危険な香り
こんばんは。今日も更新します。来訪者様には感謝です。
明日から休日ですね。やりました!これで小説がいっぱい書けますねv
ところで、車のタイヤ交換はもうしましたか? 私はまだです。
しかし、外の気温はいつ雪が降ってもおかしくないほどです。
こんな時は、お酒です。体を温かくして眠るのです。
カイナが去ると、室内はがらんとした。どこかでフクロウの鳴き声がする。鈴虫も鳴いている。
「あー、良かった。後はムイムイとあの兄貴を倒すだけだ」
ルルアがほっとしたような声で言った。もう声を出しても大丈夫だった。
「本当です。オウカ様を信じて、良かった」
モモも勝どきムードで、もうこの村は助かったような言葉を発している。両腕をグーにして合わせている。
しかし俺は緊張していた。まだ戦いは終わっていない。そして火薬の匂いがするこの館には、何か危険な武器が隠されている気がしていた。
「待て、お前ら、安心するな」
「なんだよ、オウカ。お前がいてくれりゃあ、何が来たって怖くねえよ」
「脳たーりんは黙ってなさい」
クーニャンが飛び回り、室内の空気を嗅ぎまわっていた。
「なんだと?」
ルルアが怒る。
「なによ、この脳味噌空っぽ娘」
クーニャンが睨み付ける。
「い、言ったな。チビのくせに、粋がるのも大概にしろ」
「待て!」
大声が響いた。
「え? え、すまん」
ルルアが謝罪する。しかし待てと言ったのは俺じゃない。俺たちじゃない。右奥の扉が開き、グランツが姿を現した。声を発したのは彼だった。そして車輪つきの機械を押している。あれは、ガトリングガンだ。
「おい、クーニャン。これは逃げるイベントか?」
「ぶー、教えなーい」
「教えないって、お前!」
「ご、ごめん、私も分からないよ。だって私はただのアドバイザーだし」
「待てお前ら、今から殺してやる」
グランツが機械を操作する。モモが慌てて前に出た。ロッドの先を床につける。そして自分にしか聞こえないような小さな声で唱えた。
「ガードウォール」
俺たちの前に強固な壁が現れる。それと同時に、ガトリングガンが弾丸を射出した。弾は魔法の壁に当たり、跳ね返される。
「殺してやる、殺してやるぞおお」
グランツの目は血走っていた。弟の右手を切断されたことがよほど頭にきているようだ。ガトリングガンが恐ろしい音を立てて回転する。そして十秒と経たないうちに、ガードウォールの効果時間は終わりを告げた。
「ガードウォール」
モモはもう一度唱えた。壁が新たに出現する。
「オウカ。あの魔法もう一回」
クーニャンが急かす。
「分かってる。ハイバースト!」
俺はグランツに向けて右手を掲げた。空間が大きく炸裂する。ガトリングガンと共に、グランツは吹っ飛んだ。壁に当たり、床に倒れる。
ルルアは走り出していた。大剣を両手に、グランツに向かって走る。
彼はニタニタと笑っていた。両手で自分のジャケットを広げる。服の内側には、爆弾がいくつも抱えられていた。
「俺を切ったら、お前らも死ぬぜ?」
「くっ」
ルルアは立ち止まる。
「イカレて野郎ね」
クーニャンが人差し指を立てた。
「そうさ、俺は最高のイカレ野郎にして、リアラ最高の武器商人の息子、グランツ・フェルナンド。死を売る男だ」
「でも、爆発しないんでしょ?」
クーニャンが呆れ声で、両腕を組んでいた。
「なんでだ?」
「だって、今のハイバーストの衝撃で爆発しないんだから、ニセモノでしょ。レプリカ?」
「ここは逃げさせてもらう」
グランツが立ち上がり、いそいそと背中を向けた。その後頭部にルルアは切りかかる。
「ぐあっ!」
「殺さないだけ、感謝しろよ」
グランツは意識を失って床に倒れた。ルルアは剣の腹で叩いたようだ。
「なんてダサイ男なの?」
クーニャンは両手を開いて頭を振った。
「それより、これからどうするんだ?」
俺はモモに訊いた。
「そうですね。ひとまず、グランツとムイムイを捕らえましょう。そして、山に牢屋を作り、その中で餓死させるのです」
「お前、結構残酷なのな」
「彼らには当然の報いです。牢屋の中で、この世に生まれたことを後悔させます」
「ふ、ふーん。でも、でもさ。どっかの町から衛兵を呼んで、この館を調査してもらえばいいんじゃねえか? 悪いことしてたんだろうし。ムイムイとグランツの兄弟は裁判にかけて……」
