第11話
翌朝起きると、口をゆすいで着替えを済ませた。
「祭りだー!!早速屋台で朝食だ!」
シータさんは滅茶苦茶テンション上がっている。
3人でおんもをぶらぶら。両脇にずらりと屋台の並んだ桜通りを行く。朝食は旬の味、筍ご飯と筍のかす汁だ。昨日冒険者のおじさんに聞いた墨田屋と言うところに来たのだ。お味の方は絶品。熱々のかす汁で体の芯から温まる。
それから屋台巡り?ノンです。湯屋へ行きました。朝入れたてのお湯が一番きれいなんだって。それ目当てのお客さんで超混むようだが。
シータさんとお風呂へ行ったらこみこみだった。それでもたっぷりお湯に浸かって体の凝りをリフレッシュ。体中丁寧に洗った。
「生き返るねえ…」
シータさんもお風呂を満喫しているようだ。
「やっぱり【クリーン】を使ってても、お風呂の爽快感は別物ですね。」
「だなあ。」
ちらっと見るとシータさんの体にはぽよんとお椀型の膨らみが。着痩せするんだよねえ。結構女性らしいボディラインをしていて羨ましい限りだ。
「それにしてもあの『かす汁』というのは旨かったね。身体があったまる感じがしたというか。筍も厚揚げも美味しかったし。」
「そうですねえ。春にしか食べられないらしいですから堪能ですね。」
しげしげとシータさんを見つめる。
「シータさんはよく食べる割に太りませんね。」
「脂肪がつきにくい体質なんだ。運動もしてるし。」
『剣士』だもんね。すごい運動量をこなしているのだろう。私も脂肪はつきにくいタイプだとは思うのだが、最近お金に余裕があるから、美味しいものをたくさん食べているので、ちょっとふっくらしてきたのではないかと戦々恐々としている。
「ジゼルは華奢だな。触れれば壊れてしまいそうに繊細で可憐だ。」
「そんなことないと思いますけれど…」
細いけど平たいよね。エルフは美形で華奢なタイプが多い。私も例によって華奢で目鼻立ちは割と可憐と言うか美しい方だし。ランディの気を引けるくらいには。でも触れたら壊れそうに繊細ではないと思う。今となってはどうでもいいことだが、ランディはハーフエルフだった。割と美男子でしたよ?あからさまにスケベだったけど。
「肌なんてスベスベじゃないか。」
シータさんに触られた。二の腕をなでなで。
「うわー柔らかい。女の子の腕だ!」
「そんなのシータさんだって…」
「触ってみると良いよ。」
腕を差し出してきたので触ってみる。何か…結構筋肉質?スベスベだけど硬い手触りだ。
「硬いだろう?力こぶもできるぞ?まあ腕の内側は少し柔らかいが。」
「あ、ほんとだ。」
腕の内側はほんのりと柔らかい。
「ふふ。剣士としてはこの筋肉は重要なのだけどね。」
二人でたっぷりお風呂を楽しんでから出た。髪の水気をしっかりと拭ったので時間がかかってしまった。ベルさんは湯屋の入り口に設置されているベンチに座ってレモン水を飲んでいるようだ。
「お待たせしました。」
ベルさんが私たちに目を向ける。
「ふふ。やっぱり湯上りはしっとりしてて、ちょっと色っぽいわね。」
「あ、有難うございます。」
うう。照れる…
「じゃあ、出かけましょう。お花見しながら食べ歩きよ。」
3人でたっぷり食べ歩きを楽しんだ。桜の花…綺麗だなあ…淡いピンクの桜の花が満開である。ふわりふわりと花びらが舞い散って実に美しい。
「綺麗ねえ…」
「はい…」
私とベルさんは桜に見惚れてうっとりだが、シータさんは食べる方に忙しいようだ。
「おおおおおおおお!これが桜餅!いい香りだ!1つじゃ足りないな。お姉さん、もう1つ…いや、3つくれ。」
