内乱3
遅くなりました。
観艦式数日前。某所。
森の中にある洋館風の建物。洋館の周りには小銃を持った兵士が立ち、重々しい雰囲気がある洋館。今館内で陸海空の将校たちが集まり室内を異様な雰囲気で満たしていた。
「政府の者共め、本土が平和だからとここまで腑抜けだったとはな」
リーダーらしい陸軍将校が口を開いたのを期にそれぞれが喋り出す。
「政府の奴らは平和平和と唱え、中華民国と対話と言い続け結局何も成果はない」
「その通り、中華民国は我々がこれ以上攻めてこないことをいいことに余裕を見せ付け強気な態度で高額な賠償と満州の返還を要求している」
「前線で戦う兵たちは幾度となく行われる総攻撃に晒され多くの死傷者が出ていると言うのに政府からは現状を維持せよだ」
中華民国の国民革命軍は日中開戦で奪われた北京や上海などを取り戻すべく何度も総攻撃を仕掛けている。
日本軍は塹壕を築いて守りに徹しているが数が多い上に欧米からの支援を受けている国民革命軍の攻撃は激しく長距離からの砲撃や航空機からの攻撃もしてきている。
そのため日本側は戦闘の度に多くの死傷者を出しているのだ。しかも一般人に変装したゲリラ兵が町中などで攻撃を仕掛けて来る。これで民間人に被害が出てしまっているのに政府はこのまま鉄壁の防衛をしていれば向こうは攻撃を諦めこちらが提示する交渉のテーブルに着くだろうと楽観視しているのだ。
しかし現実はなんとしても取り戻そうとする国民革命軍の攻勢は止まることを知らず続いている。
「欧米列強からも防衛に徹している日本を弱腰と笑い、犯罪者扱いして我が国に経済制裁を行っている。このままでは経済は崩壊するかもしれん」
「そもそも欧米列強は白人至上主義が根強く、我らこそが真の人類と信じている。
だからと有色人種を管理しなくてはならないと勝手な妄想までも抱き、それを徹底するには有色人種で白人に勝利した我が国日本が邪魔で仕方がないようだ」
清王朝の時代、中国は列強からも強国だと見られていた。だが日清戦争でアジアの大国に小さな島国が勝利したために列強は強国という見方を変え中国支配を進めた。
日本はと言うと清王朝に勝利したことで強国と見られたが、大国ロシアには敵わないだろうと思われていた。しかしこれも予想は裏切られ勝利してしまう。しかもこの歴史では大勝利であった。
この勝利で列強は日本を単なる極東の島国から東洋の大国と認識せざる得なくなり、第一次世界大戦にて西太平洋の制海権を握ることとなった。
これにはアジア・アフリカに植民地を持つ国々は危機感を持った。
極東にある有色人種の国が白人の国に勝利し、超大国になろうとしている。ならば自分たちにも出来るのではないのかという希望が芽生えるのに恐怖を抱いたのだ。
芽生えてしまえば各植民地で独立の嵐が起こってしまう。そうなってしまえば列強は力を失う。
ならばその希望をなんとしても潰せないかと考てていると日中戦争が始まったので日本を何としても弱体化させようとしている。
「最早対話による平和的解決は不可能だ。ならば力で解決するしか方法はない」
そうだそうだと多くの者が賛同する。
そんな中一人の若い将校が発言した。
「力で解決と申されましたがその場合列強が日本に攻め入る口実を与えてしまうのではないのでしょうか?」
可能性としては十分にあった。
制裁だけでは終結に向かわないとして列強は実力行使に出てくるかもしれない。
「恐れる必要はない。陸軍には75ミリ砲搭載の主力戦車、大口径の自走砲。海軍には41センチ砲搭載の戦艦を8隻、大型空母4隻。空軍には戦闘機隼や重爆深山などが数多く配備されている。これだけの戦力、例え列強でも保有しておらん。我が国は世界最強と言っても過言ではない」
この時の日本は未来技術で戦力は大幅に強化され瀬戸内海だけでなく東北、九州、朝鮮半島、満州などに大規模な工場が建設され米国に勝るとも劣らない工業力を有していた。
人口の問題から本格的な物量戦となったら日本は不利になってしまうが。
「しかし・・・」
反論しようとした若い将校の台詞は手を叩く音で中断された。
見るとリーダーらしい将校が決意したような表情で皆を見ている。
「我らが決起しなければそう遠くない日にこの日ノ本の国は列強に呑み込まれてしまう。それを防ぎ理想を現実にするためには我ら神州会が決起しなければならない。
列強が攻めてくるのならなら返り討ちにしてくれるッ そして真の民族平等、恒久平和を実現させるのだッ!」
ザッと一斉に敬礼して
「「「全ては共存共栄、神州共栄圏設立のためにッ!!」」」
と叫んだ。
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