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第11話:激戦

ようやく戦闘シーンを書くことが出来ました。


では、どうぞ。

「蹴り伏せる・・・ですか。好きですよ?気の強い女性は」

 男は気色の悪い笑みを浮かべながら、下卑た視線を結菜に送る。

 その瞬間、結菜の背筋を悪寒が走り抜ける。

「わたくしはあなたのようなゴミに好かれても嬉しくはありませんが」

 男は、それを聞いて、更に怒りを滲ませたのか、今度はその怒りを隠そうともせず、結菜に殺気をぶつける。

「だからぁ!私をバカにするなよ小娘ぇ!!私を誰だと思っている!この学園の地下の門番、レンジン様だぞぉ!」

 言うと同時に、男・・・いやレンジンがその巨大な拳を結菜に向かって振り下ろす。

 数メートルの距離を一瞬で詰めるその異常な脚力に驚愕したが、冷静にそれを結菜は空中に飛んで躱す。

 更に、ジンレンの腕を踏み、肩を踏み、かなりの高さまで飛びあがる。

「別にあなたの名前など知りたくもないのです・・・がっ!」

 回転しながら落下し、その遠心力を利用し、ジンレンの頭に踵落としを喰らわせる。


 ――――――ドゴォ!


 鈍い音を立て、ジンレンの頭が数センチ下がる。

 しかし、それでもたった数センチだ。

(くっ、効いていないのですか――――!?)

 あれだけの威力の踵落としを完全に喰らって頭が数センチだけしか下がらないのは異常である。

 大の大人なら今ので確実に沈んでいる。

「ふふふ、効きませんねぇ!」

 ジンレンは未だ着地していない結菜目がけて下から上に向かって拳を振り上げる。

 当たれば結菜の様な小柄な少女は一撃で絶命してしまうレベルの威力だ。

「―――甘いです」

 しかし結菜はその拳を、器用に空中で体を回転し、それと同時に手を拳に当て、それを支点に横へ回避。

 そして、回転した力を利用して、ジンレンの頬に後ろ回し蹴りを叩き込む。

 しかし、ジンレンがそれで倒れないと既に知っている結菜は更にもう片方の足で、同じ個所に今度は回し蹴りを放つ。

「ぐふぅ!」

 脅威の高速二連回し蹴り。

 流石のジンレンもその巨体のバランスを大きく崩した。

 着地すると結菜はその場から即座に距離を取り、ジンレンの様子を伺う。

(恐らくあの攻撃でも大したダメージは負っていないでしょう)

 結菜はそう確信していた。

 威力自体は、最初に放った回転踵落としの方が高い。ただ、今の二連続回し蹴りは、結菜がジンレンの腕を支点にして攻撃を回避した時に、合気の要領で体勢を僅かに崩していたからに他ならない。

 つまり今の攻撃は単に距離を取る為のものでしかない。

(それでも頭部に三つの攻撃。いくらわたしのあのゴミの体重差が凄まじいとはいえ、確実にダメージは与えている筈です)

 しかし、その考えは次の瞬間無残に砕け散る。

 体勢を崩していたジンレンが、いきなり凄まじい速度で結菜に突っ込んできたのだ。

「なっ――――!?」

 一瞬で結菜に肉薄したジンレンはその拳を結菜に叩き込む。まるで今までのお返しだ、と言わんばかりに。


 ――――――――どごぉ!


 余りの威力に、壁まで吹き飛ばされる結菜。

「がはぁっ!!」

 口から、真っ赤な鮮血が飛び散る。

「ほお。当たる直前に咄嗟に思いっきり後ろに下がりましたかぁ。素晴らしい反射神経です」

 パチパチとジンレンは拍手を鳴らす。

 普段ならその事に嫌味の一つでも言う結菜だが、如何せん今はそんな余裕がない。

(後ろに飛んで威力最大限殺して尚この威力ですか・・・。直撃していたら上半身が吹き飛んでいたかもしれませんね)

 結菜は改めて目の前の気色の悪い男の化け物性を再認識させられた。

 このジンレン。武術の類などは一切行っていない。ただ自分のその異常な肉体性能で力押ししているだけなのだ。

(でもその力押しが厄介なのですが・・・)

 結菜は口に残っていた血を捨て、よろよろと立ちあがった。

 幸いでたらめなパンチだったので、足などにそこまでキていないようだ。

 ――――――これならまだ戦える。

 結菜の戦意はまだ折れてはいない。

「おっ、立ち上がりますか。そこまでタフな女性は楽しみですよ。そちらの女性は直ぐに終わってしまいましたからねぇ」

ジンレイはバカにしたように目を細めながら笑う。

結菜はそれを見ながら、特に何を思うでもなく、今は体力の回復に努める。

 それを見たジンレイは少し不思議そうな顔をした。

「おや?あなた達は仲間ではないのですか?仲間をバカにされて怒らないとは・・・。随分と白状な人なのですねえ」

 そう言われて、初めて結菜はジンレンが何でそんな事を言ったのか理解した。

 しかしそれは見当違いというものだ。

「仲間?彼女とわたくしがですか?冗談は止めて下さい。わたくしと彼女はただ偶然一緒に行動しているだけです。断じて仲間などではありません」

「そうですか。仲間をバカにされて激昂し、不用意に突っ込んでくる所をぶち殺す作戦失敗です。残念ですねえ」

 その言葉に結菜はバカにしたように笑う。

「先程の頭の悪い小学生のようなセリフでは、例えわたくしと彼女が仲間でも激昂などしませんよ?あなた中々面白いですね?気持ち悪いゴミのくせに」

 再びゴミ呼ばわりされて、逆にジンレンの方が激昂する。

「だから・・・。私をゴミ扱いするなああぁぁぁ!!」

「これが策士策に溺れるというやつですか?いえ、あなたはゴミなのでゴミ、ゴミに溺れるというやつですね?」

「だまれぇぇぇぇ!!」

 ジンレンは先程と同じように、凄まじい速度で結菜に突っ込む。

 しかし、結菜は既にこのパターンの攻撃は一度見ているし、今回はワザとこの攻撃をさせるように言葉で誘導したのだ。

(だから、今度は食らいません―――!)

