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第5話

1階層の転移石の登録石の所に出現して、そのままダンジョンから出た。

まずはギルド。ゴールデンアップル収穫の達成報告をしなくてはならない。リエッタさんの元へ行く。


「リエッタちゃん、依頼の達成報告よ。」

「はいはい。『ゴールデンアップルの収穫』でしたね。買取カウンターに出してください。」


私たちは15個の林檎を出した。


「10個は依頼分。もう5個は通常買い取りをお願いするわ。あと、魔物からのドロップ品の買取もお願い。」

「はい。」


リエッタさんはそれぞれの林檎の状態をチェックして、依頼報酬と買取金額を査定した。そして魔物ドロップも査定。


「ジゼルさんは功績が溜まっておりますのでEランクへの昇進が認められますが、いかがいたしましょう?」

「ふつーに昇進で。」

「畏まりました。」


ギルドカードを更新した。


「やっと『一人前』です!」


嬉しくてはにかんだ。


「良かったじゃない。頑張った甲斐があったわね。」

「うんうん。ジゼルは随分成長したものな。」


二人に祝ってもらえてちょっとこそばい。


「ベルファーレさんはいい加減にCランクに上がってもらえませんか?功績溜めすぎです。実力が離れすぎるのはある意味ランク詐欺ですよ?」

「Dくらいのぬるま湯が丁度良かったんだけどねえ…仕方がないから昇進するわ。」


ベルさんのカードも更新された。近づけたと思ったらまた遠い人に。今の私じゃ比べるのもおこがましいくらいの実力者ってことなんですね。


「ところで、リエッタちゃん。この街で信用が置けて、罠の解除ができる技師って誰かいないかしら?」

「罠解除…ああ。お宝を見つけられたのですね。」


リエッタさんがベルさんが抱える大きな箱を見て言った。


「中身はクズかもしれないけれどね。」


ベルさんが苦笑した。質素な木の箱っていうところがあんまり期待が持てないんだよねー。私は宝箱を見つけるのなんてこれが初めての経験だけど、先輩の冒険者曰く、宝箱にはピンキリあって、物によってはそこらのちょっと知性ある魔物が道具入れとして使っている箱…と言う場合もある。そう言う場合、罠の解除料を払う分こちらの赤字となる。


「そうでない可能性もありますよ。こればかりはギャンブル要素が強いのですが。技師の方は心当たりがございますので、今、紹介状をご用意いたします。」


リエッタさんは引っ込んで5分くらいで戻ってきた。大方テンプレートのようなものがあって随所に少し書き込みをする程度なのだろう。


「こちらを持って、クリート通りの突き当りを右に曲がったところに『ワナワナしちゃう♡』というお店があるので、そこに入ってください。」

「変な名前ですね。」

「腕は確かですから。」


リエッタさんは苦笑した。


「ありがとう。行ってみるわ。」


3人でぼちぼち歩く。


「結構重いけど何が入ってるのかしらねー。」

「ボクはちょっと前まで魔法剣が欲しかったけど、今はエンチャントで要求が満たされてるから、なんか便利なマジックアイテムだといいな。」

「ジゼルちゃんは?」

「わかんないです。換金できるものが嬉しいですけれど、そうでなければ1日だけ3歳児になれる薬とか…」

「3歳児になりたいのか?」


シータさんが意外そうな顔で聞いてきた。


「いえ。ベルさんとシータさんの3歳児のお姿は可愛いだろうなあ…って。」


是非見てみたいです。『お姉ちゃん』って呼ばれてみたいです。


「ジゼルは子供が好きなんだな。」

「3歳児のシータなんて悪ガキで、世話が大変よ?」

「そ、そんなことないぞ!ジゼル、無実だ!」


シータさんが必死に弁解するので思わず笑ってしまった。

クリート通りの突き当りを右に曲がり、『ワナワナしちゃう♡』の看板を探した。滅茶苦茶クラシカルでお洒落な看板にお洒落な斜め文字で『ワナワナしちゃう♡』と言うふざけた店名が書かれたお店があった。お店の外観もお洒落。ちょっとドキドキしながら3人で扉を潜った。


