第49話
12月3日。シータさんのお誕生日である。みんなプレゼントを用意してある。
「シータさん、お誕生日おめでとうっす。」
「「「おめでとう。」」」
「有難う。」
朝食後、みんなでシータさんを取り囲んだ。
「まずはアタシから。プレゼントよ。お誕生日、おめでとう。シータ。」
ベルさんがシータさんにプレゼントを渡した。
「ありがとう、兄殿!」
シータさんがプレゼントのラッピングを剥がす。出てきたのはお洒落なショートブーツだ。すごく履き心地が良さそうな…
「おお。最近靴がくたびれてきてたんだ。ありがとう、兄殿。」
「すごい可愛いデザインっすね。お洒落っす。」
流石に畳の上なので歩かないが、履いてみて感触を楽しんでいる。
「あと、これもね。」
ベルさんがシータさんに差し出したのは、お食事券だ。
「お!『ディナ・マール』のか。いいのか?」
「ええ。二人分のコースお食事券だから、夜にでもイシュ君とデートを楽しんでらっしゃい。ディナーの予約を入れてあるわ。」
「楽しみだな、イシュ。『ディナ・マール』はマリーアネットシティの高級レストランなんだ。」
「そうなんっすか。楽しみっすね。というか自分の分まで奢ってもらっちゃってなんか恐縮っすけど。」
「いいのよ。シータはイシュ君と2人でいられれば嬉しいでしょうし。」
二人っきりのデートタイムをプレゼントですか、お兄様。流石お兄様。
「次はにゃーにゃ。シータ、お誕生日おめでとうにゃ。」
ミーニャさんがシータさんにプレゼントを渡した。
「ありがとう。」
シータさんがラッピングを剥がす。可愛い猫のデザインのマグカップとリボンが色んな色とデザインで10セット入っていた。
「可愛いな!」
誕生日プレゼントらしい誕生日プレゼントだと思う。
「では私から…お誕生日おめでとうございます。シータさん。」
【アイテム購入】から『3連アイテムガチャ/60万ギル』である。お誕生日価格ではないので、ベルさんへのプレゼントと値段のつり合いを取る為3連にしておいた。
「きたな!」
「ドキドキするっすね。」
「なんにゃ?それ。」
ベルさんがミーニャさんにアイテムガチャの説明をしている。
「泣いても笑ってもチャンスは3回です。さあ、どうぞ。」
シータさんがタブレットのボタンをぽちっと押した。
パパーン!と音が鳴った。
バカにつける薬×5:飲むと頭の働きが良くなる……かも?※ただの栄養ドリンクです。
「……ジゼル。何かボクに含むところが…?」
シータさんが半眼で睨んできた。
「な、ないです!ただの運ですよ!」
シータさんが1本開けて飲んでみたようだ。
「……旨いところが微妙にやるせない。」
「美味しいに越したことないにゃ。」
「つ、次です。」
ぽちっとボタンを押した。
パパーン!と音が鳴った。
アイスハーブティーボトル:魔石の魔力が続く限り、いくらでもボトルの中にアイスハーブティーが作られるマジックアイテム。※さわやかな味わいの冷たいブレンドハーブティーです。主な効能は整腸作用、脂肪分解、リラックス効果等々。
「ぶっちゃけ物凄く嬉しい。これで今度、いつダンジョン内で孤立するような罠にかかってもしばらく飲んで食っていけるな。」
「そうねえ。そんな機会はない方がいいのだけれど、いつでも水分を摂取できるアイテムは嬉しいわね。」
シータさんが猫のマグカップにハーブティーを注いで飲んでみた。
「あ、このハーブティー滅茶苦茶旨い。」
「良かったです。あと1回ですね。」
「まあ、アイスハーブティーボトルでもう元は取れてるとは思うが。」
シータさんがぽちっとボタンを押した。
パパーンと音が鳴った。
高級しゃぶしゃぶセット:霜降り黒毛和牛しゃぶしゃぶ肉(20人前)、ごまだれ(20人前)、ポン酢(20人前)、大鍋(※サービスです)、昆布、コンロ(※スイッチON/OFFで切り替えできる安定した火の出るマジックアイテム。サービスです)
「あー…久しぶりに肉も良いな。昼食に皆で食うか。」
「そうですね。」
「中々美味しそうなお肉ね。」
