、スピアの谷間を拝めて果報者だ!

まぁ、僕も御相伴には預かったけれど…


「誰だか知らないけど、さっき、万世橋(まんせいけいさつ)が見えるトコロで金勘定とかしてたょね?初心者丸出しで見ててコッチが恥ずかしくるなったょw実は、僕は万世橋(まんせいけいさつ)の刑事、新橋鮫の知合いナンだけど、最近ココらで"黒いセーラームーン"を見なかったかな?」

「馬鹿野郎。そりゃ"セーラーブラックホール"って逝うんだ。お前、最近のAV見てねぇな?大方やっと出来た彼女にムーンのコスプレさせて喜んでる手合いだろ?俺なんか、この前"ブラックホールの(コスプ)レイヤー"からスマホを巻き上げたんだぞ!」

「ええっ?アンリのスマホ、アンタが持ってんの?ダメじゃん!ソレでか!アンリのFBだと横浜在住のハズなのにスマホがアキバと新子安を往復してるからヘンだと思ったのょ!アンタ、新小岩に女がいるね?!」


すると、売人は胸を張る。


「ふざけんな。女は女でも内縁とかじゃねぇ。ちゃんと籍を入れた、れっきとした夫婦だっ!売人だけど結婚してンだ!悪いか?!」

「ひえっ?!け、結婚してンの?リア充なの?ま、まぶしい!」

「わっはっは。どーだ、ヲタクども。コレが結婚指輪だ!よく見ろ、ウリウリ」


売人はポケットからヤタラ年季の入った指輪を取り出してスピアに見せびらかす。

すると、御老公から印籠を見せられた悪代官みたいにスピアは(たちま)ち腰砕けだw


舗道にガックリと膝を折るw


「あっはっは!まるでクリプトナイトに出くわしたスーパーガールだな。特撮AVなら、ココからヒロインをやりたい放題だ!」

「ああっ…ダメ。力が、力が抜けて逝くわ。あーんテリィたん、後はお願い…」

「ええっ?僕か?マジで?」


僕は、慌ててスマホを取り出す。


「あ、もしもし?鮫の旦那?あぁ。彼なら見つけたょ。でも、協力する気はないって。え?署に連れて来い?うーん。話してみるけど、売人仲間を10人連れてくって息巻いてるけど?」

「え?え?Hey, men!誰に電話してンだ?まさか新橋鮫に直接電話してンのか?マ、マジかょwや、やめてくれっ!」

「え?鮫の旦那に、テメェがココに来いって逝え?そりゃ無理だ。なぁ、電話代わるから、その勢いで鮫の旦那に直接逝えょ。ウリウリ。え?わかった?鮫の旦那、ちょっち待ってくれ。後でかけ直す」


売人が、哀れを誘う、捨てられた子犬の目ですがりつくので、スマホを切るフリ。

もちろん、かけるのもかかってくるのも大嫌いで、僕は電話の掛け方も知らない。


「コレだ。コレが"ブラックホールのコスプレした娘"からアデロールの代金がわりに巻き上げたスマホだ。金を忘れたとかヌカしやがって、来週の同じ時刻にココへ金を持って来るまでの人質として取り上げた。何たって、スマホは都会女子の命だからな。まぁパスワードがわかんねぇんで、俺が持ってても生姜焼き定食、じゃなかった、しょーがナイんだが」

「ソレ、ちょっち貸してょ…ホラ」

「ど、どうやったんだ?」


スピアが調べてくれたアンリの誕生日でアッサリ開いたンだケド、今時そんなパスワード、田舎のおばあちゃんでも設定しないょw


「念のため聞いておくけど、アンリからスマホを巻き上げた夜、アンタ、何をしてた?」

「何?アリバイかょ?コレ、取調べなのか?ガキと一緒に病院にいたょ。ガキが薬を飲んだって逝うンで夜中に大騒ぎになっちまってさ。結局、勘違いだったンだけどな」

「ダメじゃナイか!子供の手の届くトコロに迂闊なモンを置いちゃ!もういい。万世橋には僕から逝い繕っておくから、アンタは急いで逃げろ!スマホはもらっとく。ありがとね」


すると、彼は僕にスマホを押し付け、駅へ向かう人混みとは逆方向へ小走りで去る。

新小岩まで走るつもりじゃナイだろうが、途中で振り向き僕にペコリと頭を下げるw


しかし、子持ちの売人とはな。

他に仕事を探した方が良いょ?


