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白木院純は✘✘である。  作者: 雨宮零
5/5

4話 白木院純の策略

 

 放課後。

一条君がまた数学でわからないところがあるということで、私は一条君に数学を教えていた。

 今は一通り説明が終わり、一条君が実際に問題を解いているところだ。

 「あ、解けた!」

一条君がパァァッと顔を輝かせる。

 やっぱり一条君は飲み込みが早い。あまり教えなくてもすぐに解けた。

「白木院さん、本当にありがとう!」

「いえいえ。教えるのは好きなので」

 普通ならここで帰るところだが、今日は違う。一条君と話さなければならないことがあるんでね…‼

 私の予想だと、おそらく一条君は金宮君のことが好きだ。

 二人がまだ付き合っていないのならば、私のやるべきことは一つ―!

 「突然で申し訳ないのですが…一条君は、好きな人や気になる人はいらっしゃいますか?」

 この質問、きっと一条君の答えは「金宮君」だろう。

 つまり私のやるべきこととは―一条君と金宮君をくっつけること!

そうすれば私は安定したBLが毎日見られるし、一条君も金宮君も好きな人と付き合えて、Win-Winだ。

 HAHAHA☆感謝したまえ、一条君!

「好きな人…かぁ」

 そう呟くと、一条君は寂しそうな顔をした。

…ん?これは、何があったか聞いた方が良い系か?いやいやいや、本人から話さないんだしよくね?

 私は気にせず、自分から話すことを待つことにした…のだが、先程から一条君がチラチラとこっちを見ている。

控えめにしてるけどバレバレだから。

 ってことは、聞けってこと?…結構めんどくさいな、一条君。まあ「そんな薫も可愛い!」とか言ってくれる金宮君がいるからいいんだけども。ん?何がいいんだ?

 「何か…あったんですか?」

 一応心配したような顔をして聞いてみる。

皆に優しい白木院純様だからね私は。

「実は僕、ついこの前彼女と別れちゃってさ」

 え、彼女いたの⁉

あんなスパダリ(金宮君)が近くにいるのに⁉何で⁉いや、言うほどスパダリじゃないか金宮君。頭悪いし。まあ他の面に関してはやっぱりスパダリだけど。

 …あ、もしかして。

一条君は自分は女の子が好きだと思ってたけど本当は男だった的なアレか?

 とりあえず別れた理由を聞こう。

「何故ですか?」

「わからない。彼女からいきなり、別れようって言われてさ。」

 え、あっちからなの?

…一旦整理しよう。

 昨日、一条君は「向日葵畑を抜いて。」のような恋愛がしてみたい、と言っていた。

なのに女の子と付き合っていた。更に、その女の子にフラレて寂しそう。

…どういうこと?一条君の恋愛対象は、男の子じゃなかったの…?

 私の中での疑問は大きくなっていくばかりだ。

「彼女にとって、僕は一体何だったんだろうなぁ…」

 こっちとしては貴方にとっての男とは一体何なのかを知りたいんですけどね…。

 …向日葵畑のような恋愛。私はBLのことしか考えていなかったが、主人公の気持ちの移り変わりとかも関係があるのかもしれない。

向日葵畑の主人公の男の子は最初、女の子が好きで…それからフラレて、それをなぐさめてくれたのが主人公の友人(男)だった。それから男…つまりその友人を好きになっちゃって、でもそれを主人公は認めたくなかった。だが、ある女キャラのおかげでそれを認めることができ、結果幼馴染の男子と付き合う…という内容だった。

 つまり一条君は、今男のことが好きだけどそれを認めたくなくて女の子と付き合ったけどフラレちゃってやっぱり金宮君のことが好き!…みたいな状況なのでは…?

 考えれば考えるほど、そうとしか思えなくなってきた。

 謎は…解けた!

「一条君」

私に名前を呼ばれ、一条君は顔を上げた。

「…私は、一条君が本当に好きな人と付き合えばいいと思います」

「え…?」

「本当は、その彼女は自分が求めてるものとは違ったんじゃないですか?」

「…!」

 一条君は、驚いたような顔をする。

 一条君…。昨日の言葉は、ヒントだったんだね!安心して、私が恋のキューピットになってあげます!

「それを彼女さんもわかっていたんじゃないでしょうか。…一条君。確かに、本当に好きな人と付き合うっていうのは難しいし、怖いと思います。でも、大丈夫です。きっと…その、一条君が好きな相手も…一条君のこと、好きだと思うので…」

 あーもー恥ずかしいな!私に言わせんなよっ!…でもこんなこと言えるの私しかいないか!

「と、とにかく!貴方が好きな人と付き合ってください!それでは!」

 私はパパッと荷物をまとめ、逃げるように図書室を出てしまった。


〜〜〜〜


 「…え。」

俺と図書委員しかいない図書室に、俺の声が響いた。

 俺の…好きな人と付き合えばいい…?俺が…好きな相手も…俺のことが好き…だと…⁉

 顔が熱くなるのがわかる。

これはもう告白といってもいいんじゃないだろうか?だって、そうだよな?俺が好き…というか、付き合いたいのは白木院だし、俺が好きな人(白木院)も俺のことが好きって、間接的だがもう「一条君が好き」って言ってるようなものだよな!?

