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伝説の婆さん達は今日も騒がしい  作者: 神谷洸希
6章

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6-7 交渉

「それでさー、俺のこと凄腕の魔法使いだと思っていたらしくて、見た瞬間ビビってやんの」


『あはは』


 俺は不貞腐れて迷宮の床でデヴィンとどうでもういいことを話していた。


「何してるんだい」


「アルマ!!」


 来てくれるとは言っていたが、結構遅かったな!

 顔をガバッと上げて、そして俺はその光景に固まった。


「いやなんでイーディスさん以外全員来てんの!?」


「セインはいないよ?」


「そうだね。ってそうじゃねえよ!?」


 呼んだアルマは分かるけど、アンばあちゃんとジルちゃんもいるんですが。


「多い方がいいだろ?」


「そうかな、そうかも……」


 まあ急にどうこうって話じゃないし時間かかっても仲間を連れてくるのは合理的、か?


『私も声だけいるよ』


 アンばあちゃんが持っている黒い箱から声が聞こえる。

 イーディスさんは音声のみの参加らしい。


「ここまでどうやって来たんだ?」


「そりゃ絨毯ですーっと」


「ああ……」


 その手があったな……。迷路の壁は天井までくっついていないのでそこを通れば迷路なんて関係なく進めるだろう。


「俺も連れてってくれ」


「いいよ、ほら乗りな」


「やめといた方がいいわよ」


 アンばあちゃんが疲れた顔でピシリと言った。珍しく話さないなと思ったらどうやら絨毯の移動で酔ったらしい。


「ん。ラウルは飛べるんだし自力で行った方がいい」


 そうなんだよなぁ。俺普通に飛べば良かっただけじゃんね。まあ破壊しながら直線距離で進んだ後、迷路を1個解いて協力者を待ってたわけだから、そんなにタイムロスはしていないのだが、悔しいものは悔しい。自分で気づきたいじゃんそういうのって。


「じゃあそうしよっかな」


 羽を出す。


「なにそれ」


 アンばあちゃんが驚いたように言った。

 そういやアンばあちゃんには言ってなかったっけ。


「どうやらセインはドラゴンの末裔だったようだよ」


 アルマが片方の口角だけ上げて、シニカルに言った。

 あ、そっちから説明するんだ。


「ええ!?言われ、て、みれば……確かにそうね!セインの髪は竜の鱗みたいに美しいもの」


「うふふ」


 アルマが興奮したように話すアンばあちゃんを見ながら魔女みたいに笑っている。


「じゃ、準備もできたようだし飛ばして行くよ」


 目にも止まらぬ速さで俺の目の前を過ぎ去って行った。俺は絨毯に乗らなかったことを後悔した。



 ▫



「さすがに全部上空からというわけにはいかないみたいだね」


「ぜー、ぜー、おいアルマ!あんなに飛ばすなら先に言えや!!」


「ごめんて」


 多分90階層くらいだと思うが、ここからは3次元空間の迷路らしい。天井にも壁がある。横向きに壁があったりもする。普通じゃ通れない迷路を作って何がしたいんだ。テンション上がって悪ノリでもした?


 とりあえず真面目に迷路解くか……。

 床を蹴っているが、さすがに頑丈だ。迷宮は下層から作られるって言うしな。作られてからそこそこ時間が経っているのだろう。


 デヴィンでこの階層の迷路を再現する。


「アスレチックみたいね」


 それをまじまじと見ながらアンばあちゃんが言った。


『どうなっているのか全く見えないのだが』


「がーってなってばーってなってぐわーって感じ」


『……』


 イーディスさんとジルちゃんは何を話しているんですかね。


「相変わらずこの武器はすごいねぇ」


『引っ張らないでー。あっ』


「あっ」


「ちょ、どうすんのよこれ!?2つに別れちゃったわ!?」


 アルマとアンばあちゃんも何してんだ。


「デヴィン、おい、あんまりからかうな」


『ちぇー』


 俺が2つをくっつけるとそのまま液体のように融合した。


「おおやっぱりすごいね。割って調べることもできるなんて」


『え』


「確かに。これでやりやすいわね」


『ちょ、そこは、あーれー』


 デヴィンのおふざけとか全く目に入っていないようだ。頼もしい。


「ここをこうして」


「こっちから行った方が良くない?」


 うーん俺いらなさそうだな。

 いつもはこういう時俺の暇つぶしに付き合ってくれるデヴィンも向こうにいるしどうしたもんかね。


「ほら、ラウルも協力しなさい」


「あ、はい」



 ▫



「意外と楽しいわね」


「そんなこと言ってる場合じゃない」


「そうね……」


 アンばあちゃん達がサクサク解いていったおかげであと1階層だ。


『状況がよく分からないのだが』


「この後のテオの説得お願いします」


『分かった』


「それよりイーディスさん、大丈夫なんですか?外、ほら、革命とか起きそうな感じですけど」


『まあ今のところ大丈夫そうだね。私がいるところは街からは外れているし。現段階では、と文言がつくが民衆も統制が取れていない。暴れるだけ暴れたら落ち着きそうだ。これで首謀者でも捕まればたちまち収まるだろう。そう王にも言っておいた』


