第58話
後日、冒険者ギルドに告知が出た。
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緊急依頼【アンデットの討伐】
アーレンスの森の先にある、マルフォーレ国、ダイダンの街がアンデットタウンになっている。アンデットの発生を抑える光明石を神殿の台座に収める協力をして欲しい。
成功報酬:1億ギル
応募締め切り:藍狼歴6018年2月27日まで
※最優先の護衛対象がいる
※ランクは不問だが光属性の魔術かそれに類する能力の所持者希望
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いやあ…難しいんじゃないかな?光属性を持つ『魔術師』は相当レアだ。勿論いないわけではないよ?でも2月27日って明日だよ。1日でそんなレアな存在探せるの?といいつつ私ならその問題解決できちゃうから悩ましい。
「ベルさん…どうしましょう…?」
「見なかったことにしましょう。多分昨日のお姫様の依頼だろうし、彼女に対していくらか好感を持ってるけど、アタシはジゼルちゃんの安全第一よ。」
「わかりました。」
私たちパーティーは見なかったことにして、今日は採取依頼を受けた。果実の採取だ。収納バッグ(収納リング)を持っているので傷ませず大量に運べる。私たちは指定された果実の採取だけだが、ベルさんは鑑定眼鏡をかけて、森の中の至る所に生えている薬草なんかを採取している。
たっぷり採取して買取りしてもらった。
ギルド併設の酒場では昨日のお姫様が、不安げにレモンティーを飲んでいる。
「こんにちは。」
「ああ…昨日の、銀の匙か。レモンティーでも飲んでいかぬか?妾の奢りじゃ。」
ちょっと迷ったがご相伴に預かることにした。
温かいレモンティーはとても美味しい。
「急いで国元に返らなくてはならない理由がおありなのですか?」
ベルさんが水を向ける。
「うむ…そなたはきちんと察したようであるが、妾はマルフォーレの第二王女よ。名はマルティナという。年は14。22歳の姉上がいる。姉上は優秀な人で将来は良き女王となられるだろう。それはいいのじゃが…父上は子の出来にくい人でな、姉上を設けた時43歳じゃった。妾は51の頃の子じゃな。我らは人族。短命種じゃ。父上は子の出来にくいところからも察せられるようにあまり体が強い性質ではない、65歳という若さではあるが、どうも崩御されそうなのじゃ。床に就いたという知らせが届いた。一国の王宮じゃ。腕の良い治癒術師などいくらでもいるが、彼らの見立てによると『ちょっと早いけど老衰である可能性が一番高い』らしいのじゃ。父上が亡くなる前に一目会いたいと最短距離を突っ切ろうとしたらまさかのアンデット騒ぎじゃ。今更ダイダンの街を迂回する道を取ったら1ヶ月ほどロスしてしまう。それに街のアンデット化は見過ごせない。正直困っておる。」
「そうですか…」
全員で苦いレモンティーを味わう。本当にこのままマルティナ姫を放置して、私たちは後悔しないだろうか…私だったら両親の死に目に会えるものなら何をおいても駆けつけたい。
「すまんな。陰気な話で。それにしてもそなたらは見目麗しいのう。中々注目されておるではないか。」
「有難うございます。」
「マルティナ様は明日までに人員が揃わねば如何するのですか?」
「うむ…正直街いっぱいのアンデットは対応策を持たぬ我らには荷が重い。ダイダンの街を迂回してマルフォーレに入ることとなるじゃろう。ダイダンの街は王都で光魔法の使える人員を確保して派遣じゃな。1ヶ月もロスしたら父上の死に目には会えない可能性が高いが。」
うう…
「ベルさん…」
何とかしてあげたいよ。ベルさんの腕をとる。視線で訴えかけるとベルさんに困ったような顔で撫でられた。
「因みにマルティナ姫は姉姫様に発言力はおありですか?」
「?まあ二人きりの姉妹だしそれなりにある。なんじゃ?仕官したいのか?」
「いえ、逆です。権力がおありな方には出来れば関わってほしくないのです。」
「ふむ。まあ、姉上はさほど強欲な方ではないぞ。無理矢理人手を召し上げるようなことはまずないと言ってよい。」
「そうですか。ちょっと重大な案件が出来たので少し席を外しますが、お気を悪くなさらないでくださいませ。」
「?うむ。」
『銀の匙』パーティーメンバーは酒場の隅に集まって緊急会議。
「ジゼルちゃんは助けてあげたいのよね?」
「はい…」
「にゃーは反対にゃ。ジゼルの力が露見するのは危険すぎるにゃ。」
「うまい事『金喰虫』であることは隠していけないか?」
侃々諤々。助けてあげたい気持ちがあるのは皆一緒。でもみんな私を大切に思ってくれるゆえ、反対意見も出るのだ。
最終的にはダイダンの街の浄化に手を貸すことで終着した。
「お待たせしました。」
ベルさんがマルティナ様に話しかける。
「うむ。パーティー内での揉め事か?」
「ええ。少々活動方針に意見の相違がありまして…」
「察するにそちがパーティーリーダーなのじゃろ?人数が多ければまとめるのは大変じゃろう?」
「いえ。皆すごく良い子たちなので…ただすごく良い子だからこそ時々リスクのあることに頭から飛びこみたがることもあって。」
「良心と保身を秤にかける案件じゃな?」
マルティナ姫はすごく頭の回転の速い少女であるらしい。すぐにピンと来たようだ。
「ええ。で、話はまとまったので端的に申し上げますが、うちのパーティーには【エンチャント・光】を使えるパーティーメンバーが在籍しています。」
「な!なんじゃと!?」
「しかし、【エンチャント・光】が使えるパーティーメンバーが権力者に囲われがちなのはご存知ですよね?我々は自由を愛する冒険者。囲われるのは困るのです。」
「ふうむ。では我らに力を貸してくれぬか?もし力を貸してくれるなら、我らは召し上げたりなどせんし、他の貴族に無理を言われた際の後ろ盾にもなってやる。」
「では交渉は成立。うちのパーティーは秘することは色々あるので、無暗に詮索なさいませぬように。」
「わかったのじゃ。」
「では依頼を受けてまいります。」
私たちは「堂々と自己主張し、尚且つ誰も手を付けていない事故物件的依頼」の用紙を剥がし、カウンターへもっていって受理された。すぐにマルティナ姫様が呼ばれ、改めて引き合わされ、お互いが自己紹介。マルティナ姫と、マルティナ姫の身の回りの世話をする侍女のローラさん、剣士のマクガイアさん、盾剣士のロッソさん、魔術師のシャープさん、槍士のドグさん。因みにシャープさんの使える属性は、水と土と風と火と無らしい。私は色んな属性を使ってるからピンと来ないかもしれないが、この世界で魔術師の使える魔術の属性は1~3属性が多い。5属性はかなり優秀な部類に入る。
「出来れば、すぐにでも出立したいのだが、旅の準備にどれくらいかかる?」
「明日で大丈夫ですよ。我々もそろそろ移動しようかと準備をと整えていたところですので。」
ベルさんが大法螺吹いた。まあ基本『迷い人の糧』と『クリエイトウォーターボトル』で凌ぐつもりだ。テントはあるし。
「では明日6時出立ということで、待ち合わせ場所は…」
話し合った後、イシュさんの家へ行き、旅立つ旨を伝えた。リトリアーネさんもシグルドさんも寂しいと言っていた。




