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伝説の婆さん達は今日も騒がしい  作者: 神谷洸希
6章

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6-3 帰宅

 目的も達成したしそろそろ帰るか。とか考えてたんだけど居心地良くてズルズル残ってしまった。


「そう言えばお前エルフの大賢者?なんだっけ?」


「ぶはっ、それどこで聞いたんですか」


「わ、エミル、汚い!」


「す、すみません……。で、どこで聞いたんです」


 エルフは大人数で食卓を囲む文化があるらしい。俺には小さい椅子に座りながら気になっていたことを聞くと、エミルが咳き込んだ。


「あー、俺の知り合いの貴族から。つってもほとんど廃嫡?とは違うか?まあそんな感じのな」


「そ、そうですか。別に気にしなくていいですよ。私だって貴族に養われているようなものですし」


 そりゃそうか。


「エミルは大賢者だね。学業成績が優秀で、模範的だと認められると賢者の称号がもらえるんだけど、エミルはその中でも優秀だったから」


「へー……」


 貴族とかじゃねえんだ。


「皆から尊敬されてるのは間違いないよ。発言権も高いんじゃない?」


「やめてくださいよ、そう大層なものではありません」


 ふむ。エルフは知識人が政治をとりしきる支配体制なのだろうか。そういう国もあると聞く。いつか行ってみたいなと思っていたが、まさかここで見れるとは。長期滞在してえなあ。


「割とえらい立場ならここ出るの反対されたんじゃないか?」


「まあ、そうですね」


 ちょっと憂鬱そうな顔で黄昏ている。


「若いから舐められれるんでしょうね……そのうち飽きて200年もすれば戻ってくるだろうって言われてるみたいです」


 口角は上げているが、目が笑っていない。

 怒ってんな。


「じいちゃん達が優秀な若者を死なせるわけにはいかないっていろいろ仕込んでてズルズル50年くらい予定ずれ込んだだよねー、懐かし」


 エルフの時間スケールはでかいなぁ。

 聞いてる感じ10年が1年くらいか?いやもっと感覚にギャップありそうだな。ついていけねえ。


「でもそれって、エミルに期待してたからだと思うよ」


「いや、ズルズル引き伸ばして私が諦めるのを待ってたんですよ」


「もっと信用しなよ。ま、仕方ないけど」


 幼なじみ2人組のわけ知ったる間柄の会話に当然入れるわけもなく、俺はデヴィンをつつく。他のエルフに話しかけようにも微妙距離を取られている。それだけ俺がドラゴンなのは一目瞭然らしい。どう見えてんだか。


 お、美女発見。写真を撮る。

 撮影した写真を見れるのが便利だよな。ふむ。端に意外な人物が写っている。


「女王様との距離感が近いんだな」


 食卓を囲むテーブルには、さっき話した女王が座っており、他のエルフたちと気さくに話しているようだった。


 まあうちの国も姫様とは割と気軽に会えるけど。


「女王っていうのも他種族が勝手に言ってるだけですよ。族長は別にいますし」


「ふむ」


 いろいろな支配体系があって然るべしだしな。


 俺の独り言にも解説してくれるの優しいなと思いながら相槌を打つ。


「族長より上なのは間違いないよ?あの人が言えば族長はもう頷くしかないんだから」


「ええ。誰よりも長生きですから。いつから生きているのかは知りませんが」


「割と気軽に会えるんだけど、なんも分かんないんだよねー。人間がウホウホ言ってた頃から知ってるとか冗談言ってたっけ。あ、あと色んなところに目がある、とか?」


「謎が多いですね」


「へー」


 ウホウホ?


