神様のプレゼント
ある日の昼。
俺はウルフとバグベアー二匹同時に相手していた。
ウルフが跳躍して飛びかかってくる。俺はブロードソードで顔面をぶった切る。力は上がっていて、ウルフの勢いを跳ね返すことができるようになっていた。
「くおーん」
ウルフが断末魔を上げる。
すかさずバグベアーが右拳を突き出す。俺は半歩さがり、左手をかざす。
「バースト」
一番最初に覚えた攻撃魔法を唱えた。空間が炸裂する。バグベアー吹き飛び、地面に落ちて息絶えた。
「ぐもおっ」
倒した。
俺のレベルは9に上がっていた。十日ほども狩りをしているが、もうこの狩場では不足だった。敵が雑魚くてしょうがない。装備も、武器屋と防具屋で整え、ロングソードにレザーセットの防具だった。この村では最強の装備だった。買うのに相当のメルを支払ってしまった。
俺はモンスターの落としたドロップ品を取りに行く。
「なあ、クーニャン」
「は、何?」
俺の肩に座っているクーニャンが生返事をした。もしかして、寝ていたのだろうか。
「もうちょっと、強い狩場に行こう。もうここじゃ、経験値が少なくてダメだ」
「うーん」
彼女はストレッチのように両腕を伸ばす。やはりウトウトしていたようだ。
「そうね。でもあんまり強いところに行くと、死ぬかもよ」
「強い魔物が出たらすぐ離れるさ。な、いいだろ?」
「そうですねー。んー、んー、ファイナルアンサー?」
「ファイナルアンサー」
「了承っ」
クーニャンが敬礼のポーズをした。
「でも、どこに行けばいいんだろう」
「門衛に訊けばいいんじゃない?」
「そうだな。あ、それとなんだけど」
「何々?」
「アビリティのさ、神様のプレゼントって言うのを使ってみたいんだけど」
「使えばいいじゃん」
「よし、使ってみるか」
俺は右手を上げて、
「神様のプレゼント」
唱えた。
(分かりました)
俺の頭に、あの大仏の声がした。
「あれ、アビリティが変化しちゃった」
「どうしたんだ?」
「アビリティが、メタルサーチになってる」
クーニャンは俺の頭に両手をかざして、眉をひそめている。両手からは黄色の淡い光がこぼれている。
「メタルサーチ?」
「ふんふん、まあ、これが神様のプレゼントなんじゃないの? メタルって言えば、経験値の高いモンスターのことよ。たった今、経験値が欲しいっていう話をしてたし、神様が叶えてくれたんじゃない?」
「そうなのか?」
「多分ね」
「使ってみよう」
「そうね」
俺はまた右手を上げ、
「メタルサーチ」
どこからか鉄のサビのような匂いがした。その香りは森の奥、山の方から流れてくる。
「こっちだ」
「ちょっと、森に行くの?」
「ああ、行ってみよう」
「強いのが出たら、さっさと逃げるのよ」
「分かってるさ」
俺たちは歩いて行った。