第3章 セレナーデが流れる夜に


「"セーラーブラックホール"の世界観に何かヒントがあるカモと思って、シリーズのAVを片端から見たンだ。あらかた見て"ブラックホール"の魅力が何なのか、やっと見えたょ!」

「巨乳でしょ?どーせ早送りで"肝心のシーン"だけ選んで見たンじゃナイの?」

「えっ!ええっ?!いっ、いやっ、そんなコトなくて…正義への情熱だ!と逝うのも真っ赤なウソです、ゴメンナサイ。そもそも、話は矛盾だらけなんだけど、シリーズは3年続いてて発売されたAVは57本もある。この内56本までがヒロインが敗死するバッドエンド。最近の死因は、時空移動の失敗やマイクロ化され窒息、宇宙人に肉体を乗っ取られたり。で、その度にヒロインは"あんな目"や"こんな目"に遭うンだけど、その間"ブラックホール"と逝うキャラクターを演じる女優は1回きりの橘ルリも含めると12人にのぼルンだ!つまり"ブラックホール女優"は、作品毎に結構違ってる。実際、中にはストーリー上は繋がりのある作品同士なのに"ブラックホール"を演じる女優が異なっていたりするw」

「ホント、よく見てるのね。実は"ブラックホーラーブラックホールのヲタク"で、この3年間、苦楽を共にして来たオカズなンじゃナイの?」


やれやれ。スピアは容赦ナイ。

で、いよいよ今宵は決戦前夜。


御屋敷(ミユリさんのバー)に作戦関係者が集合し、明日の手順の確認などに余念がない。

僕は、全体ブリーフィング的に"タメになる参考情報"を発信中だ。


「で、今回、問題となるのは"イエロー"の存在だ」

「"イエロー"と逝えば、ピンクと並ぶ戦隊ヒロインの定番カラーだけど"セーラーイエロー"なんて聞いたコトないわ」

「実は、シリーズ57作中、32〜36話までの5作は"永遠のOL"の名を欲しいままにしたAV女優、如月アニィの主演で、マニアの間では"ブラックホールOL編"と呼ばれ名作シリーズの呼び声も高い。もともと、OL編は単発企画モノとしてリリースされたが、販売好調でアッサリ3部作となり、外伝が2本追加されメガヒットに成長した。で、この"ブラックホールOL編"のシンボルカラーが"イエロー"なんだ。この時だけ"ブラックホール"のセーラー服は黄色に白のストライプになる。そして、この"イエロー時代"の監督を務めたのが…バスクだ。それ故、彼はファンからは"ブラックホール中興の祖"と崇められてる」


僕は、ココで一息つき御屋敷の中を見回すが誰も話を聞いてないw

まぁいいや。決戦前の自分の頭の整理もあるからもう少し独り言←


カウンターの中でミユリさんがクスクス笑うのが気に入らないが…まぁいいや。

あれ?ミユリさん、こんな時に誰に電話してるの?えっ?センム?何?何の用?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ゼロアワー。

作戦開始だ。


深夜の秋葉原公園。既に終電も過ぎ、駅のシャッターも閉まっている。

人影も完全に絶えた公園の鉄杭に寄り掛かって人待ち顔なのは売人だ。


ソコへ。


「お金は持ってきたわ。さぁ、私のスマホを返して頂戴。でも、こんな時まで私、コスプレする必要あるの?」

「おぅあるさ!じゃ、その前に改めさせてもらうゼ…公園で金勘定するな、という奴もいて色々ウルサいんだがw」

「じゃ、その間にお話ししょ?アンリさん?」


解説しよう。


先ず、売人に声を掛けて来たのは"セーラーブラックホール"のコスプレをしたアンリ。

背中には、例のどデカい"バスターソード"を背負って、何故か須田町方面からの登場。


で、2人目は売人なんだが"その場での金勘定"は時間稼ぎで、実は僕の指示w

そして3人目…と逝うか3〜6人目なんだけどスピア以下"コスプレ火の用心隊"。


もちろん、魔法少女に戦隊ヒロイン、アメコミ(スーパーガール)娘に隊長?のスピアは…

上半身にダッフルコートを羽織り多分その下はスク水?当然生足だ!気合が入ってる!


