花嫁様は、桜の如く
僕の前世は、既に結婚をしていました。
とても綺麗で、可憐で、元気いっぱいの女性でした。
でも、その花嫁様は病気で亡くなってしまったのです。
そのとき、まだ彼らは20代でした。
僕は高校生。
都会の、とある学校に通ってます。
僕は特別に運動神経が良いわけでもなく、頭も良くはありません。
こんな僕に女神様が舞い降りて下さったのです。
自分でもビックリしました。
「ねぇ? 聞いてるの」
下から僕を見上げているのは、紛れもなく、僕の彼女です。
同級生ですが、もっと頭の良い高校に通っています。
僕らはとある日、この町の駅で出逢ったのをきっかけに付き合い始めました。
「ね、今日は何処に連れて行ってくれるの?」
「あ、うん。今日はファミレスでも行こうか?」
「やった! じゃあ、財布が空になるまでおごってね!!」
「おごらないよ! 僕はあまりお金がないんだから」
彼女は『さくら』という名前の女の子。
さくらはとっても綺麗で、可憐で、元気いっぱいだ。
結構大食いなのが、玉に瑕なんだけどね。
「じゃあ、少しだけ! 少しだけおごってくれる?」
「仕方がないなぁ……」
彼女は、とてもよく似ていた。
僕が夢で見た自分の前世の花嫁に。
透き通った漆黒の瞳、
背中まで届く長い髪の毛。
花嫁様に似すぎだよ、さくら。
「ね、ちょっといいかな?」
さくらは僕の手を取った。
そして、小さなキーホルダーを渡してくれた。
銀色のプレートに散りばめられた、桜色のストーン。
「ありがと。覚えていてくれたんだね? 僕の誕生日」
「もちろん! 忘れた日なんてないわ」
ねぇ、さくら。
僕はキミが居てくれるだけで十分なんだよ?
夢で見た、花嫁様のように
僕の元から、消えないでくれ。
さくらと一緒に過ごした僕の誕生日。
その日の直後、さくらのお母さんから連絡が入った。
お父さんの都合で、どうしても転勤しなければならないと。
それも遠い遠い外国に。
さくら、何で教えてくれなかったんだ?
さくら、僕らはここで終わってしまう運命だったのかな?
さくら、行かないでくれ……
「今までありがと。ホントはもっと一緒に居たかったけど、どうしても付いて行かなくちゃいけないんだ」
さくらは悲しそうに俯く。
最後の、お別れの時。
「僕だって離れたくないよ、さくら」
こんなベタな言葉しか掛けてやれない。
ゆるしてくれ、さくら。
「じゃあ、さよなら……」
「待って!! さくらっ」
やっぱり運命なんだよ。
こんなに似ている人はいない。
僕らは巡り会う運命だったんだ。
だから、僕の元から離れないで、さくら。
僕はさくらを力一杯抱きしめた。
さくらも負けないほど抱きかえしてくれる。
でも、これで最後なんだね。
ありがと、さくら。
そして、また会おう。
僕の元からさくらは桜の如く消えた。
「ね、ちょっと手伝ってくれる?」
「あ、うん。これを持てばいい?」
「そうそう。そしてこれもね」
僕の花嫁様の名前は、さくら。
一度散っても、桜は次の年にまた咲き乱れる。
キミは、桜の如く綺麗だよ。さくら……
読んで下さってありがとうございました!!
とても短い物語でしたね……
この物語が、沢山の方に読まれることを願っています。
本当にありがとうございました。