初稽古
続きです。
今日は休日だった。食堂は休みであり、村の人々は教会へと出かける。しかし牡鹿の角亭の皆は、教会へは行かなかった。教会は魔王を信仰しているからである。
俺の部屋には新しく花が飾られた。そしてクーニャンが山に行って、キノコをいっぱい持ってきた。
「キノコがいっぱいとれたの。皆で食べよ」
「それ、毒キノコだぞ」
部屋に来ていたルルアが注意した。
「え!?」
確かに、その赤いキノコ群は白いボツボツがいっぱいあって、食欲はわかなかった。
クーニャンは悲しそうな顔で、
「捨てる」
ゴミ箱にぼとぼととキノコを落とした。
「皆さんの食事を、私、作ります」
モモが袖をまくっていた。やる気がみなぎっている様子だ。
「腕によりをかけて作ります」
「朝から元気だな」
「元気ですとも! なにせ、この村にはもう地主がいなくなったのですから」
「新しい乱暴な地主が来るんじゃないか?」
俺は不安を口にした。
クーニャンが飛びあがり、人差し指を立てる。
「来ないよ」
「何でだ?」
「敵にだって脳味噌があるし。またオウカにやっつけられるかもって、思うじゃん。だから、当分の間は大丈夫よ」
「ふーん」
「よし」
ルルアが持ってきていた2本の木刀を、俺に1本投げて渡した。俺は慌てて受け取る。
「それじゃあ、助けてもらった代金は、きっちり払ってやるよ」
「代金? ああ、稽古をつけてもらうはずだったな」
「そうだ。表へ行くぞ」
「私は厨房で、朝ご飯をしたくしますね」
モモが部屋を出て行く。
「ルルア、ちょっと待ってくれ」
「何だ? おじけづいたのか?」
「いや、違う」
俺はクーニャンに尋ねる。
「なあ、クーニャン。一時的に俺の攻撃にクリティカルが出ないようにするってことはできるか?」
「ん? できるけど、何で?」
「稽古で木刀が折れたら、稽古ができないだろ」
「ふんふーん。そうね。じゃあオウカのクリティカル率は、0にしておくね」
クーニャンが空中で両手の平を掲げる。俺に向けて、黄色い光がこぼれる。
「オーケーよ」
「よし。それじゃあルルア。頼む」
「今のは何の儀式だったんだ?」
「それは、な。お前はパーティだし、話しておくよ」
話がてらに、俺たちは部屋を出て、外に向かった。レベルを上げまくってステータスの運にスキルポイントを全振りしたことを話すと、ルルアは興味深げにふんふんと頷いた。
「それって私にもできるのか?」
「できるけど、相当モンスターを倒さないといけないな」
「お前はどれくらい倒したんだ?」
「それは、実はメタル系のモンスターを倒してたんだ、三か月ぐらい狩りしてたよ」
「ずいぶん長いんだな。メタル系のモンスターって、どこに出るんだ?」
「後で連れてってやるよ」
「そうか。よし、あたしも狩りに行こう」
「それより今は稽古を頼む」
「分かった。じゃあ、来い!」
俺とルルアは木刀を構え合った。彼女から先に動いた。びしばしと腕や足のすねを叩いてくる。防御力の高い俺としてはあまり痛くは無かったが、ライフポイントが減っていく。そして俺の攻撃はひらりひらりと躱された。命中力が低い訳ではないのだが。これはプレイヤースキルの問題であった。俺はあろうことか、木刀を取られてしまった。宙でくるくると回転し、地面に落ちる。
「あれ? オウカ、お前こんなに弱かったっけ?」
「う、うるせーぞ。もう一回だ」
俺は木刀を拾う。そして二回戦が始まった。
ルルアの突きが、俺の腹と顎にびしばしと決まる。
「痛っ、お前本気だしたな」
「今のは二段突きだ。爺さんから教わった必殺技ってやつだな」
「く、くそう」
背中を向けて俺は逃げる。
「おい、戦士なら背中を向けるな」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。いまライフポイントを回復するから」
俺は右手を掲げた。
「ヒールレイン」
俺たちの周りに一瞬の通り雨があった。
「雨降ってきた?」
「もうやんだよ」
俺は木刀を構える。
「先手必勝だ!」
俺はルルアにかかって行った。そして、一時間ほどが過ぎていく。
小説を書いていると、自分としては書けたなと思うところと、面白く書けなかったところがあって気になります。
また、タイトルにメタル系のモンスターを独占すると書いているのに、オウカは優しい男なので、パーティのメンバーには共有したりします。独占じゃないじゃないか! と思うかもしれませんが、そこはどうかご容赦ください。
さて、もうすぐエピソード1が終わります。エピソード2はもうすぐです。




