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第23話

探索シーン大幅カットという暴挙。

これはファンタジー小説ではなく、恋愛小説だったのだ!

「18階層か。結構深いわね。何階層まであるのかしら?」


18階層へ続く階段を見ながらベルさんが眉を顰めた。


「転移石がないと探索って大変なんだな。ボクはもう疲れたよ。」


もう2ヶ月近く探索してるもんね。1階層攻略するのに3~4日はかかってるし。


「でも敵も疲労してるんじゃないっすか?15階層から先が随分狭くなってたように思うっす。」


イシュさんが指摘したように15階層以降は地図を見るとややミニマムな設計だ。さっさと力尽きて姿を現してくれると嬉しい。索敵に敵が引っ掛かった。


「フレイムリンクスの群れが来たみたいです。シータさん、イシュさん、大丈夫ですか?」

「いつでも行けるっす。」

「こんなところで死ぬのはボクもごめんだからな。」


二人で斬りかかっていく。私も隙を見てアクアカッターを撃ち込んでいる。炎を纏ったフレイムリンクスは動きが素早い上に、ややトリッキーな動き方をして読みにくい。アクアカッターが空ぶることもあってちょっと悔しい。


「はっ!!」


ベルさんが後ろ側にナイフを投擲した。知らない間にフレイムスパローが接敵していたらしい。敵の多さに辟易したベルさんがスローイングナイフを購入したのだ。利点は今のように遠くや早い飛んでる生物にも攻撃が届くこと。不利点は投擲した後のナイフの回収率は5割前後なこと。使い捨てが前提である。ただし、優秀すぎるベルさんの索敵能力とは相性抜群である。

襲撃がひと段落ついた。


「ベルの兄貴はダンジョナーに入ったことあるんっすか?」

「あるわよ。ずうっと前だけど。まだシータは一緒じゃない頃ね。遺跡の探索って聞いて準備してたはずだったのに、気が付けばダンジョナーのお腹の中。遺跡の探索用に紙とペンは持ってたけど。食料なんて1週間分くらいしか持ってなかったわ。不幸中の幸いだけど、性質が緑のダンジョンに似てる…木とかが生えてるダンジョンでね。植物を噛んで水分を補給して、何かもよくわからない木の実でお腹を満たしたの。みんな毒が回ってすぐパタパタ倒れるから、すっかり【アンチポイズン】が上手になっちゃったわ。」

「ダンジョンコアってどんな感じだったっす?」

「アタシが見たのは木の実型ね。食べようと近づいたところを襲われたわ。その時のダンジョナーは6階層で、ここよりずっと浅かったけど。後から調べたけど、ダンジョナーのダンジョンコアに定型の形はないらしいわね。大抵何かに擬態してるわ。」

「そうなんっすか。」

「うふふ。でもダンジョンコアを倒すとお宝が手に入ることが多いみたいなの。アタシもたっぷり儲けたわ。遺跡の探索の方は指定の期限が切れてて依頼失敗扱いになったけどね。」

「寧ろお宝が手に入るくらいのご褒美がないとやってられない気分だな。」


シータさんがぼやいた。

3羽のフレイムイーグルと2匹のフレイムタイガーがやってきた。エンチャントをかけなおし、みんなで戦う。


「ああもう!また服が燃えた!」


シータさんが怒り狂って剣を振りまわす。フレイムイーグルは多重盾の合間を縫って飛び込んできて、時々みんなの服を焼く。怪我を負うことも度々あるが、それはベルさんが治してくれる。ただ服や革鎧の劣化は結構深刻だったりする。【アイテム購入】で服も買えるよ?村人Aの服みたいなやつが。もうみんな諦めて村人ルックに革鎧なのである。


「シータさん、虎の足を潰すので!」


声をかけて虎の足にアクアカッターを放つ。


「わかった!」


シータさんが怒涛の押し込み。

なんとか襲撃者をドロップ品に変えることが出来た。


「!誰か倒れてるっす!」


道の先に革鎧姿の男の人らしい人が倒れている。イシュさんが慌てて駆け寄る。


「イシュ君!」


ベルさんが叫んで男の人にナイフを投擲する。ザクッと男の人の頬にナイフが刺さり、血が噴き出す。


「兄貴…何を…」


イシュさんが戸惑った声を上げる。


「注意して。ソレがダンジョンコアよ。」

「えっ!?」


男の人の体が燃え上がり深紅の九尾の狐に姿を変える。


「戦闘態勢!」


ベルさんの声にハッとなり、全員が攻撃をし始める。フレイムリンクスのような素早くトリッキーな動き。ばらっと尻尾を振るとフレイムスパローが無数に飛び立った。


「ジゼルちゃん!」

「はいっ!」


私のアクアカッターとベルさんのスローイングナイフで撃ち落とした。私はシータさんとイシュさんに【スピードUP】をかけなおした。二人が息を合わせて狐の尻尾を削っていく。