「いらっしゃいませ♡」


赤毛に黒い瞳の綺麗なお姉さんが出迎えてくれた。


「ここで罠の解除をしてくれると聞いたのだけれど。」


ベルさんが一旦箱を地面に降ろし、ギルドから渡された紹介状を差し出しつつ言った。


「承っております♡そちらの宝箱ですか?」


お姉さんが紹介状を受け取って軽く目を通して答えた。


「ええ。」

「ではこちらのお部屋へ♡『ワナワナしちゃう♡』オーナーのエイミィが承ります♡」


別室に連れていかれた。大きな作業台といくつかのツールが置かれていた。


「そちらの作業台の上に箱を載せてください♡拝見します♡」


ベルさんが作業台の上に宝箱を載せた。エイミィさんがじっくり箱を調べている。


「開けると毒ガスと矢が飛び出てくる仕掛けになってますね♡」


恐ろしい罠仕掛けられてるなあ。その場で開けてたら毒ガスでお陀仏だったよ。


「解除できるかしら?」

「勿論です♡この仕掛けだと解除するのに30万ギルかかりますがよろしいですか?」


意外と安いな…と思って思い直した。実家なら慎ましやかに暮らしていって、1年暮らせる額。王都の平の商人の平均月給より高い。


「ええ。これお金ね。作業している間は部屋の外に出ていた方が良いのかしら?」

「見ていてくださって構いません♡確かに30万お預かりいたしました♡」


エイミィさんがベルさんからお金を受け取った。そして罠の解除に取り掛かり始めた。見たこともないツールを使って、次々に作業をこなしている。熟練の腕前と言った感じだ。生憎私には何をしてるのか、さっぱりだったけれど。ベルさんはじっとエイミィさんの作業風景を見ている。シータさんは興味なさげにぼんやりしている。

40分ほどして罠が解除できたらしい。


「ばっちりです♡開けてみますか?」

「ええ。」


エイミィさんが無造作に箱に手を触れ、蓋を開けた。

中に入っていたのは何かが詰め込まれた小汚いズタ袋が1つ。ボロボロの革バッグが一つ。シンプルなナイフが1つ。石斧が5本。錆びたシャベルが3つ。カビの生えた木製のお皿が5つ。いつ作られたのかも定かではないカビの生えた干し肉が6つ。うーん…ぱっとしない。


「あら。お金が入っているわ。」


見るとズタ袋の中にはぎっしりとお金が詰まっている。小銅貨なども入っているが、驚いたことに白金貨も混じっている。

因みにお金の価値は

小銅貨1枚=10ギル

銅貨1枚=100ギル

小銀貨1枚=1000ギル

銀貨1枚=1万ギル

小金貨1枚=10万ギル

金貨1枚=100万ギル

白金貨1枚=1000万ギル

王金貨1枚=1億ギル

である。計算してみると白金貨8枚、金貨252枚、小金貨377枚、銀貨6枚、小銀貨564枚、銅貨42枚、小銅貨3枚入っていた。合計2億7932万8230ギルだった。見たこともないような大金だ。間違いなくこの宝箱はアタリだ。


