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第2章 出会いは恋の予感?-3


 新宿から早稲田まで電車を乗り継いだとしても十分とかからない距離を、勝弥はママ

チャリで向かった。

「くーっ、こんなことばっかやっとったらバイト探すヒマもありゃせん。オレのアクション

スターになる夢はいつ叶うんの?」

 愚痴でも言ってなければやっていられなかった。

「にしても、腹減ったの〜」

 考えてみれば、昨夜公園で水を飲んだきりで何も口にしていない。空腹を実感した瞬間、

勝弥のパワーも半減する。

 コンビニでおにぎりを買いたくても、祥子に有り金全部吸い取られてしまって買うことも

できなかった。

「ホント、尾道に帰ろっかのー」

 などと、泣き事を言いながら、麻衣のアパートに到着したのは十時過ぎだった。

 階段を這い上がり、最後の力を振り絞って二〇三号室のチャイムを鳴らすとその場に座り

込んだ。もうガス欠で指一本動かす気力すら残っていない。

「どうしたの、勝弥くん?」

 出てきた典子は汗だくで倒れこんでいる勝弥を見て唖然としていた。

「おばちゃん、カップ麺でええけー食べさせて」




 ずるずる。

 ずるずるずる。

 ごくごく。



「ぷは〜っ」

 カップ麺を食べた勝弥は一息ついた。満腹度はまだ二十パーセントにも満たなかったが、

それでも今日一日は何とか動くことができる。

「ごちそうさま」

 勝弥は空になったカップ麺の容器の前で両手を合わした。

「ごめんね。何か作ってあげればいいんだけど、スーパーがどこにあるのかまだわからなく

て」

「今のオレにはカップ麺もご馳走じゃから気にせんでええよ」

「勝弥くんも苦労してるのね」

「苦労?」

「一人前の探偵になるまではお金だって」

「ちがうちがう」

 勝弥は否定した。

「オレがなりたいのはアクションスター! ちょっと訳あってセンパイっトコに世話になっ

とるだけで」

「アクションスター? ずいぶんと大きな夢を持ってるのね。お母さんは知ってるの?」

「いや。こっち来てから全然連絡しとらんから」

「心配してるでしょうに」

「オレの母ちゃんはそういうキャラじゃないけー、手の掛かるバカ息子がおらんようになっ

てせーせーしとんじゃないか」

「そんなことないわよ。子供のこと心配してない親なんていないわよ。きっと勝弥くんのお

母さんだって」

 ふと典子が寂しい表情を見せた。

勝弥は胸をしめつけられた。

「おばちゃん、オレが絶対に麻衣姉のこと見つけちゃるけー!」

 今の勝弥にはそれしか言えなかった。

「ありがとう、勝弥くん。あなたがいてくれて本当によかった。おばちゃん、心強いわ」

 典子は涙を浮かべながら気丈に笑顔を見せてくれた。

「でさ、おばちゃん。その、あの」

 麻衣の私物を見せてほしい。

その一言が言えなかった。

「麻衣姉が通っとった聖ポリアンヌ女子大学ってのはどこにあったっけ?」

「目白よ」

「目白? 目白だったらわざわざ電車も乗り換えんと行かれんし、普通は大学の近くのアパ

ートを借りたりするんじゃないんかの?」

「あこがれてたのよ」

「あこがれ?」

 勝弥は首を傾げた。

「電車通学に。近くに借りたら電車に乗ることもないでしょう」

「そんなもんかの? 満員電車に詰め込まれるのは苦痛でしかないけどの」

 東京に来て真っ先に満員電車の洗礼を受けた勝弥には、麻衣の気持ちはいまいち理解でき

なかった。

「おばちゃんも本当は寮の方が近いから寮に入りなさいって勧めたんだけど、どうしても電

車で通える場所がいいって言うから。でも、こんなことなら無理にでも寮に入れておけばよ

かったわ」

「オレ、これからその大学に行ってみるわ。友達なら何か知っとるかもしれんし」

「あ、勝弥くん、ちょっと待ってて」

 何かを思いついたように、典子はキッチンに向かった。

 待つこと数分。

 典子はキッチンから何やら包みを持ってきた。

「お米があったから、ご飯を炊いといてよかったわ。おにぎりだけなんだけど、お昼にでも

食べて」

「おばちゃん」

 勝弥は典子の心遣いにじーんと目頭が熱くなった。

 勝弥は遠慮なくおにぎりを受け取ると、足取りも軽くアパートを出た。





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