 ジンレイのパンチを、回転しながら横に躱し、その勢いのまま、下に潜り込む。

「知っていますか?男性にはどんなに鍛えても鍛えられない場所があるという事を」

 本音を言えば、絶対にやりたくない攻撃なのだが、背に腹は代えられない。

(これが終わったらお風呂に五回は入ります)

 そう内心で決め、結菜は地面に手を付け、それで勢いをつけ、思いっきりジンレンの金的目掛けて蹴りを放つ。


 ―――ぶちゅっ!


 大切な何かが潰れる音が、はっきりと結菜に聞こえた。

「があああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁあぁああああぁぁぁぁあぁぁ!!!!」

 それと同時に、この世のものとは思えない絶叫を上げ、辺りを転がり回るジンレン。

 金的を潰されたのだ。

 既に戦闘を行える状態では無いはずだ。

「・・・終わりましたね」

 結菜はそう呟き、ダウンしているリリィの状態を確認しようと、ジンレンに背を向けた。

 その瞬間、背後から凄まじい殺気が溢れ出した。

「―――!?」

 結菜は本能的に身を最大限屈めた。これは単に細胞が、そして結菜の勘が反応し、偶然頭を下げるという行動をとったに過ぎない。

 つまり、結菜の頭上を通り過ぎたジンレンの拳を躱せたのは運が良かったとしか言いようがないのだ。

 結菜は、全力でジンレンから距離を取る。

(な、なぜ―――!?間違いなく痛みで戦闘など出来ないはず―――!)

 驚きながら、結菜はジンレンを見る。

「――――!!あれは!」

 そこには白目を向いて、口から涎を垂らしながら、獣のような呻き声を出しているジンレンがいた。

 先程までのジンレンとは完全にかけ離れている。

(あれは、意識を失っているのですか―――?・・・いえ。あれは恐らく自我を失っているだけですね)

 つまり、結菜の考えが正しければジンレンは、本能だけで―――正確には、怒りと殺意だけで動いている。

 ―――結菜を殺すために。

「厄介ですね」

 流石にもう強がるだけの体力は残ってはいない。

 それに、自我が消えた事によって、脳のリミッターが外れたのか、先程の一撃は今までとは比べ物にならない速度と威力だった。

(あれと同じ攻撃がもう一度きたら・・・終わりですね)

 ジンレンはその思いを知ってか知らずか、身体に力を込め、結菜に突っ込む体勢を取った。

 自我が無いため、隙を見せるという考え事態無いのだろう。

 しかし、金的を攻撃した今となっては、どんな攻撃をしても倒れないだろう。それにジンレンが動き出す前に、ジンレンのいる所まで行き、攻撃を仕掛けるのは今の結菜の体力と、ダメージの残っている身体では無理だ。

 まさに絶対絶命。

 そして、ジンレンが動きだそうとした瞬間―――


 ――――――ドスッ!


「GAAAAAAAAA!!」

 ジンレンの見開いた両目に同時にナイフが突き刺さった。

「―――!!」

 その瞬間、結菜は今出せる全力でジンレンに突っ込む。

 最早残されたチャンスは今しかない。

 勝つ為にはこの一瞬に全てを注ぎ込むしか道はない。


 ―――ダンッ!


 結菜は、間合いに入ると同時に思いっきり上空に飛ぶ。

 そして、その結菜の目の前に、絶妙のタイミングで、ピンの抜かれた手榴弾が。


「―――っあああぁぁぁぁぁぁ!!!」


 結菜はその手榴弾に衝撃を与えないように足を添え、その瞬間、全力でジンレンが叫び声を上げている口目掛けて蹴り込んだ。

 そして、口に手榴弾が入ったと同時に、懐に潜り込んでいたリリィがその顎にムーンソルトキックを叩き込む。


 ――――ボオォォン!!


 閉じたジンレンの口の中で手榴弾が爆発し、ジンレンの頭が粉々に吹き飛ぶ。

 ビチャッという音を立てて、脳や、顔の肉などが、壁や地面に飛び散る。

 頭部を完全に失ったジンレイはゆっくりとその巨体を後ろに倒した。

「はあ、はあ、はあ。良い所を持っていかないで下さい」

 結菜は、ナイフを投げ、手榴弾を放り、最後の決め手となったリリィにそう言った。

「・・・早い者勝ち」

 そっけなく返すリリィに、ジト目を向けながら、結菜はその場で倒れ込んだ。

「はあ、はあ。流石に今はもう動けません」

 その言葉は、勝者の証であり、未だ残る作戦の厳しさを物語っていた。

質問やご指摘があればどんどんどうぞ。

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