"彼シャツ"ならぬ"彼コート"w

スピアも、なかなかヤルもんだな。


「前にも、私に逢いに、マスクして来た人がいた。でも、その人の目的はセックスだった。だけど、貴女は違うょね?借りたお金を返しに来たんでしょ?そんなヒロインは初めてょ。見上げたモノだわ」

「でも、借りたのは(ヤク)代ょ?ソレにアンタに逢いに来たワケじゃナイし」

「とにかく!お互い武器を捨てましょう。そうしなきゃ、お茶も飲めナイわ。お願いょ」


ブラックホールは首を振る。


「ダメ。私自身の身の安全のためにも"バスターソード"は捨てられナイ」

「必要とコダワリは違う。ソレにアンリさん。貴女の正体は、かつて"永遠のOL"の名を欲しいままにしたAV女優、如月アニィでしょ?そして今は、映像制作会社"大宇宙企画"で国営放送からも手腕を買われてる気鋭の監督、バスクさんの愛人」

「ナ、ナゼそんなコトを?」


さすがのアンリもたじろぐ。


「昨夜、放射能蚊に刺されてから、ウチのテリィたんが鉛の壁の向こうまで全部見えるようになっちゃって。つまり、お見通しってコトなんだけど」

「テリィたん?あのメイド長とSF作家のコンビの?」


作家とメイド長のコンビだw逝い直せょ。


「あら?御存知なの?も、もしかして、貴女もテリィたんの元カノの1人?元カノなら、ちゃんとエントリーして。私、彼の元カノ会の会長なんだけど?」

「何ソレ?笑える。でも、私達の世界(コミュニティ)じゃ、彼は知られた存在ょ」

「貴女達の世界(コミュニティ)って?」

「アキバの特撮AV女優のコミュニティ。私がパンチラ女優のアニィだった頃から、彼のコトは知ってた」

「まぁ。なぜ?」

「私達の最後の頼みの綱だったから。ホラ、彼は警官とは違うでしょ?」

「警官嫌いって結構いるょね」

「警官は、必ずしもパンチラ女優を守らない。だから、彼みたいな人が必要なの」


当時のセーラー戦士は、ヤタラとティアラやスティックを振り回す今時のムーンと違い、パンチとハイキックで妖魔と戦ったものだ。


特にバスク監督は、ようやく存在を認められ出した"特撮マニア"や"ヲタク"の取り込みに躍起だったから当然リクエストも多い。


ミニスカートでのハードなアクション、ソレに伴うパンチラ強要、コスがイエローになってからもアンスコに純白を求めるコダワリ…


「そう逝ったコトの全てが嫌だった。でも、耐えたの。なぜなら…」

「有名になりたかったから?」

「監督のバスクを…男として愛してしまったから!」


女優と監督の禁断の恋!


コレに、ソレゾレ頭にAVとつくだけで、どーしてこーもイヤらしくなるのかw

で、このまま朝を迎えれば、ソレはソレでアキバの美しい夜で済んだンだが…


"コスプレ火の用心隊"が、告白を続けるアンリのコトを守るようにグルリと取り囲む。


「でも、バスクは私を捨てた。全て"ブラックホール"のアメコミ化のため。主演にグラマーでゴージャスなグラビアアイドルを起用し、彼もまた巨乳に走った!私、先月捨てられたの!僅かばかりの手切金で!」

「げげっ!アレ、手切金だったの?愛人手当の冬ボーナスかと思った」

「実は、私も確かに手切金にしては桁が少ないかなって…ってか、貴女、何でそんなコト知ってるの?私の口座とか盗み見したワケ?貴女、何者なの…もしかして、巨乳?」


マズい!歯車が次々と狂い出す!

