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第14話

今日はシータさんが「女の子同士スイーツな感じに過ごそう!」と言ってきたので、私とシータさんが一緒。ベルさんが別行動だ。

早速シータさんが向かったのは何と美容薬品店。


「何を購入されるのですか?」

「ジゼルが買うのさ。ジゼルは風呂上りにスキンケアしていないだろう?ボディはそうでもないが、顔の皮膚は少し乾燥気味だと思うのだが、どうだ?」

「はい…」


やっぱり他人から見ても乾燥しちゃってるのがわかっちゃうのかー…凹むわあ。小さな頃は何も特別な手入れなんてしなくても、しっとりぷりゅぷりゅだったのに…


「ここでは化粧水とクリームを販売しているらしい。色々種類があるらしいから店主に相談して買うと良い。」

「シータさんは?」

「ボクは面倒くさくてこまめに手入れするなんていうことは出来そうにないから遠慮するよ。カサカサしても死ぬわけでなし。」


折角の美少女なのになー…

店主は至って感じの良いお姉さん。お肌の悩みを聞かれて素直に話した。顔の皮膚が少し突っ張る感じがする。手荒れが気になる。肘や踵がカサカサする。

お姉さんは色々私の肌を調べて、私の肌に合う化粧水とクリームを勧めてきた。化粧水はフローラルウォーターという精油を取る際にできる副産物を使って作っているので、素人に入手するのは難しいが、蜜蝋のクリームは材料を揃えれば店売りより安く作れるらしい。作り方も教えてくれた。親切に教えてくれるのは、蜜蝋クリームの材料もこのお店では販売してるかららしい。お姉さん的には素材を買ってもらっても儲けに繋がるっぽい。手には薬草配合のハンドクリーム。肘や踵の正しい手入れ方法も聞いた。

買った品が無くなったら、多分ダンジョンシティでも似たようなのが買えるはず…と言っていた。もしかすると【アイテム購入】に追加されている可能性もあるが。あと「ちょっとくらいお洒落したら?」と蜜蝋のリップバームを売ってくれた。うるうるのぷるぷるのキスしたくなる唇になるらしい。人によっては顔料を混ぜて濃い目の口紅として使うようだが、私は割と綺麗に色づいた桃色の唇をしているので「素材を生かすべき」と言われた。リップバームはキスしたくなる魅力的な唇を作ってくれるかわりに、色付きリップバームだと、キスした時に相手にも色移りしてしまうそうなので。キスなんて遠い未来の話だと思うけどね。相手も定まってないし。ベルさんだったら嬉しいけれど、そんな高望みできないし。

昼食は「甘いものを食べよう!」というシータさんの提案で、シータさんお勧めの店へ行った。清潔で、明るくて、なかなか居心地の良さそうなお店だ。圧倒的に女性客が多い。


「ここは何が美味しいんですか?」

「ジゼルにとっておきをお勧めするよ。」


シータさんが注文したのは紅茶と土鍋プリンだった。土鍋プリンとは何ぞや?

注文されて届いたのはやや小ぶり(それでも勿論大きい)の土鍋にたっぷり入った熱々の白っぽい黄色の何か。木の大きめの匙と、小分けにするための取り皿、銀のスプーンがついている。


「さあ、冷やしても旨いらしいが、冷やす技術が希少だし、今日は熱々を頂こう。たっぷりよそって食べると良い。甘さ控えめで旨いぞ。」


言われた通りに食べてみる。

熱々で甘くて、でも甘すぎなくて美味しい。ぷるるんとした食感。底の方に茶色い液体が入っている。その液体が、甘くてちょっとほろ苦くて、良いアクセントになっている。コクのある濃厚な卵の味がするが、ストレートの紅茶でサッパリいただける。これは美味しい。夢中で食べた。


「旨いか?」

「はい。すっごく!熱々ぷるぷるで美味しいです。」


量はやや多めだったけれど、食べやすいからするっと食べられた。満腹。幸せ。

シータさんは2人分のジンジャークッキーと紅茶を追加して頼んだ。


「ジンジャークッキーも中々旨いぞ。」


運ばれてきたジンジャークッキーは齧るとサクッとした食感。ピリッとしたスパイシーなジンジャーの味とシナモンの独特な香りが美味しい。甘みはあまりない。


「ジゼル。兄殿とのデートはどうだった?」


徐に切り出されて、赤くなる。


「……楽しかったです。私は。ベルさんが楽しかったかどうかはわかりませんけど。」

「兄殿なんてものすごいご機嫌だったじゃないか。」

「そうなんですか?」


ベルさんは割といつも朗らかな態度を崩さないので、機嫌の良し悪しはわかりにくい。妹であるシータさんからするとわかりやすいらしいが。

クッキーを摘まみつつ、一緒にプレゼントし合ったり、ちょっとだけ手を繋いだりし合ったことを話した。


「なんか、まったり進行だな。やっぱりジゼルが男慣れしてないから気を使ってるのかもな。」

「そうなんでしょうか。」


ただ単に食指が動かなかったからではなくて?


