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ガシャラ

こんばんは。今日も更新します。

こうやって小説を書いていると、サクサクかける日と、うーんと悩んでしまう日があります。

悩む日はなんと、官能小説を書きたくなってしまいます!

駄目ですね。私は。


 現れたのはムイムイだった。この間会った時よりも、さらに顎がたるんでいる。腹が出ていた。そして、気色の悪いこと、右腕の付け根から木の枝が生えていた。


「モモたーん」


 ムイムイは食堂に入ってくる。小皿を持ったモモを見つけると、喜色満面に微笑んだ。


「む、ムイムイ様」


 モモは立ち止まる。


「何だあの枝?」


 ルルアが俺を向いた。しかし俺は首を振る。分からなかった。


「どうしましたか? ムイムイ様。その右手は、どうなさったんですか?」

「アルティシアちゃんに治してもらったんだ。いやー、この前さ、変な男三人組に、うちが襲撃されちゃって。その時に右手を切られちゃったんだ」


 俺は顔を隠した。後頭部をムイムイに向ける。気づかれない方がいいだろう。


「それで、この食堂に何の用事ですか」

「お別れを告げにきたんだ」


 ムイムイは俯いて、ぽろぽろと涙をこぼした。


「そうですか」


 モモは笑いをかみ殺す。こらえきれず、皿で口元を隠した。


「兄ちゃんが西の方に行くって言うから、アルティシアちゃんと僕も一緒に行くことになったんだ。だから、モモたんと会う日も、今日で最後かもしれない」

「そうでしたか。さようなら」

「うん、バイバイ。それでなんだけど」


 ムイムイは泣き顔から、怒りへと表情を変えた。


「この村は、アルティシアちゃんに頼んで、ぶっ壊してもらうことにしたから」

「……は?」

「だからモモたん。モモたんが良ければ、一緒に逃げよう」

「何を言ってるんですか」

「だから、この家をぶっ壊すって言ってるの。昔から言うじゃないか。男子たるもの、好きな子には意地悪をするって。僕はモモたんが大好きだから。最後にとんでもない意地悪をしようと思うんだ」


 ルルアが立ち上がった。


「てめえ、殺すぞ」

「ルルア、お前には話しかけてないよ」


 食堂の扉から、グランツが顔を出した。


「おいムイムイ。そろそろ行くぞ」


 ムイムイが半身だけ振り向く。


「あ、ごめん兄ちゃん。あと一分待って」

「外にいるぞ」

「うん」


 グランツはあの日の襲撃者がこの食堂に集まっていることに気づいていないようだ。


 ムイムイはまたモモの方に体を向ける。


「モモたん、さあ、一緒に逃げよう」

「ご遠慮させてもらいます」

「……くう、僕がこんなに譲歩しても駄目なのか」


 ムイムイが顔を落とす。右手の木の枝がわさわさと動いた。気味が悪い。


「譲歩じゃなくておどしだからな」


 ルルアが睨み付ける。


 しかしムイムイはルルアの声に反応せず、また涙を流し始めた。そのまま、扉の方へ引き返していく。


「モモたん、僕は、僕は君のオッパイも揉んだことが無かったけど」


 ムイムイは大声で言った。


「僕の体は、いつでも君の体とつながっていたよ!」


 ムイムイは扉から外へ消える。


 少しの間静寂があった。


「変態野郎だな」

「ああ、いなくなってくれてせいせい」


 モモのいつもの丁寧な口調が、くだけたものになっていた。


「どうする?」


 俺は両腕を組んだ。クーニャンに顔を向ける。しかし彼女はハチミツを舐めることに夢中のようだ。


「あのアルティシアって女、怪しいな。どうやってこの村を破壊する気だ」

「外を見てくる」


 俺は立ち上がり、扉へとむかった。


「私も行くー」


 クーニャンが後ろから追いかけてくる。ハチミツは充分飲んだみたいだ。


 外に出ると、左手側に、馬車が走っていくところだった。馬車の影はどんどん小さくなる。突然、目の前に紫色の渦が生まれた。渦は大きくて、高さはこの宿屋の二階ほどもあった。


「貴様か」


 ふと、後ろから声がかかった。振り向くとカイナがいた。あの時と同じ、黒装束をしている。カラスのような声に聞き覚えがあった。


「カイナ? 何をしているんだ?」

「何を? 我はイベントを進めただけだ。あの武器商人兄弟とは、縁切りなった」


 カイナの頭の上から妖精が顔を出した。メルディーである。クーニャンが飛び立った。


「メルディーじゃん。へい、やっぴー」

「やっぴー」


 二人は両手を合わせた。


「オウカ、手を貸せ。魔物が来るぞ」

「この渦か?」

「ああそうだ」


 渦はぐるぐると回転する。やがて体が出てきた。巨大な角が生えている。獰猛な口をしている。


「カイナ、一つ聞いていいか?」

「何だ?」

「お前はどんなイベントで、縁切りになったんだ」

「ふん、あの女、アルティシアに恥じをかかせてやった。そしたら俺を殺すことに決めたらしい」

「ふ、ふーん」


 恥じとは何だろう。俺は訊かないことにした。


 そして今はとりあえず、この魔物を撃破することが最優先である。


「わーお、ガシャラだ。格好良い」


 クーニャンが魔物を指さす。魔物の名前はガシャラと言うらしい


「本当だ。カイナ、気を付けて」


 メルディーが相棒を気遣う。


「分かっている」

「カイナ、お前のレベルはいくつだ?」

「……教えん」

「2だよ」


 クーニャンがカイナに両手の平を向けていた。黄色い光がこぼれている。


「2!?」

「ごめん、クーニャンのパートナーさん」


 メルディーがすまなさそうに言った。


「カイナ、あのアルティシアとか言う女に殺されまくってさ。レベルが下がりまくっちゃったんだ」

「言うな」


 カイナが顔を赤くしていた。恥じているらしい。


「……まあいいけど」


 俺は食堂に顔を向けた。


「ルルア、モモ、来てくれ!」


 叫ぶ。


 モモが一瞬扉から顔を出し、そして何を考えたのか食堂へと引っ込んで行った。


 魔物の体が全部出ると、紫色の渦が消失した。


 ガシャラはワニのような怪物だった。四本足で立っており、背中にはいくつもの突起がある。肌は浅黒く、突起は赤い。そして口が大きかった。ガシャラが唸り声をあげる。空間が震えた。俺は耳をふさいだ。そこで気づいた。剣を寝室に忘れてきてしまった。


続きます。

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