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第2話

文字数は2000字以上で、途中で切って良さそうなところでぶつ切りにしています。長い時もあれば短い時もある。予めご了承ください。

私はいつも通り一人で、ダンジョン潜りの為の買い出しに出た。ランディは夜遅くまで励んでいたので、まだおねむだ。出来るだけ、いいものを安く買わねばならない。炸裂する値切りスキル。


「お嬢ちゃんには負けるねえ。」


携帯食を売っているおじさんが苦笑した。携帯食は緑色のスティック状のクッキーのようなビスケットのような不思議な食感の食べ物だ。味はものすごくまずいが、とても栄養価が高くて腹持ちがいい、冒険者の相棒。因みにものすごく安い私の主食。私は基本これを食べて生きている。


「いつも負けてくれて有難うございます。」

「可愛いお嬢ちゃんには長生きしてもらいたいからな。」

「ふふ。有難うございます。」


もう何軒か回って、ポーションや転移石を購入した。転移石は少し柔らかい石。ダンジョンの中でしか使えないが、割ると登録した階層(1度到達して転移石を登録する必要がある。)に一瞬で移動できる優れもの。深く潜っても帰るのがらくちんだし、翌日また深い階層から攻略を始められる。

7時には宿へ戻り、帳簿をつけ、ランディを起こし、経費を割り勘する。それから荷物を分担した。日帰り探索のつもりではあるが、水や食べ物、ポーションや転移石、応急手当キットなど、持つべきものは多い。水や食料は不測の事態に備えて多めに持つのが常識だし。私だけではなくランディもシンシアちゃんもリュックを背負っている。ランディ達は私が買ってきたサンドイッチで軽く朝食をとった。困ったことにぎりぎりまで寝てたいタイプなのだ。奴は。

8時ぴったりに食堂へ姿を現すと、ベルさんとシータさんはもう来ていた。ベルさんとシータさんも私たちと同じくリュックを背負っている。そしてシータさんは剣を、ベルさんはメイスを装備していた。


「お待たせしました。」

「時間ぴったりだから構わないわ。行きましょ。」


とりあえず、全員が安全に潜れる5階層から探索を開始するようだ。ダンジョンは地下に掘られていくタイプのダンジョン。何階層まで続いているのかは知られておらず、潜られた最高深度は44階層とのこと。ベルさんたちはパーティーを組んでた時は21~23階層あたりを攻略していたそうだ。7人いたパーティーメンバーも2人になって、今は大事をとって12~15階層あたりをウロチョロしていたらしい。うちのパーティーとは格が違うように思う。ギルドカードを見せてもらったらDランクだった。

冒険者には冒険者ギルドが定めたランクがある。ランクはSS,S,A,B,C,D.E,F,G,Hまである。SSは歴史に名を遺すような大英雄、超人。そんな人がごろごろしているはずもなく、通常はカウントしない。現在も世界中どこにもSSランクの人なんていないし。Sが超一流、Aが一流、Bが大ベテラン、Cがベテラン、Dが一人前の中でも中々やる方、Eが一人前、Fが半人前、Gが駆けだし、Hが一般人に毛が生えた程度。SSとSの間には越えられない壁があるし、AとBの間にも厚い壁がある。一般の冒険者が「自分もいつかは!」と夢見るのはBランクだ。Aランクは本当に一握りの才能ある人間しかなれない。

私とランディはFランク。シンシアちゃんはHランクだ。

ダンジョンへ行き、転移石を割って5階層へ。

シータさんとランディと私が前衛。ベルさんが後衛。シンシアちゃん?シンシアちゃんは魔物が来るとベルさんの後ろに隠れる。今までは物陰に隠れていた。戦闘にはほぼ参加しない。ランディの性欲処理が主なお仕事ですから。ねえ、本当に奴隷でパーティーメンバー増やすの…?

ホーンラビットが数匹飛び出してきた。ランディは突進を避けながらなんとか3撃で1羽倒した。シータさんは危なげなく流れるような手つきで3羽葬った。私はおたおたしながら5撃で1羽倒した。ホーンラビットがドロップアイテムに変化する。ホーンラビットのドロップは肉と角と魔石だ。ベルさんは角と魔石を拾ってみんなで分担して持った。


「お肉は持たないんですか?」

「嵩張るし、今からそんなの持ってたらすぐに荷物がいっぱいになっちゃうわよ。」


守銭奴の私からするとちょっともったいない気がするが、ここは高ランカーの言うことに従おう。グリーンウルフ、ホーンウルフ、ビッグボア、ブラッディグリズリー、マッドフロッグ、グリーンリザード、私とランディはおっかなびっくりだが、シータさんは全く危なげない。背後から近寄ってきた敵はベルさんのメイスに沈められている。