 は…はは…。

やったぞ、やり遂げたぞ、俺‼

 ここまでくれば後は簡単だ。明日、明後日には白木院は頬を赤く染めながら俺に告白してくることだろう。

 ああ…今思うと、長い道のり(5日間)だった。

 最初の内は全く白木院に近づけなかったんだよな…。人気が凄すぎて。牧野と護衛隊にも振り回されたな。でも放課後に白木院が声をかけてくれて、やっと接触できた。それから図書室で勉強して…その次に本で仲良くなって…また勉強教えてもらって…。

 …正直、ヒヤヒヤすることもたくさんあったが、終わり良ければ全て良しである。

 俺は勉強道具をしまい、幸せを噛みしめるようにゆっくりとした足取りで図書室を出た。





 放課後になった。

 ブレザーのポケットに入れておいた、小さく折り畳まれた手紙をもう一度読む。

 「放課後、教材室に来てください。白木院」

 遂に来た、この日が。

あの図書室での勉強会から約一日、俺は白木院から告白されることとなったのだ。

 手紙をポケットにしまい、俺は教材室に向かう。

 あー、やばい。これからのことを想像してしまう…。

白木院と付き合ったら…どうなるんだろう。全校生徒からは羨望の眼差しを受けることになるな…。それに白木院は金持ちだから、デートなんかは凄い所につれていかないと。ああ、食事なんかも高級レストランにつれていかなければ満足しないかもしれないな…。なんて、まだ告白されていないのに考えてしまう。

 …これから白木院と俺のきらびやかな生活が始まるのだ。

 俺はニヤける口元を抑えたあと、扉を開けた。

 「…え?」

 俺は驚いた。

だってそこには、顔を青くさせた翔がいたから―。

 何で翔が?と、聞く前に翔が口を開いた。

「俺、お前のこと好きだけど…でも、そういう意味じゃないっていうかっ…だから…その、ごめんーっ‼」

「ハァ⁉」

 何の話だよ⁉

俺が引き止める前に翔は教材室から出て行ってしまった。

 いや、何だったんだ、あれ…。

何か誤解されているような…ような…。

 ―俺、お前のこと好きだけど…でもそういう意味じゃないっていうかっ…―

…っああ‼

それ、俺が翔のことを恋愛的な意味で好きだってことになってないか⁉

 何だそれ、ぜんっぜん違うぞ⁉すごい誤解!

 翔があんな誤解をしたのって…白木院が仕組んだのか?

だってここに呼んだの白木院だし。今ここに白木院いないし。

 わけわかんねーよ⁉何で俺が翔のこと好きってなるわけ⁉

 これじゃ俺がまるでホモみたいじゃないか!

早く翔の誤解を解かないと!

 俺は廊下を走り、翔を追いかけた。



〜〜〜〜



 朝、いつもの登校。

ただ、私はいつもよりも機嫌が良い。

それは何故かって?

それは―

昨日、私は恋のキューピットになってあげたから!

 いや〜あの二人、今日手を繋いで登校してたりするかな〜?

金宮君、私が一条君のこと教えたら、口パクパクさせて喜んでたもんな〜。

 ふふ、楽しみ〜。

 スキップしそうなくらい浮かれた足取りで校門をくぐる。

 次の瞬間、私は誰かに手首を強く掴まれた。

「っえ、?」

私は驚いて相手を見た。

 そして、その相手を見てまた驚いた。

 「一条君…?」

一条君は私の手首を掴んだまま、校舎裏へと歩いて行く。

「手、痛いです…離してください…」

「…」

「あの…一条君…?」

「…」

 怖い。

こんな一条君、見たことない。

いつもニコニコしてて、優しくて、純粋で圧倒的受けな一条君じゃない!

 どうしちゃったの…?

 体育館裏に着くと、一条君は私を壁に追いやった。

 そんな私と対立するように立つ一条君。

え、何?何が始まるの?

 怖いし、一条君。

「ねぇ」

「は、はい、何ですか…?」

 怖さのあまり、声が震えてしまう。

な、なんでこんなに怒ってるんだろう…一条君…。

「翔から全部聞いたよ。俺が…翔のことを好きだって、翔に言ったんだって?」

「あ…はい」

「なんで?なんでそう言ったわけ?」

「だって…一条君、金宮君のこと…好きでしょう?だから、お二人が付き合ったらいいな、と思って私…」

「…付き合うわけないだろ…」

ツキアウワケナイダロ

つきあうわけないだろ

tukiauwakenaidaro

付き合うわけ…ないだろ⁉

 その瞬間、私は大きなショックを受け、膝から崩れ落ちた。

 「そんな…そんなわけ…だって、だってこんなにも一条君は金宮君のこと思ってるのに…!」

「え?いやいや、だから俺は翔のこと―」

 二人が付き合わないなんて、相思相愛じゃないなんて…!

「私は…そんなの認めないぃぃぃぃいいい!!!」

 私は涙を流しながら、その場を走り去った。


 「白木院純は✘✘である。」を読んでいただき、ありがとうございます!

 よろしければ、ブックマーク・評価・感想をお願いします!

 

 次回は、物語が急転します!

純が熱を出してしまい、そのお見舞いとして一条君が純の家へ行き、そこで…⁉

 お楽しみに!

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