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伝説の婆さん達は今日も騒がしい  作者: 神谷洸希
6章

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6-8 交渉②

「ふう」


 アルマ、ジルちゃん、アンばあちゃんが本気で戦ったので、相手は死屍累々。


「満足したかい?」


 アルマが杖とも呼びがたい小さい木の棒をテオに突きつけながら言う。テオの口元は悔しそうに震えている。


『ちょっと待て』


 イーディスさんが呆れたように言った。


「どうしたの?」


『ずっと私は待てと言っていたんだがな……』


「ま、まあまあ」


 俺もイーディスさんが止めに入っていることを気づいていたのだが、アルマたちの迫力に負けて黙って見ていることにしたのだった。


『こういう時はまず話し合いから、そうだろ?』


「そ、そうね。私もちょっと頭に血が上りすぎていたかしら」


『まだまだ若いな』


「えー?嬉しいこと言うじゃない」


 今そういう文脈だったか?


『テオ。お前はダンジョンとどうやって意思疎通をしてるんだ?』


「どうって、……?」


 テオが黙り込んだ。


『なんか別次元空間から音ではないんだけどなんか来てるよーそこの少年はそれ聞こえてるんじゃないかな』


「何も分かんねえけどそうなんだ」


 デヴィンが言うにはそうらしい。

 俺が相槌を打つと、デヴィンが考えるように一瞬黙った。


『音だったらラウルの本領発揮なんだけどなー違うからなー。人間が聞き取るには第六感?みたいなのがいるかも。神経尖らせるの極端バージョンっていうか。精霊界だっけ、あっちの方がここと近いからその音が聞こえない状態じゃないと聞き取れないみたいな?どっちみちラウルは聞こえないね!可哀想!』


「うっせ」


 どうせそんなこったろうと思った。

 そりゃちょっとは迷宮と意思疎通できないかな。俺はこんなに迷宮のこと好きなんだから応えてくれてもいいじゃないかとも考えたが、愛で決まるなら地下迷宮研究の第一人者であるベルツ先生が聞こえてないとおかしいのでそれはないなと思った俺だ。


「お前は聞こえんの?」


『聞こえはするけど受け取れはしないみたいな?何言ってるかはさっぱりだねー』


「はえー」


 魔法の才能がない、つまり感受性が死んでる状態で繊細じゃないといけないとかそんな感じか?なかなか難しそうだな。


『会話はできてるんだな?』


『うん』


『そうか。もう1人会話できる人物でもいれば話は早いのだが』


『すぐには見つかんないんじゃないかな』


 イーディスさんとデヴィンが話している。


『とりあえず全世界を迷宮にする計画はなしな』


「もしかして俺に言ってる?」


 ……テオは虚勢を張る時、俺という一人称にするらしい。かっこつけてんのかな。かわいいな。


『世界を二分する大戦というのは何が理由で起こるんだ?』


「それは分からない、らしい」


『ふむ』


 イーディスさんの間が怖いので、俺も口を挟むことにした。


「俺的にも迷宮が有用なのはマジだから見逃してほしかったり」


 これで迷宮増えれば俺の食い扶持も増えるというか。


「こういうのも世代かねぇ」


 比較的頭が柔らかいだろうアルマが首をかしげながら言った。許してくれそうな雰囲気。

 もう一押し。


「何かあったら俺が責任持ってテオを殺すから」


「おい」


『……しょうがないな』


 イーディスさんの言質ゲット。


「えぇ?イーちゃんもOKなの?んー、じゃあセインが良いって言ったら良いことにしようかしら。セインが見てくれるなら安心よね」


 アンばあちゃんがそう言う。

 じーちゃんの説得か、いいだろう。


「ラウルは手を汚さなくていい。テオが暴走したら今度は私が止める。悪い子にゲンコツをするのは大人の役目」


「俺も大人だけど」


「言葉の綾」


 最難関だと思ってたジルちゃんも大丈夫ぽい、か?

 テオがなにかする前で良かったな。疑わしきは罰せずだっけ。


「兄さんにはそんなに簡単に殺されるつもりないから」


「はいはい」


「チッ」


 テオに舌打ちされた。やっぱ反抗期なのかな。


「帰ろうか」


「ん」


「待ってて。今畳むから」


 テオが手を合わせるようにパタンとすると、迷宮がどんどんせり上がってくる。ちょ、ま、足元が崩れ、る。



 ▫



「よし」


 終わった終わった。

 俺は学園の研究室で椅子を回しながら一息ついていた。来年から研究室で学生を取るらしい。その準備もしておかなければな。

 置物代わりに置いてある黒い箱が、電話がかかってきたことを示すように光った。


「あ、イーディスさん、首謀者見つかりました?」


『見つかったよ』


「そりゃ良かったです。あとは海外名義の首飾りでも送って吊るし上げれば終わりすかね」


『そんな言い方しない』


 暴動の首謀者は無事イーディスさんに見つかったらしい。俺の発言を否定しないあたり、元々予想されていた通り身分の高い者が首謀者だったのだろう。平民だったら普通に捕まえて終わりのはずだし。


「な、何を話している?」


 ヘリング先生が恐る恐る聞いてくる。


「あ、そろそろ仕事に戻ります。イーディスさんまたね〜」


『ああ、またな』


「イーディスって……」


「はは、なんでもないっすよ」


 職場で話すことでもなかったな。でもまあヘリング先生に知られたところでそんなに問題なかろう。


 テオもいつも通りに学校に通っているし、普通の日常に戻ったって感じ。


「まあしばらくしたら伯爵家が1つ消えるかもしれないが、ヘリング先生は気にしなくていい。俺の言葉もただの世迷言だ。一教師が関与できるわけないだろ?」


「あ、ああ。そうだな」


 俺がニヤリと笑ってそう言うと、ヘリング先生もぎこちない笑みで頷く。顔の下半分が隠れているから分かりにくいがそんなに怯えなくてもいいのに。ちょっとショックだ。


 そう言えば俺が迷宮探索している間に、王への襲撃があったらしいが、近くで護衛していた姉貴に粉砕されたらしい。俺が見た時にはなかなかえげつない光景が広がっていた。ジルちゃんが治さなかったらあのまま死んで情報が得られないところだった。危ない。

 で、その襲撃犯から聞き出した情報によると、あの暴動も襲撃も同じ国の人物が行ったという話だった。どこの国だったかなぁ。なんか島国だった気もするけど。ジルちゃんの故郷らしいので、ジルちゃんが向かうらしい。理屈はよく分からん。


「……」


 悪魔が俺の方をじっと見ている。


「悪ぶるから誤解されるんですよ」


「はあ!?」


 急に何!?


「大丈夫ですよマスター。確かにちょっと人間の精神してませんけど、ルドルフさんは思いやりがあって優しい人ですから」


「……なるほど?」


 ヘリング先生が俺の方をじっと見る。


「そうだな……思い返してみれば……うーん」


「そこはそうだって言い切ってほしいんだが」


「ははは」


 俺のツッコミに対しヘリング先生が軽快に笑う。ちょっと打ち解けた、だろうか。


「ヘイマーせんせー!」


 ブシェ先生が扉を開けて入ってくる。後ろにアルマもいるな。


「どうした?」


「ちょっと協力してほしいことがあってさ、ヘイマー先生って索敵魔法のスペシャリストだよね?」


「いや、スペシャリストって程では」


「またまた〜。論文読んで分かってるんだからね?そんで、生徒が今やってる研究でここが分かんなくて〜」


「ああ、それはこうして」


 俺もちょっとは馴染めてきたかな……。



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