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あの人と共に  作者: yasu
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第三話 『面接』

第三話 『面接』

 面接当日.インターネットと電話で指示された場所をそれぞれ確認し直し、身支度をして出発した.


――バイトだし、格好は私服で良いよな・・・・?


 ネットで写真を見る限り普通の会社のようだ.電話では、私服で良いですよ、とは言われたが.


――無難な服装にしとくか.


 少し早目に家を出た.会社の場所は大学裏の山の頂上付近である.山といっても、開拓されており、大小様々な会社が立ち並んでいる.その内の一つが、今回受ける会社である.

 山道を自転車で走るわけだが、これがまた結構キツい.15分間とはいえ、ひたすらに坂道をゆっくりと登って歩いた.6月とはいえ、昼間は暑く、まして、自転車で坂道をひたすら登るのだが汗をかくのは当たり前である.

 それでも、出来る限り汗を抑えながら登りきり、目的と思われる会社に着いた.


 『駐輪場があるから、そこに自転車を停めて.中に入ったら左手に守衛さんが居るから、その人に話しかけて』


 電話での指示通りに、自転車を駐輪場に停めた.駐輪場には喫煙用の灰皿も設置されており、そこでスーツ、私服問わず、男女が談笑しながらタバコを吸っていた.

 人とすれ違うと、

 「お疲れ様です」

 と、挨拶された.とっさのことで挨拶は返せなかった.驚いたものの、別に悪い気はしなかった.

 守衛室に行き、名前と面接に来た旨を伝えると、何かボードにチェックをつけてロビーまで案内された.

 「ここで、待っていてください」

 そう言われ、自販機の横に置いてある、6人がけくらいのソファの端っこにちょこんと座った.


――しばらくしたら担当の人が来るのかな・・?


 と、思っていると、スーツ姿の大人びた女性がこっちに向かってやってきた.守衛さんと一緒だった.軽く会釈して、隣に座った.どうやら一緒に面接を受ける人らしい.

 そうこうする内に、計6人くらいの男女が集まった.半分はスーツだった.

 「今日はスーツの方が良かったんですかね」

 隣の、スーツ姿の男性に話かけた.

 「どうなんでしょう・・・・・.僕はとりあえず、スーツの方が良いかなって思いまして」

 「そうなんですか」

 会社だからスーツの方が良いと思う方が自然なのだろうか.

 「大学生ですか?」

 「あ、いいえ.もう卒業してます.あなたは?」

 「まだ大学生です」

 なんてことはない、普通の自己紹介をしていると、頭がハゲている清楚な格好をした女性がこっちに向かって歩いてきた.

 「それでは皆さん、私についてきてください」

 どうやら今回の担当の人だったらしい.

 私たちはそのまま3階までエレベーターで向かい、面接部屋まで向かった.各々適当に席に座り、説明を受けた.

 要約すると、簡単な常識テスト、タイピングテスト、オペレーティングテスト、面接をして終了らしい.

 飲食店のバイト面接とは違い、少々驚いた.常識は本当に簡単なテストで特に問題なく終わった.タイピングテストも、デスクトップのキーボードは苦手なのでしづらかったが、特に問題もなかった.


――オペレーティングテストて・・・・.やったことないのにさせるの?


 とは思ったが、所謂適正テストみたいなものだろう.素人にさせるのだから、それほど固くなる必要はないかと思い、気楽に終わった.

 問題は最後の面接だった.


 「えぇと、名前は?」

 「私です」

 髪が短髪で少し茶色に染まっており、細身の男性だった.

 「ここを志望した理由は?」

 「学生時代にしかバイトは出来ないと思い、飲食店以外のバイトにも携わってみたかったからです」

 ちなみに言っておくが、嘘ではない.

 「ということは、ほかにもバイトをしていたんだ.どこ?ちなみにまだしてる?」

 「はい、フウトンラーメンというお店です.まだしてます」

 問題はここからだった.

 「え、あそこで働いてんの!?俺あそこ好きなんだよね.漫画も置いてるし」

 「そうですね.漫画好きにはたまらない場所ですっ」

 私も応えた.

 「ちなみにオススメは?」

 「当店のオススメはとんこつラーメンですね.個人的には油そばが・・・・」


・・・・ラーメントーク、漫画トーク・・・・


 「さて、最後に聞きたいこととかある?」

 「そうですね・・・・・、この会社の人たちはすれ違い様に挨拶をしてくれるんですね.とても気分が良かったです」

 「そうだね.そんな風に指導しているからね」

 他の会社の中を見たことはないが、どちらにせよ、挨拶というのは気分が良かった.

 そうして面接が終わり、席を立ち、部屋を後にした.

 面接の場は、仕切りがついているだけで同じ部屋で行っていたため、笑い声なんかが聞こえてくるものなのだが、どこからも笑い声はおろか、話し声も聞こえてこなかったことに気付いた.あそこまで談笑していたのは私たちだけだったのだろう.少し恥ずかしい思いだった.




 そして、面接結果通知当日.少しそわそわしながら、携帯で遊んでいた.


――あぁ、どうなったのだろうなぁ・・・・・.


 可否どちらにせよ、素直に受け入れよう.否だったときはまた別の会社を探そう.

 prrrrrrrrprrrrrrrrrr.


――!!!


 「はい」

 「コールセンターCo.です.私さんですか?」

 「はい、そうです」

 来た.

 「前回の面接の件ですが、残念ながら不採用ということになりました」

 「そ、そうですか」

 何か、心にズシッと重たく乗ってくるものがあった.

 「ですが、別の部署で業務に携わってみませんか」

 「え?」

 面接時の説明にこうあった.『面接結果によっては不採用になっても、別業務に移る場合があります.その場合、希望の業務ではありませんが、いかがなさいますか』私はこれに、『はい』とチェックをつけていた.

 「えっと、どういう業務ですか」

 「通販の問い合わせセンターなんだけど、どうします?」

 「あ、是非!お願いします」

 迷いはなかった.

 「わかりました.それじゃぁ、6月○日△時に会社に来てね.また守衛室に行けば案内してくれるから」

 「わかりました.よろしくお願いします」

 「はい.それじゃぁ、失礼します」

 「失礼します」

 バイトの採用が決まった.

この時、面接前に仲良くなった両隣の男女のことはすっかり忘れてました.顔も覚えていません.

部署はいくつかあるものの、後日このお二方とお会いした覚えもありません.

どうなったのかは不明です.

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