スピアはトランジスタグラマーw


"パンチラのアニィ"ことアンリが背中の"バスターソード"を鮮やかに抜く。

アンリを囲んでた"コスプレ火の用心隊"が蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。


さらに、その時…


「キャー!見て!気違いょ!」


最悪の上を逝く、超最悪のスタートだ。

外堀通りへ向かうカップルの女が叫ぶ。


やや?頭にウサ耳のカチューシャ?

お持ち帰られ中のバニーガールか?


真夜中の外堀通りは、特に最終電車が出た直後とか長距離客を狙うタクシーで溢れるw

バブルの頃みたいな光景だが、その後タクシーは台数を減らしながら朝まで列を作る。


だから、夜中も萌え系女子のお持ち帰り客など外堀通りへ向かう人影は絶えナイ。

銀座や六本木と比べて、アキバはバニーも客も幼いが、やるコトだけはヤルのだ←


ところが…


「バスク!バスク、貴方と逝う人は!」

「ええっ?ア、ア、アニィか?な、な、なんで"セーラーブラックホール"のコスしてンだ?何かのバイトか?」

「問答無用!その巨乳バニーは誰なの?キェー!」


何と!お持ち帰り客はバスクだょw

何やってンだょお前!フザけるな!


「私、パンチラは嫌だったの!でも、胸がない君にはパンチラしかないって。貴方はそう逝った!君のパンチラが特撮の未来に大人のヲタクを呼び込むんだって!」

「そ、そんなコト逝った…かな?あぁ逝ったょ確かに逝った!しかし、よく覚えてるなw」

「そりゃ覚えてるわょ!でも、貴方は今、ハリウッド路線へ舵を切った。グラマー&ゴージャス美女に走った!だ・か・ら!もう、パンチラおばさん愛人に居場所はなくなったのょ!キェー!」


止めに入る"火の用心隊"を蹴散らし、腰を抜かしたバスクの前に仁王立ちとなって"バスターソード"を頭上に振りかざす"ブラックホール"!


振り下ろせば、模造品とは逝え巌流島の小次郎みたいに頭はカチ割るには十分なシロモノだ。

ビルの谷間にバニーの悲鳴が響く!その時、何処からともなく場違い?なJAZZが流れ出す。


次に起きた光景を誰もが忘れない。


人も車も消えた神田明神通りの6車線の道路一杯に火花のナイアガラの滝が幻出する!

いや、ホントだ!新幹線高架の手前に突如として、花火大会のナイアガラの滝が出現!


バスクもバニーも、火の用心隊も売人も、目を見開いたまま、その場に凍りつく。

そして、そのナイアガラの滝をバックに、ゆっくりと歩み出る女性のシルエット。


アレは…"ムーンライトセレナーダー"だ。

アメコミ調の黒のボディスーツに黒ブーツ。


あぁ。ミユリさんの登場だw


第4章 "稲妻キネシス"は永遠に


"ムーンライトセレナーダー"は、僕が原作(ほん)を描いてる"地下鉄戦隊メトロキャプテン"に去年登場した"途中女幹部"で既に戦死。


もともと、年度末で"新戦隊"に移行する"メトロキャプテン"のクリスマス商戦向けの追加キャラだったが既に役割を終えている。


地球に衝突する彗星の盾となり滅んだ月王朝の末裔で、月の裏側にある宮殿の廃墟から飛来する彼女の必殺技は"稲妻キネシス"だ…


で、その夜現れた"セレナーダー"は文字通り"稲妻キネシス"で全員をシビれさせる。

痙攣しつつ七転八倒する関係者?に争うコトの虚しさを説きアンリに新しい恋を薦める。


"でもテリィ様はダメょ"と念を押して立ち去る彼女の後姿を、みんなが茫然と見送る。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


やれやれ。今回はジグソーパズルのピースは果たして全部集まったのだろうか。

とりあえず、翌日夜の御屋敷に集った常連、特に女子の話に耳を傾けてみよう。


「ねぇねぇ!みんな、見て!2時間前にMy Tubeに"セーラーブラックホール"の動画がUPされてる!松住町架道橋の下で老婦人がバッグを引ったくられルンだけど、ソレを"ブラックホール"が取り戻してるっ!」

