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第69話

8階層あたりから人型のスケルトンやゾンビ、10階層からレイスが出るようになった。10階層までなら物理でごり押しすれば何とかなるかもしれないが、実体のないレイスは光属性の攻撃魔術か、光属性の武器がないと辛いだろうとのこと。そもそもがアンデットに傷を負わされると瘴気を纏ってしまい、アンデットの仲間入りを果たしてしまうので、パーティーに【浄化】が使える神官必須だ。15階層からはやや大型のアンデットや、索敵しにくいアンデットが混じり始めた。20階層からはレッサーデーモンなんかがちらほら…こいつら動きも素早いしすごく強い。でもアイテムは結構いいの出た。『オーバーポーション』なんてオーバーヒールと同じ効果があるアイテムだ。オーバーポーションは8個出た。

テント暮らしで25階層まで降りたが、なんかすごい近寄りたくない感じに棺桶がレイアウトされている。

パカリ…

棺桶を開けて出てきたのは男の人だった。


「皆転移石を…がっ!」


ベルさんのお腹から背中に男の人の手が貫通している。男の人の動きは早すぎて見えなかった。ベルさん…!まだ死んでないだろうが、それは時間の問題。私たちには自分が男の人に勝てるビジョンが全然見えなかった。転移石を割りたいが、ベルさんを見捨てていくわけにはいかない。皆凍り付いている。

私は自分に【スピードUP】をかけると収納リングから取り出した『武器』を片手に男の人に特攻かました。ニタリ…と男の人が笑う。

お腹がすごく熱い。卵の黄身でも割るかのように易々と男の人の手が私のお腹につき入れられている。またしても動きが全然見えなかったが、男の人は私の苦痛にゆがむ顔を鑑賞して愉悦を覚えているようなのでチャンスは今しかない。私は最後の気力で武器を男の人にかすらせた。そして意識が途絶えた。


「ジゼルちゃん!」

「ジゼル!!」


皆の声で目が覚めた。


「あ…ベルさんは…?」


ベルさんが私の視界に映った。


「アタシは無事よ。『オーバーポーション』でこの通り。でもジゼルちゃん、アタシのことなんて見捨てていいから、危ないことはしないでちょうだい。あいつの狙いが心臓だったら死んでたわよ。」

「すいません…でもベルさんが死ぬときは私が死ぬときです。」


ベルさんが困ったような顔をして私に口付けた。


「愛してるわ。皆を守ってくれてありがとう。」

「上手くいったんですね。」

「ええ。」


私の構えていた武器はミニミニピコハンだったりした。最後かすらせることに成功したと思うから多分あの男の人は3歳児になったはず。


「3歳のバンパイアを討伐よ。流石にバンパイアでも幼生体はそんなに強くなかったみたいね。シータたちでも相手になったらしいわ。」


ベルさんが溜息をついた。


「完全なアタシの判断ミスね。【エンチャント・光】が効果的過ぎて調子に乗ってたみたい。この階層はアタシたちにとってまだ手が届かない部分よ。皆、危険に晒してごめんなさい。もう二度とこんなことが無いように気をつけるわ。」

「大丈夫っす。自分も調子に乗ってたみたいっす。敵があんなに圧倒的だとは…」

「初めて遭遇したが、バンパイアって言ったら通常の冒険者なら恥も外聞もなく逃げの一手を取ると聞いたぞ。」

「Sランカーたちは普通に渡り合えるらしいからアタシたちの想像のつかない領分ね。生きてるステージが違うとしか言いようがないわ。」

「とりあえず帰ろう。」

「そうね。」


皆で転移石を割った。結構深くまで潜ったし、お宝も出た。ベルさんのトレジャーハンタースキルがすごい。因みにこのダンジョンで出たお宝はほぼすべて呪われているようだ。【アンチカース】が大忙し。うちのパーティーが手元に置いておこうと決めたのは

オーバーポーション×7:オーバーヒールと同じ効果のあるポーション。

ハイドマント:マントを纏っている人物の魔力、気配、姿、匂い、音、足跡、指紋、諸々の存在全てを隠蔽できる。

ジョブチェンジスクロール(農耕士):開いた者のジョブを『農耕士』に変更できる。ただし更したらジョブレベルは1から。効果永続。使い捨て。

コマンダーチャーム:このチャームをつけている指揮官の下についている集団はどこに居ても指揮官の指揮が届く。ただし指揮は一方通行。

である。

オーバーポーションは5人で最低1人1本は持った。

ハイドマントは誰に貸してもいいけど、一応ミーニャさんの所持。ジョブチェンジスクロールはイシュさんが欲しがった。なにも言わないけど、多分ツィーツェルタさんの為だと思う。コマンダーチャームは言うまでもなくベルさんがつけた。小さな金のブローチである。このダンジョンの性質的に高値で売れそうなアイテムもある。

破魔弓:この弓で射られた矢は全て破魔矢となり、アンデットに大ダメージ。

ホーリーソード:光属性を帯びた魔法剣。

祓いの柄杓:柄杓には常に聖水が満たされており、この柄杓の水を被ると瘴気が祓われる。

このダンジョンの探索には最適なんじゃないでしょうか。

因みにバンパイアのドロップは売らないではおくがどう処理しようかは悩み中。

未熟なエリクサー:飲んだ者を不老長寿にする霊薬。未熟なので、いずれ死は訪れる。

これを市場に出すのはちょっとまずいかなあ…と思うのだ。ていうか多分3歳児にしちゃったから『未熟な』シロモノが出ちゃったのだと思うので、Sランカーたちがミニミニピコハンを使わずに正規の方法でバンパイアを倒したらドロップは…

知らない。私たちは何も知らない。

私とベルさんは服のお腹部分に大穴が開いてるのでかなり奇抜な装い。血まみれだし。

ギルドには寄らず、宿屋に行って一泊した。

皆でベルさんの部屋で今後の方針を話す。


「どうするっす?しばらく新しいダンジョンに潜るっすか?」

「うーん…」


ベルさんは悩んだ後言った。


「止めておきましょう。」

「危ないからか?」

「というか精神衛生上ね。新しいダンジョンが発見された…ってなったら潜る人は当然いるわよね?」

「はい。」


それこそ新しいダンジョンなんてどんなお宝が眠ってるかわからないし、当然潜るだろう。


「でもあそこは死霊のダンジョン。コツを掴まないうちは皆すぐにアンデットに変えられちゃうわ。皆は昨日まで冒険者だったフレッシュなアンデットと戦いたい?」

「嫌だにゃ。」

「嫌っす。」

「嫌です。」

「嫌だ。」

「でしょ?アタシたちは予定通り黄のダンジョンを目指しましょ。」


『銀の匙』は新しいダンジョンには潜らないことが決定した。

ベルさんは地図タブレットのメモを見ながら、新しいダンジョンへ行ける地図を描いている。ギルド提出用だ。


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