戦闘1 序盤想定。 骨子を組み立てている段階につき閲覧注意。
敵は凄腕の元魔術師。 偽名で活動中なのでまだ無名。
主人公はそこそこな冒険者。 名の売れ具合もそこそこ。
第一撃、右からくる剣をそらす。
「っ……」
威力が大きすぎて体制を崩す。……双剣、剣を片手で打ち付けるこの武器なら難なく逸らせると思っていただけに、この威力には驚愕。その驚きを突き左から第二撃。一撃目を受けて解った、こいつの攻撃を武器で止めようと思ってはいけない。正直、ここまでとは思わなかった。確かに相手は魔術師――しかも世に珍しい肉体派――だ。しかし、相手が魔術師であるからこそ、剣筋は稚拙なものであろうと思っていた。事実、相手の剣筋はお世辞にもいいとは言えない。鍛錬を積めばいい筋になるのだろうが今この場においては3流もいいところだ。だが、その稚拙さを補って有り余る程の威力と速さ。この瞬間、自分は相手の得物が双剣であることに感謝した。これが両手を使って扱う武器だったのなら、一撃目で自分は自らの武器ごと両断されていたであろう。しかし、相手は双剣。一撃一撃が常人が繰り出す大剣の威力であろうとも、それを受け流すことは可能。先ほどは想定より大きい威力だったので不覚にも大勢を崩したがこれからそうはいかない。
一撃、二撃。そう続けて剣を合わし続けて早50。相手が口を開く。
「ほう、なかなか。私もこの戦い方を始めて久しいがここまで耐える者はそうそう居ぬ。たとえ自身の得物と体を強化していても、だ」
「その賞賛、有りがたく受け取っておきます。けれども、勝負はこれからですよ」
剣戟の再開。またもや一撃二撃。先ほどの繰り返し。だが、先程とは違うこともある。稚拙さ故か、所々隙がある。それに合わせ――
「燃えろ!」
「クッ」
剣を媒介とし簡易的な炎の魔術を発動。致命傷、とまではいかないだろうがそれなりの傷を負わせるたと確信。
だが――
「ふん、この程度! 水よ来たれ!」
本日二度目の驚愕。水で炎を消したところまではいい、曲りなりにも相手は魔術師。それぐらいの事できて当然である。だが、その後、奴は何をした。いや、理解はできる、だがそれは生半可なことではない。よもや、一工程、一言だけで消炎と自信の治療。それを済ませるとは。
「――成程、肉体派というからにはそのような魔術が得意ではないと思っていましたが、逆であったわけですか。自身が習得できるカテゴリーを習得し尽くしたからこそ、剣の道に進んだというわけですか。」
「応とも。剣の道を歩み始めてまだ短いのでな。剣筋の拙さは勘弁してくれ」
これは計算外であった。まさか相手がこのような化け物とは。
しかし、一つ解せないことがある。
「なぜ貴方程の人が剣の道に?魔道を極めるだとか新たなるカテゴリーを作るだとか、そういったことをしないのですか?」
「なに、簡単なことよ。私にはその手の事が向かんのだ。想像力だとかが欠如していてな。新たなる境地を切り開くとか、得意なカテゴリー外の魔術を極めるだとか、そういったことが難しいのだよ。魔道に未練がなかったわけではないが、まあ諦めどころといったやつでな」
それはどんなに難しいことだろう。今まで人生を賭して進んできた道、それを捨て、反対の道を進み始めたのだ。正直に言わせてもらうのならばこの時点で自分は負けを悟った。もちろん実力でも負けているが、精神的なものが一番大きい。今の自分には、この人が山に見える。
「私の負けです」
そういって自分は剣を落とした。闘うまでもない。闘う前からすでに勝敗は決していたのだ。
「ふむ、ということは私の勝利か……。しかし、後味が悪いな。 どうだね、勝敗関係なしに、一つ練習試合というものは」
どうやら彼は 闘い足りないらしい。だが、その提案に異存はない。 勝負は自分の負けだが、まだどの程度まで戦えるのか把握していない。
「受けて立ちます」
結果、その日は彼と練習試合をし続け、宿に彼と二人そろって戻るころには、自分はひとりで歩くことさえ困難になっていた。 対して、彼はそこそこ疲労の色を見せたものの、自分の肩を担いで歩いてきたそうだ。 その強さには感服する。
矛盾は気にしたら負け