看病
続きです。
気づくと、いつもの部屋だった。もう慣れた、木製のベッドで寝ている。
「は」
俺は息を吐いた。頭がぐるんぐるんとする。ひどい風邪をひいてしまったらしい。
「ごほごほっ」
「オウカ様、気づきましたか」
目の前には、モモの顔があった。俺のオデコから濡れタオルを取り、バケツで洗ってしぼり、またオデコに置く。
「どうなったんだ?」
俺は訊いた。
「分かりません」
モモは杖を持ち、何かぶつぶつと唱える。一瞬、体が軽くなるのを感じた。これはヒール系統の魔法だ。プレイヒールである。
「モモ、無駄だ。俺はライフポイントが減ってるんじゃなくて、風邪を引いたみたいだ」
「でも、何かしなければ」
「何か食べたいものはある?」
ふと、上の方から聞きなれた声がした。クーニャンが掛け時計の上に両足を組んで座っている。
「特に無い」
俺はまた咳をした。
「ルルアは?」
「姉様は今、食堂で働いています。交代で、オウカ様の看病をしていたのですよ」
「お前、鼻の下伸ばすなよー」
クーニャンが翼を広げて降りてきた。モモのオデコにデコピンをする。
「痛っ、鼻の下など、伸ばしておりませんっ」
「嘘つけ、病に伏せっているオウカの看病をして、あわよくばその心を我が物にするつもりだろう」
「そんなこと考えていませんっ」
「ふーん。オウカの汚れた体を拭いている時なんて、顔が真っ赤だったくせに」
「そ、それは……」
モモは俯く。顔が首までピンク色だった。ユデダコみたいだと思った。
「おい、クーニャン。やめてやれよ」
「何言ってんだよ、オウカ。オウカが寝てた三日間、モモは変態野郎だったんだ」
「三日も寝てたのか」
「あ、無視した」
「だって、いつもの嘘嘘だろ?」
「嘘じゃなーい」
クーニャンはベッドに降り立ち、俺の耳のそばでこそこそと話す。
「実はね。この三日間でルルアとモモのアビリティのレベルが上がったんだ。何だと思う」
「何だ? それは」
「それはと言うとねえ☆」
「もうお黙りになってください!」
モモが両手でクーニャンの頭を握った。
「ぐほぐほ」
クーニャンが苦し気な声を上げる。体をばたつかせて、何とか宙へと逃げ延びる。
「恋心! 恋心レベルが一気に3に上がったんだ」
「クーニャン様、それ以上しゃべったら」
モモが杖を構える。まさか、攻撃魔法を使う気だろうか。
「素直になれよ、モモー。お前、オウカの下の世話も率先してやってたじゃないか」
「それがどうかしましたか?」
「これは私の見解だけど。モモはオウカの下の部分を、他の誰にも見せたくなかったんだ。触られたくなかったんだ。つまり、独り占めしたかったんだ」
モモの顔が青ざめていく。本気で怒っているようだ。
「おい、クーニャン」
「まだあるぞ」
「クーニャン様、どうして」
「モモはオウカが食べ物を飲み込まないからって、口移しで食べさせてたんだ。つまり二人はもう、キスまでした関係なんだ。それも何回も」
俺は上半身を起こす。
「おいクーニャン。病気の俺を、怒らすなよな」
「なーんて、嘘嘘物語でした☆ どう、キュンキュンしたでしょ」
「キレそうだ」
「あ、じゃあ私、森で野イチゴでも、採ってこようかな。じゃあねー、ばいびー」
クーニャンは飛び立ち、天窓から外へ出て行った。
俺はクーニャンを見送り、大きなため息をついてベッドに横になる。
隣にいるモモは何と、泣き出していた。しくしく泣いている。
「おいモモ、泣くなよ」
「すいませんでした」
「いや、その、えっと、なんて言うか」
俺は感謝を伝えなければいけなかった。モモが泣き止むように。
「お前に世話されて、俺はすごくうれしい気持ちだ」
「ほ、ほんどうでずか?」
モモの声が鼻声になっている。
「ああ、本当だ。だから、泣き止んでくれ」
「私は変態野郎です」
「違うだろ」
「違いません」
モモは泣いたまま立ち上がる。
「さようなら」
モモは部屋を飛び出していった。最後に残された言葉が、俺を困惑させた。これから、どのようにモモと接すればいいだろうか。分からなかった。
俺は目をつむる。
ちょっと汗をかいたおかげで、気分が楽になっていた。
少し更新の時間が遅くなってしまいました。何度も書き直しをしていたら、ページがバグりました。申し訳ありません。
私はこの小説のメインヒロインを決めていませんが、いつか決めなければいけない時が来ると思います。読者様は、どんなヒロインがメインであってほしいでしょうか。一度聞いてみたいですね。
ささ、今日も寝ます。また明日です。さようなら(モモ風