「このバッグとナイフからは何か魔力を感じるわね。」


ベルさんがバッグとナイフを見た。未鑑定の品は危ないので手には取らない。


「アイテム鑑定も1つにつき10万ギルで行っておりますが、いかがなさいますか?」

「お願いするわ。」


ベルさんがエイミィさんに20万ギル渡した。


「はい♡」


エイミィさんは何だか野暮ったい眼鏡を取り出した。それをかけて、アイテムを見る。


「このナイフは『剥ぎ取りナイフ』みたいですね♡解体したい魔物の死骸に突き刺し、魔力を流し込むと、一瞬でパーツごとに解体された姿になるようです♡ダンジョンシティではあまり需要がありませんが、ダンジョンの外の魔物には有用ですね♡バッグの方は…おめでとうございます♡『収納バッグ』です♡重量制限は800キロ♡その重量を越えなければ幾らでも収納できるバッグです♡中の時間はバッグの外の60分の1の速さで流れるそうです♡バッグの中は23℃で固定♡ダンジョンシティでは最も需要のあるタイプのマジックアイテムです♡売りに出したらすごい値が付きそうですね♡因みにどの品も呪われてないので、手にとっても大丈夫です♡」

「ナイフもバッグも売らないだろう?」


シータさんがベルさんに尋ねる。こういう時の最終判断はいつもベルさんが担っている。頼りになるんだよなあ。


「そうね。私たちのパーティーで大切に使いましょう。」

「アイテム抜きにしても大儲けですね。」

「ジゼルちゃんは何を買うのか悩ましいわね。大金ではあるけれど、無制限のお金と言うわけではないし。」

「はい…贅沢な悩みですけど。」


よく吟味したいです。

とりあえずバッグはベルさんが装備してナイフとお金はバッグの中に。お金は後で分配しようということになった。バッグにアイテムを詰め込んで肩から掛けるベルさん。残りの石斧とシャベルと木の皿と干し肉は要らないかなー…と思っているとベルさんが意外なことを言い出した。


「ねえ、エイミィ君。そこの一番左の石斧だけ鑑定してみてくれないかしら?なんだか微量な魔力を感じるの。」

「10万かかりますが、よろしいですか?」

「ええ。」


ベルさんがお金を渡している。エイミィさんが石斧を鑑定した。


「これは偽装魔術が掛けられていますが、ミスリルのショートアックスですね♡素材はミスリルですがマジックウェポンではありません♡素材は素敵ですが、切れ味はゴミです♡偽装魔術は闇魔術の【アンチマジック】で解けますが、無理矢理炉に突っ込んで素材にしても、偽装魔術は解けます♡売れば一儲けできますね♡呪いはかかってないので触っても大丈夫です♡」


お宝見逃すところだった―。ベルさんの観察力すごい。ベルさんはその石斧(?)をバッグに仕舞った。残りの石斧や木の皿をよく見た。


「あとは不審な魔力はないわね。」

「3千ギルで不用品の処分も行っております♡でもお客様たちは冒険者さんのようなので、不用品は迷宮の中に捨ててくることをお勧めします♡迷宮がきれいさっぱり処分してくれますので♡」

「そうするわ。」


ベルさんが不用品を箱ごとバッグに収納した。


「毎度ありがとうございました♡」

「ええ。こちらこそありがとう。」


3人で店を出てぼちぼち歩き始めた。


「兄殿。ミスリルのショートアックスはどうする?うちのパーティーにアックス使いはいないし、切れ味は良くないみたいだから、素材として売ってしまうか?」

「今は普通の石斧にしか見えないけど、偽装魔術を解いて、装飾的価値があるアイテムだった場合、素材として売り払うのは少し損な気がするわねえ。ジゼルちゃん【アンチマジック】買う気ある?」

「うーん…いずれは…と言う気はしますが、今欲しいわけでは…」

「ではしばらくバッグの中に塩漬けね。」


まあ、すぐに売らなくてはならないほどお金に困ってるわけではないですからね。罠解除代と鑑定代併せて60万ギル引いても2億6972万8230ギルだ。一人頭、8990万9410ギルの分け前だ。

分配してギルドに預けた。ギルドは預金もできるのだ。ギルドカードで引き出しもできる。サテライトシティだけのギルドではなく、世界中どこのギルドでも下せる。私は自分が次、どんなスキルを覚えたいのか、まだ決まってないので一応預けておいた。



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