第17話
あっという間に1週間経った。サテライトシティへの帰りはまた護衛依頼を受けた。私は索敵技術を上げるため頑張ったが、今は25mくらいまでなら、隠れていてもわかるようになった。因みにシータさんもベルさんも私にとっては雲の上の存在だが、索敵範囲はシータさんよりベルさんの方が広く、正確らしい。代わりに単純な素早さで言うとベルさんよりシータさんの方が身が軽いのだそうだ。
フローリアシティで蕪を仕入れてきたので、道中は蕪のスープなどを作って味わった。途中弱い魔物に何度か襲われたが、盗賊など出ることもなく、無事にサテライトシティまで戻ってこられた。
「おお!懐かしのサテライトシティ!」
シータさんが歓声を上げる。実に3週間くらいはお留守にしてたもんね。
「はしゃぐのはいいけど、明日からダンジョン潜りの勘を取り戻さなきゃならないから忙しいわよ。」
ベルさんが注意した。私たち、多分大分旅行ボケしてるからね。明日、浅い層からゆっくり勘を取り戻していかないと。
とりあえず冒険者ギルドに護衛依頼の達成報告を上げた。
「リエッタちゃん。帰って来たわよ~。」
「あ、ベルファーレさん、シータさん、ジゼルさん、お帰りなさい。」
リエッタさんが微笑んだ。
無事依頼料を貰って、道中の魔物素材を売り払った。ふと見るとギルド併設の酒場の隅で、ランディが一人で飲んでいた。シンシアちゃんは一緒ではないのだろうか。特に声をかけるつもりもないのでスルーしたけど。
私は両親に手紙を書いた。ランディのパーティーを抜けたこと。新しい仲間が出来たこと。良い仲間に恵まれて、昔と比べるとそこそこ稼げているので、余力があれば送金するから最寄りの街…うちの村から一番近い街は徒歩で半日かかるリルベニーという街だが…街の冒険者ギルドに口座を作ってほしいこと。私は楽しくやってるけど、お父さんとお母さんは大丈夫?と近況を尋ねておいた。手紙を送るのはお金がかかるから、両親から何時返信が来るかはわからない。一応送金したいので早めに返信が欲しいのだが、我が家の財政状況を考えるとせっつくこともできない。流石に手紙の中にお金を入れたら、配達の人に中抜きされかねないので、送る方法が口座を作ってもらう以外にないのだ。
***
私たちは10階層くらいからやり始めて、じわじわと勘を取り戻してきている。16層目。ビッグスパイダーというデカい蜘蛛がやってきたので、ファイヤーアローをぶち込んだ。
「ジゼルも魔法職が板についてきているな。」
シータさんが褒めてくれた。
「有難うございます。」
「となるとやっぱり前衛増やしたいわよねえ。オフェンス目的で剣か槍か斧か…ディフェンスも考えて盾系のファイターもいいわね。」
ベルさんが悩みこむ。
「欲しいポジションはあるが、望ましい人材には中々巡り合わないな。」
「ジゼルちゃんみたいなユニークな能力は勿論美味しいけど高望みはしないわ。能力は後から磨けばいいとして、人格ねえ…命を預ける土壇場で仲間見捨てていくような子はダメよ。思慮深くない子もダメ。協調性がない子もダメ。」
「石を投げれば冒険者に当たるっていうくらいのダンジョンシティなのにな。」
ぼやきながらサクサク蜘蛛を片付けてドロップを収納バッグに入れる。16層の魔物は網羅したと思う。
「今日はこの辺にしておかないか?宿屋に戻って食事がとりたい。」
「そうね。収納バッグを得てから結構量が持ててしまうから、つい長時間潜っちゃうのよね。疲労が溜まるとミスの原因になるわ。戻りましょう。ちょっとしたミスで誰かを失ったら悔やんでも悔やみきれないわ。」
シータさんの提案に乗って1階層まで転移石で戻り、ダンジョンを出た。真っ直ぐギルドへ行く。
「リエッタちゃん。今日も買取お願い。」
「では買取所で。」
買取所へ行き、収納バッグからドロップを放出した。
「今日もすごい量ですねー。やっぱり収納バッグを持ってると違いますよね。一日の稼ぎが段違いですよ。」
「お金は出来るだけ沢山欲しいのよ。」
金喰い虫と大飯喰らいがいるからね。
「そう言えば3人はパーティー登録されてますけど、パーティー名がまだ空欄ですよ。パーティーリーダーも決まってませんし。」
リエッタさんが早く決めろと催促してきた。
「パーティー名なあ…」
「リーダーはベルさんでいいと思うんですけど。」
「そうだな。リーダーは兄殿が良いと思うよ。」
「まあ、二人がそういうならパーティーリーダーは引き受けるけど、パーティー名は長いお付き合いになるし、慎重に選ぶべきね。此処では決められないわ。話し合って決まったら伝えるからもう少し待ってちょうだい。」
「わかりました。」
魔物のドロップと希少な薬草、鉱物の採取品を売り払ってお金を作った。勿論3人で分配。ちょっと相談したが『バッファー』のスキルである【スピードUP】を試しに買ってみることにした。バフは効果があればとっていきたい。今のまんまのスキル構成じゃ、折角のジョブを無視してスキルを購入できる『金喰虫』の特性を生かせてないから。バリエーションが欲しいです。
宿に帰って食事をとりながら侃々諤々。パーティー名は長いお付き合いになるので、慎重に選ばなくてはならない。
「とりあえず『シャイニングヒーロー』とか『ラブイズフォーエバー』みたいな痛々しいのは却下ね。悪目立ちすることなく、無難で、かといって他パーティーと被らないもの。」
「そうだな。被った時のことを考えて3つくらいは候補を決めていこう。3つ被ってたら、一旦保留にして再び会議だ。」
長い長い会議の結果、候補は『銀の月』『金の明星』『白夜の太陽』となった。月、星、太陽と天体シリーズで揃えてみた。天体は無難でパーティー名には盛り込みやすく、重複する可能性はある。無難なタイプの名前の付け方は『○○の○○』や『○○な○○』というパターンが黄金パターンらしい。勿論「名前を売りたい!」という野心のあるパーティーはインパクトのある名前をつけたりする。私たちは自分たちのペースでコツコツ稼ぎながら、余裕が出来たら人生を楽しみたいという、まったり勢なので、別に名前が売れる必要はない。ダンジョンに潜ってるけど、別に踏破とか目指してないし。
候補の中にちょっとアレなのも混じってますが無難な名前を付けるつもりです。