「ええっ?!あ、ホントだ!"ブラックホール"は、活動を再開してるンだ…しかし、実に鮮やかな"バスターソード"さばきだな。わ、ひったくりの奴、命からがら逃げてくぞ」

「アンリかしら?それとも、別のコスプレ女子がアンリの活動を引き継いだの?でも、認めるわ。うん。似合ってるわ、彼女。とっても良い感じ」


御帰宅中の常連が、スピアのPCの画面で動画投稿サイトの画像を食い入るように見る。

"バスターソード"を振りかざし、ひったくりを追っ払うブラックホールに老婦人がすがりつく。


ルークとレイア姫の構図だw


「しっかし、アンリの"バスターソード"さばき、神ょねぇ。歯が立たなかったわー。何処で習ったのかしら?まさか…ジェダイなの?」

「ソレ、スゴく良い質問。どうやら、アンリって何処かの県警でカラーガード隊とかやってたみたいょ。だから、長モノを振り回すのは御手のモノなのね」

「そうそう。ソレについて良い話があるわ。例の国営放送でのドラマ化の話だけど、議論があって、どうやら、アメコミ路線から変更があるみたい。新路線では、アクションに色彩感や立体的な空間構成が求められるコトになるンだって。ソレこそ、カラーガードの出番だと思わナイ?」


ええっ?グラマラス&ゴージャス路線はどーなっちゃうのかな?

ハリウッド式エンターテイメントから北朝鮮マスゲームへ転進?


バスクの独白(モノローグ)を聞いてみよう。


「アニィは2年ちょっと前、俺に"ブラックホール"のコスを着る許可を求めてきた。当時の俺は、AVコスプレの"ブラックホール"をヒロインとして愛していたし、ソレ以上にアニィを愛してもいた。だから、著作権で守られたコスを着たいと逝うアニィの申し出は、理に適うモノだった。あの頃のアニィは、俺が描く"ブラックホール"を体現してた。勇敢で高潔でスキニー(やせっぽち)。そして、何より、この世界がより良くなるコトを望んでた。アニィが語る全てにロマンがあった。だから、俺はアニィの全てを歓迎した。先月、国営放送との契約に目が眩んでアニィに手切金を振り込んだ時、彼女と初めて逢った頃を思い出した。俺は、一晩泣いた」


多分、彼はホントに泣いたのだろう。

だって、その時奴は涙ぐんでたから。


「自分の身は自分で守れと伝え、アニィに"バスターソード"を買う金を渡した。以来、あのソードがアニィのトレードマークになった。なぁ。この話、俺は誰かに話しておきたかったんだ。でも、わかってくれ。もし、国営放送に知れたら…ドラマ化はボツか?少なくとも俺は監督を降ろされたろう。"ブラックホール"は、俺の最後の接点だ。このキャラ達や…アニィとのね。そうだ。何ならメールを見せるよ。当時の国営放送とのやりとりを見てもらえればわかるハズだ。俺が"ブラックホール"に本気だったと。俺が愛した"ブラックホール"は、決してハリウッド調のモノなんかじゃナイってコトをさ」


バスクは一息つき、再び語り出す。


その後"大宇宙"の重役連中が国営放送の御偉方と食事する話を聞いた。でも、俺は、呼ばれなかった。大方、著作権料の分け前を寄越せとか騒ぎかねないと思われたのだろう。だから…俺が知ったのは、割と後のコトなんだ。国営放送がアメコミ路線から変更したコトを知ったのは」


例の売人から聞いた話もソレを裏付ける。


「アンリは、彼女が愛したバスクが"ブラックホール"のハリウッド化を本心から望んだとは、最後まで信じてなかった。と逝うのは、彼女は、バスクがアキバのストリートで名乗ってたネームを知ってたからだ。バスクのSN(ストリートネーム)は"電磁ギャレット"。"ブラックホール"のファンサイトの当時のコメント欄で、よく見かけるネームだ。確かに、ハリウッドの商業主義はバスクを狂わせたカモしれない。しかし"電磁ギャレット"の名でつくコメントがブレたコトはナイ。コメントの多くはスキニーな"セーラーブラックホール"礼賛だった。その後、国営放送の影響で"ブラックホール"の企画は刷新され、アメコミ調のより暗く残忍なモノに変質して逝く。"ブラックホール"の誕生にも新設定が加わった。"電磁ギャレット"は、ソレが不満でコメントも熱を帯び、最近では、AVの不買まで宣言してる。国営放送による改変は"間違っテル"と真正面から断じてルンだ」