「ジゼルはランディとかいう男じゃなくて、過去に付き合った男はいるのか?」

「いないです。」

「正真正銘初物の純粋培養なのだな。兄殿も手を出しあぐねるわけだ。」


まるでベルさんが私に気があるような言い方をされると戸惑うが。言葉の綾だろう。


「シータさんは男性とお付き合いされたことがあるのですか?」

「まさか。このボクにそんな色気のある話が湧くと思うかい?」


んー…食い気成分が多めなのはわかってるけど、美少女だし、性格もいいし、無くもないのではないかと…


「ジゼルは割と控えめだし、そこが良いところでもあるから、あんまりがつがつした攻め方は合わない気がするなあ…ここはピュアな感じに全身から『慕ってます』みたいなアピールをするのはどうだろう?兄殿は結構そういうのぐっとくるタイプだぞ?」


軽く言うけど、それって高等技術なんじゃないですか?


「なんでシータさんはそんなにベルさんと私をくっつけたいんですか?」

「勿論ジゼルが可愛いからだ。優しくて控えめで丁寧な物腰の美少女。まさにボク好み!兄殿とくっつくということは将来のボクの義姉になる可能性もあるというわけで、それならボク好みの女性が義姉になってくれた方が楽しいじゃないか。あ、でもちゃんと兄殿の意も汲んでるぞ?」


正直者ですね。そう言ってもらえるのはとてもありがたいですけれど、ベルさんみたいな優良物件を私が捕まえるのは難しい気がする。一緒にいるとやっぱりときめくんだけど。


「ベルさん、どうして前の彼女さんとは別れちゃったんですか?」


シータさんはばつが悪い顔をした。


「原因の一端はボクだ。そもそも兄殿は冒険者で、彼女は雑貨屋店員で、会う機会が少なかった。それなのに兄殿が彼女とデートの約束をしている日に限って、ボクが怪我を負うとか熱を出すとか、危険な森に入って迷子になるとか、7回くらい連続で兄殿にデートをドタキャンさせてしまったのだ。そうしたら長期間会わない間に別の男が彼女にアプローチしていたみたいで、彼女の心が揺れてしまって『ごめんなさい。他に好きな人が出来たの…』と言われたらしい。兄殿は随分凹んでいたよ。」

「そうですか…」


滅多に会わないうえに7回連続は結構きついものがあるね。会えなくて不安定になっている時、身近で素敵な人から熱心にアプローチされたら女心も揺らぐかもね。でも、怪我も病気も仕方ないよ。万が一それでシータさんが死んじゃったりしたら、「なぜ自分はあの時『デート』の方を選んでしまったのだろう…」って絶対悔やむと思うし。大切な人の死に目にも合えないとか辛すぎるよ。特にベルさんはシータさんのことを可愛がっているみたいだし。


「まあ、もう3年も前の事さ。ボクたちの寿命は長い。まだまだ恋だって楽しめるはず。」

「そうですね。」

「というわけで、僕はジゼルを兄殿に嗾けるのに燃えているのさ。」

「私みたいなものにアプローチされたら、ベルさんもご迷惑に思うのでは…?」

「そんなに自分を卑下するものじゃないよ。ジゼルは可愛い。大丈夫だ。」


あんまりうじうじするのもうざいだろうなー…とは思うんだけど、自分に自信なんてないんだよ。シンシアちゃんレベルで可愛いとか、性格が特別良いとかだったらちょっとは自信が持てたんじゃないかとは思うけど、容姿もすごい美人というわけでもないし、守銭奴で心狭くて、煮え切らないうじうじ女子だもの。中々自信は持てないよ。

シータさんはうじうじする私を見て困った顔になった。


「そうだな。明日はボクと兄殿が一緒に出掛けるから、ジゼルが自由行動というのはどうだろう?」

「わかりました。…その…余計なことは言わないでくださいね?」

「うんうん。」


何か不安…


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