「どお?ジゼルちゃんも戦闘慣れてきたんじゃない?」

「はい。ちょっとは。でもマッドフロッグやグリーンリザードはまだ厳しめです。」


マッドフロッグは体表をぬるぬるの泥で覆っており、【スラッシュ】は中々通らなかった。【刺突】の方は割と通るっぽいんだけど私は持ってない。足のばねを使ったちょっとトリッキーな動きも避けにくくて、『泥吐き』と呼ばれる泥の球をすごい勢いで吐き出してくる攻撃に当たって壁までぶっ飛ばされた。全身打ち身だったが、ベルさんの【ミドルヒール】で、体が痛かったのは無事治った。グリーンリザードは鱗が固く、これまた攻撃が通りにくい。するする素早い動きで近づいてくるし、鋭い爪を備えている。因みに共に12階層の魔物である。1対1ならシータさんが後れを取ることはないのだけれど、1対多数だと他のパーティーメンバーへのフォローが追い付かないようだ。今の臨時パーティーだと12階層くらいがぎりぎりという感じに思える。


「そう。じゃあ、今日は12階層で粘ってみましょう。マッドフロッグは回避しながら戦う、いい訓練になるわ。」

「はい!」

「おい待てよ、折角だから20階層まで降りようぜ?ドカンと稼ぎてえんだ。」


ランディが口を挟んだ。


「死にたいの?アナタの腕じゃ、12階層でも厳しいのよ?もっと上手に武器を使うテクニックを磨かなくちゃ。ジョブレベルだけ上がってもテクニックがなくちゃ本当の強さには繋がらないのよ?」

「チッ。後ろで回復しかしてねえくせに偉そうに。」


ランディが舌打ちして露骨に顔を顰めた。


「なるほど。キミの目は節穴なんだな!兄殿は背後からやってくる敵は殲滅しているし、奇襲を受けないように常に戦場を観察しているのに。」

「ランディ、命は一つしかないんだよ。無茶は慎むべき。」


シータさんと私に言われてランディは苦い顔をした。

荷物のボリュームが増えてきたので、ベルさんは大きな麻袋を出して、シンシアちゃんにリュックの他に追加で荷物持ちをさせている。シンシアちゃん、何にもしてないもんね…


「マッドフロッグが泥吐きの前動作をしたら2秒待って移動すると丁度良く避けられるわ。」

「試してみます。」


マッドフロッグが飛び出してきた。まずは跳ねの飛び掛かり。スラッシュを仕掛けるが、浅い傷しかつかない。泥のぬめりが厄介だ。飛び掛かりかと思ったら後ろ足で蹴りつけてきたり。そして3回喉を鳴らす泥吐きの前動作。

1,2、避ける!

私の隣を泥玉が飛んで行った。言われた通りに動くとすごく上手に避けられた。すごい!


「やりました!」

「はい、喜ぶのはいいけど、油断は禁物。」


ベルさんが音もなく私に忍び寄ろうとしていたグリーンリザードの頭をメイスで潰した。


「すいません…」


しゅんとする。ベルさんが私の頭をポンポンと撫でた。


「次気をつければいいのよ。ほら、また来たわよ。」


マッドフロッグが飛び掛かってきた。

避けながら斬る。スラッシュは相変わらず浅い傷しかつかないけど。私も慣れが出てきて上手く体が動くようになってきた。

一度に致命傷は与えられないもののじわじわと傷を負わせていく。そして遂に弱らせたマッドフロッグの命の灯が消えた。マッドフロッグがドロップに変わる。


「ふふ。マッドフロッグの初単独討伐ね。おめでとう。」


ベルさんが褒めてくれる。


「有難うございます!」


マッドフロッグは皮と魔石がドロップだ。皮の方はマッドフロッグスーツという全身鎧に加工されるんだそうだ。ぬめっとした全身を覆うスーツで、見た目はちょっと不気味だが、防御力もそこそこで、沼地での動きにボーナスがあるんだとか。荷物を渡されたシンシアちゃんはちょっと嫌そうな顔をしていた。なんかぬめっとした皮だもんね。

ちょっと安全そうなスペースで順番に昼食をとって、午後もひたすらバトル。中々良い戦闘訓練になってると思う。私も徐々にコツが掴めて、マッドフロッグにも普通に通る攻撃が出来るようになってきた。


「そろそろ引き上げましょうか?」


ベルさんが提案した。


「なんでだよ!俺はまだまだいけるぜ?」

「もう荷物がいっぱいじゃない。どうやって持って帰るのよ?」


確かにみんなのリュックはパンパンだ。皮、毛皮シリーズがすごく嵩張るのだ。ランディはすごく未練ありげだった。

ランディはなおも言い募ろうと口を開きかけた。

ベルさんははっと顔を上げる。


「何か来るわ…すごく沢山…逃げましょう。転移石を出して!」


皆が慌てて転移石を出したところで転移石が砂のように崩れた。


「ストーンクラッシュだわ!」


ストーンクラッシュ……ボス級の魔物がターゲティングすると、獲物を逃がさないように転移石の効果を妨害することがある。

13階層へ続く入り口から逃げる男性とソルジャーアントの大群が出てきた。


「トレイン…最悪ね。」


トレイン…逃げる人物に次々と魔物が引きつけられている現象だ。


「兄殿!まずいぞ!ソルジャーアントは25階層以降の魔物だ!それにこの規模だと…」

「クイーンアントがいるわね。」


ランディはシンシアちゃんの手を取って一目散に逃げだしてしまった。私たちを置いて。

マジか。

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