狐はシータさんとイシュさんに攻撃しつつフサリフサリと尻尾を振ってフレイムスパローを量産した。アクアカッターで何度も撃ち落とす。ベルさんもナイフを投げている。

シータさんとイシュさんを対象にしていたはずの狐が、急に方向転換して私に飛びつこうとした。


「絶・対・させないっ!」


ベルさんが私を庇うように立った。狐に噛みつかれて腕の肉が焼けているのが見える。


「!シールドッ!!」


イシュさんのシールドが下から狐を跳ね上げるようにせり上がってきた。狐が飛びのく。


「ベルさん!腕!」

「大丈夫よ。怪我は自分で治せるわ。」


ハイヒールをかけているようだ。私は狐から【マナドレイン】した。魔力過剰でカッと体が熱くなる。

【エアクール】【エアクール】【エアクール】【エアクール】【エアクール】……狐の魔力を使って狐の周囲に【エアクール】を連打で重ねがけした。

ぐっと気温が下がったのがわかる。狐が不安定に揺らめいた。

シータさんとイシュさんの剣が狐を切り裂いた。ごろんと赤子の頭蓋骨くらいの大きさの真っ赤な塊が転げた。


「砕いて!それが核よ!」

「はっ!」


シータさんとイシュさんの剣が同時に核を穿った。核が粉々に砕け散る。

ゆらゆらと周囲が陽炎のように揺れている。ごろごろっと大きな宝箱が5つも出てきた。


「来たわね!」


ベルさんが素早く5つ全部収納リングに収納した。

気が付くと緑のダンジョンの中だった。周囲は森だ。


「帰って来たのか…!」

「ベルさん!すごい汗…」


ベルさんの髪が汗でぺったりと額に張り付いている。


「ちょっと……呪われちゃったみたいね…」


ベルさんが困ったように微笑む。ベルさんの、狐に噛まれた腕にはチェーンのような模様が巻き付いている。


「痛むんですか?」

「ええ。少しね。熱を持ってじくじくするの。執念深い子って嫌ね…」


私は迷わずタブレットにお金を吸わせて【アンチカース】800万ギルを購入した。その名の通り呪い解除の魔術。ベルさんの腕に手を翳し、【アンチカース】を発動した。

すうっとチェーンが消えた。


「有難う。」


ベルさんが私を抱きしめて額にキスした。


「ごめんね。汗臭い?」

「いいえ。」


ベルさんはいつでも良い匂い。



***

転移石で1階層まで戻ってダンジョンを出た。

どこへ行くって?ギルド?馬鹿言うな。宿に戻るんだよ。もう宿の契約だって切れてるから、新しく宿を取り直さなくちゃならないし、2ヶ月もお風呂に入ってないし。【クリーン】はかけてたけど、【クリーン】で疲れは取れないし、気分的な問題で、今すぐお風呂に入って、可愛い服に着替えて、ゆったり食事をして、安心して眠りたい。2ヶ月間気を張りっぱなしだったのです。


「つっかれたわねえ…」


流石のベルさんもへたばっているようだ。


「もうへとへとだよ。」

「真っ赤な世界は目に優しくなかったっす。」


うん。緑のダンジョンが如何に目に優しいか思い知らされたよね。マグマ湧いてるとか意味わかんないし。


「なんか皆さんのお金で私のスキルいっぱい買っちゃったんですけど、良いんですか?」


確かに皆の役には立ったと思うけど、一時的なものだし、これ以降は私が美味しく使わせていただくことになっちゃうんだけど。


「いいのいいの。ジゼルちゃんが居なかったら生きてないし。」

「すごい助かったっすよ。」

「うんうん。温度から言って長期滞在するだけで命に関わる環境だったし、潜っていた期間を考えても、ジゼルが居なかったら死んでいたな。命の対価だ。これからも有効活用してくれ。」

「有難うございます。」


不謹慎だけど使える魔術の幅が増えたのは美味しい。今はもう懲り懲りな感じだけど、いつか今度は赤のダンジョンに行こう!とかいう話になったら役にたつと思う。


「明日はゆっくり休んで、明後日ギルドに報告を上げに行きましょう。」


私たちは宿を取って、お風呂で疲れを癒し、まともな服を着て、全員でゆっくり食堂で食事をとった。

そして外敵のいない安全な宿で心行くまで安眠した。


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