『現生人類も猿から始まったのかな』


「かもな」


「へえ、この鳥喋れるんだ」


『デヴィンだよ』


「よろしくねデヴィン」


 ハイタッチしている。そのまま話し始めた。爆速で仲良くなってるな。

 そんなデヴィンを横目に料理をつまむ。


「これがエルフの食事ですよ」


「うまい。ちょっと味薄いけど」


 それも新鮮でいい。


「味足りないならこれとかどう?」


 エミルの幼なじみが俺に小皿を渡してくる。赤いカサカサの果実?のようなものが乗っている。


 かじってみよ。


「あっ、いやそれはかじるものじゃなくて……」


「うお辛ッ!?」


「あわわわごめん私が早く言ってれば」


「ふふ、はははははは!いいなこれ!食べたことない味だ!」


「えっ」


 噛み砕くと、味わったことのない痛みを感じる。

 これは、いい。この謎の葉っぱとつまむと葉っぱの旨みが強調されてくるような気もするし。

 歯で砕いて舌に乗せて、飲み込む。

 いい、もうひとつ、手を伸ばす。


「もっとないのか?」


「気に入ったの?良かった!ほんとは輪切りにして乗せたりするものなんだけどね〜」


「乾燥させれば日持ちしますよ。そんなに気に入ったなら持ち帰ります?」


「いいのか!?」


 こういうのがあるから旅っていいよな〜。



 ▫



「いやあ、すげえな。帰る時も一瞬とは」


「そうですか?」


「もっと誇りに思ってくれよ……」


 魔法学院の立つ瀬がなくなる。

 とりあえず向こうで見た魔法は全てデヴィンに記録してもらったが解析にどんくらいかかるか、考えたくもないぜ。


「そういえば何を撮影したんですか?」


「……」


 エミルが撮影機を覗いてくる。


「ま、まあその美女とか?」


「……。いや、全然いいですよ?むしろいいじゃないですか、健全で」


「変な空気になんのやめろ」


 普通に景色も撮っておけば良かったな!


「エルフの女性は性格キツいんでオススメしませんよ」


「そ、そうか」


 イケメンで物腰柔らかだけどなかなかキツい性格のエミルが言うと説得力あるな……。


 学院から出ると、というか出る前からうすうす気になっていたのだが、外が騒がしい。


 瓶が飛んで来たので避ける。


「後ろに私いるんですけど!?」


「ごめん」


 普通に忘れていた。まあ当たってないみたいだしセーフセーフ。


「なにが起こってんだこれ」


「さあ……」


 貴族を滅ぼせー!とかなんとか聞こえてくる。当然それに反抗するものもいて、おかげで瓶やら鍋やらが飛び交っている。


「ほんとに知らねえの?」


「知りませんよ。思想似てるとか思ってます?」


「まあ」


「否定はしませんけど。私たちは学問で世界を変えていくのが目的の集団ですから。ここまで頭悪いことはしませんよ」


「ああそう」


 らしい。

 統制が取れなくなったとかじゃねえの?と思わなくもないが、エミルがこう言うのでとりあえずその線は外しておくか。


「特権階級への反発の声が多いですね。民衆は潜在的に上への反発を持っているものですから」


「へー。じゃああれ一般市民なのか」


「ええ。言動的に。無遠慮に煽った誰かがいるんですかね」


「こんな短期間で?」


「そこなんですよねえ……」


 とりあえずポケットの中の手紙はデヴィンに隠してもらおう。でかい口の財布になったデヴィンに差し込む。


「お前はとりあえずお世話になってる貴族のとこ行け。俺もそうする」


「ですね!また会いましょう!」


 さて1回家に帰るか。



 ▫



「ばーちゃーん!」


 急いで帰った俺は、いつもばあちゃんがいる部屋の扉を勢いよく開ける。


「どうしたの?」


 いた。


「なんか外えらい騒ぎになってるけど大丈夫そうか?」


「ああ、そのことね。だいぶ前からこんな感じよ。とりあえず今回は貴族に対する不満みたいだから私達は気にもされていないようよ」


「それは良かった、のか?」


「とりあえずは。国外に逃げることも視野に入れた方がいいかしらね……」


 思ったより大事になっている。

 本当に本気で何があったのか知りたい。


「とりあえず姉貴は?」


「無事よ。全員外に出ないように伝えておいた」


「イーディスさんは?」


「……大丈夫じゃないかもしれないけれど、逃げるつもりはないらしいわ。何があっても仕方のないことよ。それが彼女の選択だもの」


「そう、か」


 そうだな、仕方ない、か。

 ……身内の問題はギリ解決した、のだろうか。待て。


「そう言えばテオは?」


 いない。テオの部屋から物音はしない。今の時間は大抵学校に行っているはずだが、貴族の学校は絶対無事ではすんでいないだろう。普通休みになっていると思うのだが。


「連絡がつかないのよね」


「おい、なんでそれを先に言わない!?」


「言ったところでどうにもならないでしょう」


 ばーちゃんはいつも通りの表情で、なんてことなさそうにそう言った。


 俺が持ちえる魔力全てを使って、いやそれじゃ足りない。多少竜化していくのを横目に振動で探索していく。


「い、ない」


 なんで。

 学園にもいなかった。

 魔力枯渇で気絶しそう。


「1回寝なさい」


「……ああ」


 意識が遠のく。

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