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プロローグ



私は冷蔵庫を開けた。

冷蔵庫は独特な匂いがするが、私は好きだ。

ガソリンスタンドのあの匂いも何か惹きつける何かがある。

まあガソリンスタンドの匂いなど好きな人間は腐るほど居ると。

私はガソリンスタンドの匂いより、人の泣いた後の匂いが大好きなのだ。

泣いてる顔も好きだ。

悲しみ憎しみ、ボウルの中に満杯のガソリンを入れて一気にひっくり返した時のような大泣きをされるとライターで火を点けたくなってしまうのだった。

私は、ガソリンが好きなのかもしれない。

そんなガソリンのことばかり考えていると、冷蔵庫はピーピーと鳴り始めた。

長時間冷蔵庫を開けっ放しにしてるとなってしまう機能がついている。

私はそんなにガソリンのことを考えていたのか。少し馬鹿らしくなった。

そういえば昨日はクラスメイトの葬式だった。

ガソリンよりもどうでもいいことだが大量のガソリンの涙を見た。

本当にどうでもよかったのだが、ひとつだけ気になることがあった。

昨日死んでしまったのは私の彼氏という位置にある人物だった。

勝手に告白され、勝手に付き合うことになっていた。

しかし、私の彼女にあたる人物は、私の彼氏という位置にある人物の葬式に来ていて、ガソリンを流した。

一体どういうことなのだろうか。この二人に関係はあったのだろうか。

ちょっと気になったので訊いてみたのだが、2人は私を通して付き合っていたらしい。

どうでもよかった。しかし、私を通して、というのが気に喰わなかった。

完璧にメイクされ奇麗なお人形のような顔をハンマーで殴り倒してやろうと思ったが。

ガソリンをかけた。彼女は臭い、くさい!と喚くので少し首を絞めてやった。

人は追いつめられると本性が出てくるらしく、彼女は逆上し始めた。

その姿はとても見にくく華麗なものだったので、とても気に入った。

初めて私の彼女にあたる人物を好きになった。ガソリンをかけたお陰だった。

ガソリン塗れの彼女とセックスして寝た。女同士のセックスほどつまらないものはなかった。

私の部屋に彼女は居る。彼女に好きなものは何?と訊くと、プリン。と謂った。


今に至る。

はっ、とすると冷蔵庫はまだ鳴りやんでいなかった。

そうだ、プリンだ。

私の大好物はプリンなのですぐに見つかった。

冷蔵庫の独特な匂いを堪能し、私をじっとみつめるプリンを鷲掴みにした。

クリームが上に乗ってるやつ。これが一番好きだ。

冷蔵庫を勢いよく閉めると玄関のドアが閉まる音がした。

ひたひたと朝の廊下をゆっくり歩き寝室に向かうと、彼女は居なかった。

彼女はガソリンより馬鹿なのか、知らないが携帯電話が落ちていた。


上手く逃げられたと思っているのだろうか。

これからだ。


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