夜を待って
こんばんは。今日はアラレが降ってきました。それも何回も。私としては、寒いのは苦手です。
俺たちは夜を待っていた。今夜、この村の地主の家に襲撃する。場所はルルアとモモが知っている。夜になるまでルルアは食堂のウェイトレスとして働いていた。モモは俺の部屋で、ニット生地の覆面を編んでいた。クーニャンは掛け時計の上で寝そべっている。俺はやること無く、ベッドから覗く天窓から星空を眺めていた。前世の東京ではありえない光景に感嘆していた。俺はプラネタリウムが好きだった。しかしこのゲームの星空は、地球とは異なる配置をしていた。でも、それを見ていると心やすらかな気持ちになれた。
「編み終わりました」
モモが二つの覆面を両手に持って、掲げて見せた。両目のところだけ空いている。なるほど、これを顔に被れば敵に正体を悟られずに済むだろう。しゃべらなければ、だが。
「被ってみろよ」
「はい」
モモは長い髪を頭の後ろで巻き上げ、ヘアピンで止めた。覆面をかぶる。
「どうですか?」
こちらを向いた。
「犯罪者そのものだな」
「ひどいですっ。オウカさん、私は犯罪者ではありません」
「でも、これから人を殺しに行くんだろ?」
「殺しに行くのではありません。正義の鉄槌をくらわしにいくのです」
モモが人差し指を立てた。
「同じじゃないか」
「同じではありません」
「同じ」
「違います」
「ふむ」
俺は左手に顔をつけた。
「なあ、聞いておきたいことがあるんだが」
「なんでしょう?」
「お前らの両親は?」
「……」
「いや、いいんだ。答えたくなければ、言わなくていい」
「いえ、これから死ぬかもしれないわが身です。戦いを共にするオウカさんには話しておきたいです」
「そ、そうか」
彼女は仮面をかぶったまま、顔を俯かせる。
「私たちが物心ついた時には、もう両親はいなく、この食堂兼宿屋で生きておりました。お爺様のお話では、なんでも山に捨てられていた私たち姉妹がウルフに食べられそうになっているところを、お爺様が助けてくれたとのことです」
「ふーん」
「それだけです」
雰囲気が湿っぽくなってしまった。俺は努めて明るい声で話す。
「でも良かったな。良い爺さんに拾われたようで、さ」
「はい」
下の階でルルアの怒声が聞こえてきた。
「なんだ?」
「またですか」
モモが覆面を脱ぎ去り、その場に置いた。立ち上がり、部屋の扉へと向かう。
「おい、何があったんだ?」
「地主が来たんだと思います」
「どうして地主が来るんだ?」
「分からないですか?」
モモが表情を険しくさせてこちらを振り返る。
「分からんが」
「この食堂がどうしてはやっているか」
「……、なるほど」
食事に税金をかけていないのだ。そうすれば当然、地主に払う税金が無い。つまり、払っていない。今、地主は徴収に来たということか。
「俺も行く」
「ついてきてくださいな」
「ふぁ」
掛け時計の上では、クーニャンがあくびをしていた。目を覚ましたようだ。
今日もう一つ、更新します。