「行動が速いっすね」


 俺が悩む必要すらなさそう。


「解けたわー」


「おおー」


 あのスピードに懲りた俺はアルマの絨毯に乗ることにしていた。


「行くわよー」


「おー!」


 ……何故か落ちないとは言え揺れすぎて気持ち悪くなってきた気がする。ここに来る途中で青い顔をしていたアンばあちゃんは、今ではすっかり元気そうだ。スリルあるの好きなんだろうなぁ。


 よし、着いた。

 100階層はだだっ広い空間らしい。


「テオー!」


 奥にテオが見える。俺はニコニコしながら手を振った。


「な、なんで!?」


 絨毯の移動で近づいているので顔が見える。愕然としてんな。


「なんでジルちゃん達がいるんだよ!?」


「俺が呼んだ」


「普通そこは姉さんとかだろ!?」


「アルマが1番すぐ呼べたし……」


「ビュトナー先生は今や国を代償する大魔法使いだろ!?どうなってんだ」


「さあ?」


 アルマに聞いて。


「さあて準備はいいかぁ?」


「ま、待て待て。その前に俺の話を聞いてほしい」


 テオが慌てたように言う。


「そういや世界を救うとか言ってたっけ」


「そう、そうだ!もうすぐこの世界を二分するような戦いが起こる!!その時人類は滅ぶ可能性が高いんだ!」


「……」


 そういえば異世界人も厄災がどうこう言ってたっけ。それと同じか?


「被害を最小限に抑えるには、事前に争いの種を潰す必要がある」


「それで外の暴動を起こしたのか?」


「……なにそれ?」


「えっ」


 本気でピンと来ていない様子だ。

 あれ?もしかして、あの民衆の暴動ってテオ関係ない?ああそう……。


「今や天使の試練のために仲の悪い5家が手を取りあっている。俺はそれを見て確信した!今の人類に必要なのはダンジョンだ!!世界を飲み込むようなダンジョンこそ人に結束感と平和をもたらしてくれる!!」


「そ、そうか」


 芝居がかったように手を大きく広げ、テオがそう言った。

 地下迷宮のために5家が手を取り合うってまあそりゃそうなんだけど、他国との功績の奪い合いありきだからなぁ。平和とは程遠いよな。


「はい」


 アルマが手を挙げている。


「1つ聞きたいんだけどいいかい?」


「え、ええ」


「うん。話を聞く感じ、テオは地下迷宮をある程度操作できるってことだよね?」


「そういうわけでは……え?そうと言っとけ?は、はい、そうです。僕が指針を決めています」


 なんか今誰かと話してなかった?


「え?そうなの?」


「は、はい」


「それは、良くないんじゃないかしら。分かってる?私達は、それにあなたのおじいちゃんは迷宮を滅ぼすために戦ったの」


 珍しくアンばあちゃんがガチで怒ってる。

 そりゃそうか。彼女たちの行いが無に返されようとしているのと同義だから。


「分かってる。ダンジョンも強行的手段に出たから我々は数を減らすことになった、反省してると言ってる。共生を目指していくそうだ。僕だってお前らに信じてもらえるとは思ってないがな!」


 もしかしてテオお前地下迷宮と会話できんの?というか地下迷宮ってそれ自体が意思ある存在なのか……そうか……。やっぱ面白いな、地下迷宮って。


「兄さんはなんでニヤニヤ笑ってるんだ。こんな時に」


 いつも通りなにかにイラついてるとでも言うような表情でテオが言う。


「いやー……盛り上がって来たなと思って。俺も地下迷宮大好きだし」


「うっさいな!行け、今こそその有用性を示す時だ!」


 テオが言うと、虚空からたくさんの像が出てくる。教科書で見たような有名な像や、きっと異国の文化なんだろう仕組みで作られた像とか。


「燃やすか」


 アルマがそう言って、並ぶ像に火を放つ────。

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