「最近魚ばっかり食べてたし、お肉も良いっす。」
「ごまだれ?にゃーは初めて見るたれだにゃ。」
真打、イシュさん。
「すいません…ありきたりっすけど…お誕生日おめでとうございます。」
数種類の赤に染められた太さがまちまちになっている超極太毛糸のマフラーだ。
「可愛いな。」
「自分の手編みっす。サクヤさんが編み方を教えてくれたので、編んでみたっす。」
「イシュは随分器用だな。」
「頑張ったっす。でも実はちょっと編み目間違ってるところもあるっすからあんまりまじまじ見ないで欲しいっす。あと、これも。」
真珠の髪飾りだった。とても綺麗です。
「ありがとう。大切にする。」
お昼はみんなでしゃぶしゃぶを食べた。
「これはかなりいい肉だな。旨い。ごまだれもまろやかでコクがあって…ポン酢の方が好きではあるが、これはこれでかなり旨い。」
「にゃーはこんな美味しいお肉生まれて初めて食べたにゃ。」
「これ割と本気でいい肉だと思うわ。」
「美味しいっす。」
「頬っぺた落ちそう…」
柔らかくて美味しい。霜降り状に入ってる脂の甘みが噛むたびじゅわじゅわ出てきて堪んない。すごーく美味しいお肉。
私達もそれぞれ3人前くらいペロッと食べたが、シータさんは一人で8人前を平らげていた。
「シータも19ね。時の流れを感じるわ。」
「兄殿はどんどんおっさんになってくな。」
「うるさいわね。長命種は外見は年取らないのよ。」
「中身はしっかり年とるけどな。」
「シータは中身こそちゃんと年を取った方がいいと思うのだけれど。」
「ほら、あれだ!なんか年相応の落ち着きっぽいものが滲み出てきてるだろ?」
「それはないわ。ないわー。ぶっちゃけレイラ叔母様並みに落ち着きないわよ、アナタ。」
「侮辱だ!」
良いのかなあ。そんなこと言って。レイラさんが『落ち着きない人』の代名詞になってるけど。
「自分はフレッシュな感じのシータさん好きっす。」
「落ち着きなんか必要なかったのだ。はっはっは。」
「イシュ君、またそうやってシータを甘やかして…」
ベルさんが頬に手を当て溜息をついた。
「シータが落ち着きないのも個性にゃ。」
「ベルさんが19歳の頃はどんな感じでした?」
「どうかしら?自分ではよくわからないわねえ…あんまり性格が変化した気はしないのだけど。自分でそう思ってるだけでアタシも落ち着きなかったのかしら?ダンジョン探索の様子を客観的に思い返してみると、今よりやや注意力散漫な感じだった気がするわ。未熟なミスも沢山したし。」
「全然想像つかないにゃ。」
「若かったのよ。」
うーん…ベルさんの成長の恩恵を受けたパーティーだよね、銀の匙って。一人だけ他メンバーより16歳くらい年上だし、冒険者歴20年だし。経験豊富な上に性格が冷静沈着で円熟してるから頼りになる。自分一人が成長するだけでなくパーティー全体に成長を促すような活動方針だし。
「今までした痛恨のミスって何ですか?」
「…17の頃だけど…治療順序を見誤ったわ。怪我の程度の酷い方から治療してたんだけど、元地の基礎体力を考慮に入れてなかったせいで、怪我の程度はそうでもないか弱い女の子のパーティーメンバーを一人亡くしたことがあるわ。みんな酷い怪我をしていたし、誰が死んでもおかしくなかった。誰もアタシを責めなかったけど、今でも、もっと冷静に判断すれば全員救えたかもしれないのにって後悔してる。」
ぎゅっとベルさんの手を握りしめた。ベルさんは今に役立てる豊富な経験と共に相応の苦い思いもしてきたんだ…
「アタシが初めて自分のパーティーメンバーを失った思い出。出来ればあれで最後にしたいわ。もうあんな思い、沢山よ。誰も失いたくないの。」
「ベルさん…」
「アタシも誰も失わないように努力するから、みんなもできればそうしてちょうだい。」
「はい。」
「勿論っす。」
「わかったにゃ。」
「努力する。」
結束を新たにした。夕方ごろシータさんとイシュさんはデートに出かけたので、ベルさんとミーニャさんとまったり過ごした。