確かに桜餅は美味しいんだけどね。手に塩っ気が移っちゃったので、クリエイトウォーターで手を洗った。ベルさんも手が気になるようだったので洗ってあげた。
シータさんががつがつ食べている間、のんびりと桜観賞。綺麗だなあ…
「兄殿、ジゼル!ヒロシマ風お好み焼きだ!食べよう!」
シータさんに引っ張られてヒロシマ風お好み焼きの屋台に来た。
薄く伸ばした生地の下にソースや野菜と炒められた麺が包まれている。食べてみたがとても美味しい。濃厚で甘じょっぱいソースの味がなんとも。たっぷりのキャベツの食感もいいし。
「おいしいですね。」
「うん。普通のお好み焼きも旨いが、ヒロシマ風も旨い。」
「これが『お好み焼き』という食べ物の一種だというのはわかるのですが、『ヒロシマ風』の『ヒロシマ』ってなんですか?」
「ボクもよくわからない。昔この世界に召喚された勇者が広めたと聞いたが。」
「へー。」
勇者かあ…勇者として有名なのは、ヤスヒロ・ホンダだが、このヤスヒロさんが召喚された理由と言うのがしょうもなくて、一国の『領土拡大』を目指した侵攻の為に召喚されたのだ。異世界の住人なら都合よく騙せると思ったようだが、ヤスヒロさんはそんなに甘っちょろくなくて、自分が召喚された理由、この世界の情勢を瞬く間に探り出し、召喚した国を滅ぼしたそうだ。そもそもが「自分を無理矢理誘拐した国に手を貸す理由がない」って正論を吐いたそうだ。この世界には勇者を召喚する魔術が存在したが、帰還させる魔術は存在しないから。
数万年前、『邪神』が存在していたころは、この世界の戦力では太刀打ちすることが出来ず、勇者を召喚し、頭を下げて邪神討伐に手を貸してくれるように願ったと聞くが。その時はこの世界の住人と勇者3人で見事に邪神を討伐したらしい。
勇者はともかくヒロシマ風お好み焼きは美味しい。堪らない味わい。
「兄殿、ジゼル!あっちに林檎飴の屋台が…!」
「シータさん…私ちょっとお腹苦しくなって来たかも…」
「エエ~。ジゼル、まだいくらも食べてないぞ?」
いやいや、結構食べたよ。筍ご飯にかす汁に、肉串、お好み焼き、大判焼き、焼き鳥、桜餅、ヒロシマ風お好み焼き……結構食べたよね。体重に加算されるんだと思うと戦慄が走るレベルだよ。
「アタシも結構お腹いっぱいよ。桜見ながらぶらぶらついて行くから、シータは好きなだけ食べればいいわ。」
「一人で食べるのは結構寂しいんだが。」
シータさんはよく食べるからなあ…シータさんがもりもり食べるのを横目にまったりベルさんとお喋り。
「ジゼルちゃん。どお?休暇は。楽しんでる?」
「ええ。とても。実家でも小さな頃からお手伝いさせられてたので、こんなにまったりできるのは本当に久しぶりかも。こんなに楽しくて良いのかな?って心配になります。」
「ふふ。人生は大いに楽しむべきよ。」
優雅だなあ…幸せ。まったり花見と食事を楽しんだ。
***
夜、タブレットを弄っていて気が付いた。
「あ、【アイテム購入】の情報が更新されてる!」
「どうなったの?」
ベルさんがまったり聞いてきた。
「なんか今日食べたメニューが『食事』の一覧に追加されてます。」
「あらあ…じゃあ、いつでも屋台の味が楽しめるのね。嬉しくはあるけど、美味しい理由の半分はあの屋台に並ぶワクワク感と美しい風景だと思うけれどね。」
「ボクは素直に嬉しいな。次の花祭りを待たなくても美味しい料理が食べられるわけだし。」
「それはそうね。」
美しい風景はついてこないし、屋台に並ぶワクワク感もないけど、その代り半額だしね。
【アイテム購入】は既存の屋台にガンガンに喧嘩を売りに行く仕様となっております。ひ、秘密のスキルだし、使用者数が少ないから…(震え声)