ココで売人は悪戯っぽい笑みを浮かべる。


「ところで、AV女優"如月アニィ(Anie)"にrを噛ますとアンリ(An"r"ie)になるンだ。で、その"r"を噛ませたのはバスクなんだが、何の"r"だか知ってるか?回帰する(return)の"r"ナンだってょ。だから、彼女は回帰する。バスク監督の下で。必ず」


再びバスクの独白(モノローグ)だ。


「あの頃の俺は、俺自身も社会も嫌いだった。ある日、ストリートで少女暴行が起きた。犯人の手がかりは似顔絵だけ。すると、彼女は、その似顔絵をアキバの電柱に貼って回りだした。その内、マスコミも騒ぎ出した。AV女優のビラ貼りって、ネタ扱いされてたけどな。でも、俺は彼女を見て思ったんだ。あんな子を主役に本編を撮れたらいいなって。それで、彼女の事務所に連絡を取った。君、ヒロインにならないかってさ。AV女優だけどいいの?彼女には、そう逝われた。で、その日から"ブラックホール"の企画が走り出したンだ。彼女は恩人だ。あのどーしよーもナイ泥沼のような日々から、俺を、彼女が救ってくれたンだ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「でも、ミユリ姉様が数あるヒロインの中でも"ムーンライトセレナーダー"のコスプレをするのは何故?テリィたんの作品だからと逝うのはワカルけど。やはりソレだけじゃナイでしょ?誕生の由来とか?」

「あ、ソレを私に語らせるの?私、ヒロインの誕生秘話には詳しいのょ。シータ放射線を浴びたり、放射能サソリに刺されたり、ジャスト原子力発電所の爆発に巻き込まれて、とかね。昔のSFだと、放射線を浴びると直ぐ巨大化するのがお約束だったけど、今は特殊能力に目覚めるのがルールみたい」

「しかし、姉様の"ムーンライトセレナーダー"のスーツ、ホントに素晴らしい出来ょね!あの"稲妻キネシス"の電撃、どうやって発射するの?」


御屋敷の女子連中の話題は"セレナーダースーツ"に移ってる。


あのスーツは、コスプレ好きの娘のためにカルテルのボスが金に糸目をつけズつくらせたコダワリの品だ(税金対策もあったらしいが)。


ところが、肝心の娘はその後、新進気鋭の監督ブンバガバンに騙され何とAVに転身、スーツだけが制作したセンムの下に残ったらしい。


で、電撃を撃つメカを内蔵してるコトになってるようだが実はそんなメカは存在しない。

スーツは、ある種の人間に備わる電気ウナギ的な発電器官の能力を引き出すに過ぎない。


つまり、あのスーツで電撃を撃つボスの娘やミユリさんは…もしかしたら新人類(ミュータント)カモだ。

電撃と逝えばヤキモチ焼きの宇宙人娘のアニメもあったから宇宙人説も捨て難いケドw


とにかく!


誕生日をパスワードにログインしたアンリのスマホには、コスプレの画像が一杯だ。

で、その大半は…実はコスプレしたバスクとの幸せそうなツーショットだったンだ。


その中ではバスクは"ブラックホール"と異次元で結婚する"タキシードお面"のコスだ。

ソレを見た時、常連の誰もが、いつか同じ構図でツーショットを撮りたいって思ったのさ。


コスプレには、夢が詰まってる。

なあ?みんなもそう思わないか?



おしまい

今回は海外ドラマで見かけた"街を守るコスプレイヤー"をネタに、コスプレ火の用心隊やバスターソードのコスプレ通り魔、AV監督や売人などが登場しました。


TVで見聞きするNYの都市風景を秋葉原に当てはめ展開して描いています。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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