「オウカ様。この世は、悪がはびこっています。どこかから調査団を派遣してもらっても、その調査団は悪です。そして調査は歪な答えを出します。この館を襲ったオウカ様に非があることにされるでしょう。そうなれば、オウカ様は指名手配されてしまいます」
「マジか」
「マジです」
俺は両手をだらりと下げた。
「じゃあ、兄弟は殺すとして。あと、この館に住んでいる人はいるのか?」
「いないと思いますが、使用人が村から通っているはずです」
「使用人も殺すのか?」
「いえ、やめてください。使用人は村人です。悪ではありません」
「そうか。じゃあ、兄弟を殺して、イベントは終わりと」
俺はグランツのそばに歩いて行った。
その時だ。
「はいはい。終わり終わり」
階段の上から一人の女性が降りてきた。俺はびっくりした。まるで気配がなかったからだ。そう言えば、グランツは女性を抱いていたと、そのような言葉を発していた覚えがする。もう一人、敵がいたのだ。
女性はネグリジェを着ていた。足は裸足である。髪はセミロング。大きい瞳をしていて、若干つり目だった。彼女は眠いのか、右手で目をこすっている。香水のような甘い香りがした。その匂いに、俺は腹が痛くなった。
「誰だ?」
ルルアが警戒した。剣を女に向ける。しゃべってはいけないという約束を破っているが、ここは注意すべきところではないだろう。
「私? 私の名前はアルティシア・サーディス。ただの遊女よ」
「遊女?」
ルルアが嫌そうな顔をする。
「ええ、それでなんだけど。グランツを置いて帰ってくれないかしら。その男はね、私の物なの。最も、リアラ一の武器商人に出会うための踏み台だけど」
「お前もこの村の、過ぎた課税徴収に付き合っていたのか?」
「それは知らない」
アルティシアと名乗った女が、階段を下りて床に降りる。右手にはとがった宝石の指輪をしていた。クーニャンが俺の耳に寄ってきて、こそこそと話す。
「あの指輪。モモの杖と同じ、魔法の増幅体よ」
「分かった」
俺は剣を構え、いつでも行動できるように気をひきしめた。
「そんなに戦いたかったら、森にでも行けばいいじゃないの。モンスターが大歓迎の大喝采をしてくれると思うわ」
「悪いけど、グランツは渡さねーよ」
ルルアが厳しい口調で言った。
「じゃあ、死ぬ?」
アルティシアが人差し指を立てた。
「火柱」
ルルアの足元の床が燃え上がり、炎の柱が立つ。彼女は紙一重で躱していた。
「戦闘開始だな」
ルルアは不敵に笑った。
「ちょっと待ってよー。オーラメリースリーピー」
アルティシアが唱えた。
俺は闇の中に吸い込まれるような睡魔を感じた。両手で剣を床につき、何とか耐える。
俺の周りでは、ルルアとモモが床に転んだ。ルルアは激しいいびきをかいている。眠ってしまったようだ。なんとクーニャンまでもが床に倒れている。
「お、お前」
俺はアルティシアを睨み付けた。
「あら、眠ってない子が一人いるようね」
彼女は心外そうな声を発した。
「お前、許さないぞ」
「許さないって、私はまだ何もしてないじゃない。ただ、グランツを返してもらいにきただけよ。それと、グランツが大好きな弟君もね」
アルティシアは歩いて行く。そして、
「使い魔召喚」
彼女の隣に黒い渦が起こった。中から筋骨隆々のモンスターが出てくる。闘牛のようであるが、二本足で立っていた。魔物はグランツを抱え上げる。そして彼女は奥の部屋へと去って行った。その奥の部屋にはムイムイがいるはずだった。
俺は追うという行動ができずにいた。眠気が強すぎる。
クーニャンを拾い上げ、レザージャケットの胸ポケットに入れる。
右手にルルアの体を担ぐ。大剣を担ぐ。武器を残して行けば、ルルアがこの館に攻め入ったことが公になってしまうかもしれない。
左手にモモの体を担ぐ。杖も忘れない。
俺は館の外へと足を踏み出した。
あれから、どうやってどこに向かったのか分からない。
俺は、また死んでしまったのだろうか。
暗闇の中でもがいていた。
どこに行けばいい?
何をすべきだ?
何も分からない。
あの大仏はどこだ?
俺はひどい体調だった。
「っっ」
ふと、誰かの声がした。俺はその声に向かって暗闇を泳ぐ。
「助けてくれ」
「ッッカ」
「助けてくれ」
「ッウカ」
「俺一人では、何もできない」
「オウカ!」
はっきりと俺の名前が呼ばれた。耳が覚醒する。俺は両目を開いた。
続けて更新します。




