表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

雨の日と、偶然

作者: カイン
掲載日:2012/08/08

夜、雨の中、出会った女の子。

悲しそうな眼をしていたから、思わず傘に入れてしまった。


「え?迷子?」

俺のTシャツと半ズボンの姿、頭にかかっているタオルで表情の見えない彼女は、こくりと頷いた。

彼女はミヤと名乗った。

どうやらこの町に旅行に来たらしいのだが、歩いているうちに迷ったのだと言う。

電話を借りると言って廊下に出た彼女は、すぐに戻ってきた。

「…どうだった?迎えに来てくれるって?」

「ええ、大丈夫だって。道路が込んでて遅くなるけど、来るらしいわ」

「そう。良かったね」

「ありがとう。見ず知らずの私にここまで親切にしてくれて」

「気にすんな。あ、何か食う?簡単なモノなら作れるけど」

「いえ、遠慮するわ。減ってないもの」

立ち上がりかけた俺を、彼女は止めた。

また座りなおすが、沈黙が流れる。

「…えっと、ダイチ君は一人暮らしなの?」

「いや、引っ越すんだ。もうすぐ。両親は今夜は引っ越し先に行ってる。俺は荷作り中だったんだ」

「あ、そうなの…」

「……………」

「…………………」

また沈黙。

「…あー、ホットミルクかココアでも飲む?身体、冷えたろ」

「え、でもシャワーまで借りて…」

「気にしない気にしない。で、どっち?」

「…じゃあ、ミルクで…」

「りょーかい」

俺は一旦台所へ入り、彼女から見えなくなったことを確認してから…大きく息を吐きながらうずくまった。

(うああああ!緊張する…!気の利いた会話とかできねぇし…)

とにかくミルクを作ろうと冷蔵庫の中から牛乳を取り出し、火にかけた。

ちょうどいい感じになったら蜂蜜を混ぜる。

「おまたせ…って、あれ?」

彼女の姿が見えない。

よく見ると、ソファの上で寝ていた。

(安心したのかな…?)

タオルケットをかける。

しばらくすると、彼女が身動きしたので冷めたミルクをレンジに入れ、ボタンを押した。

戻ると、寝ぼけ眼で辺りを見回している。

「おはよ。目が覚めたみたいだね」

「…あ!私、眠って…!?」

「うん。安心したんじゃないかな?ほら、ちゃんと連絡できたし」

「あ、お父さん、まだ来てない?」

「うん、まだみたいだね…あ、ちょっと待って」

チン、という軽快な音が聞こえ、俺は二つのカップを持っていった。

「はい。熱いから気をつけて」

「あ、ありがとう」

「なんか、テレビでも見よっか。面白いモノはやってないかもだけど…」

つけるとちょうどホラー系の番組がやっていた。

(あー、夏だからなぁ…)

そう思った途端。

「やっ…!」

背中に軽い衝撃。

一瞬頭が真っ白になった。

(え?え?え?)

カタカタと微かに震える手の感触と、首に当たる髪の感触に我に返った。

「あ…もしかしてこういうの嫌いだった?ごめんね?」

急いで番組を変える。

「…い、いや…少し苦手なだけで…」

「無理しなくていいよ。俺も別に好きなわけじゃないし…あ、そういやお笑い番組録画したやつ見てないや。一緒に見ない?」

笑いかけると、何とか笑顔を返してくれた。

まだ震える身体に手を回す。

「大丈夫大丈夫…」

安心させるように肩を軽く、一定のリズムで叩くと、震えは収まった。

「…も、大丈夫。ありがと…」

「ううん。さ、見ようか」

お笑い番組を見ながらも、内容は俺の頭には入ってこなかった。

お気に入りのコンビが出たが、それよりも隣で笑っている存在の方が気になった。

番組も終盤の頃。

玄関のチャイムに出ると、見知らぬ男がいた。

「…あの、ミヤがここにいると伺ったんですが…」

「ああ、いますよ。今呼んできます…ミヤー!迎えが来たぞー!」

「えっ…!?」

小さな声と共に、ミヤが小走りで出てきた。

父親の姿を見て、涙が目じりにたまる。

「お父さんっ…!」

「ミヤ、心配させるな、まったく…」

しばらくすると、落ち着いたミヤがこちらに近寄ってきた。

「ありがとう。色々と親切にしてくれて」

「別に。気にしないでってば。じゃあな」

「ええ、じゃあね」

そうして、ミヤは父親と共に去っていった。

俺の心の欠片を持ちながら…。


「剣崎さん、今日からあなたは…」

担任となる先生の説明を受けながら、俺は外の雨を見た。

雨で思い出すのは、あの夜のこと。

「…じゃ、呼びますから、それまで…」

そう言って先生はまだ騒がしい教室へ入っていった。

名前を呼ばれ、入っていく。

俺の説明をされている時、俺は教室を見回し…ある一点で目を見開いた。

目があった相手も同じように見開いている。

「な、なんで…?」

俺とミヤは呟きあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