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伝説の婆さん達は今日も騒がしい  作者: 神谷洸希
5章

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5-8 相棒

「いやーヒナタちゃん可愛かったねえ」


「そうか?」


「そういやお前ちょっと好み変わってたね……」


 ヒナタを王宮に送り届けて俺とハンクはブラブラと王城の庭を歩いていた。庭師が毎日整えているので、見応えがあって良い。季節ごとに来れるもんなら来たいものだ。


 ちなみに、異世界人に関する説明は全部ハンクがしてくれた。助かる。連れてきて良かった。


「サラサラの黒髪に、傷1つない肌、幼げだけど成長したら美しくなることを確信させる眼差し!」


「ふーん」


 言われてみれば顔も整っていたかもしれない。異国人っぽいというかあまり馴染みのない雰囲気だったのでそこまで見る余裕がなかった。そもそも異世界人だし。


「まあどうせもう俺には関係ねえんだし、どうでもいいだろ」


「そうでもないと思うけど……え?王子紹介するんだよな?」


「別に王子の方を行かせりゃいいだけだ」


「そんなもんかね……」



 ▫



「ヘリング先生はテロリストの足止めをして疲れたらしいんでお休みです」


 そして俺は結局ヘリング先生の代わりに講義をしていた。どうして……。


 一応本人は見つかったので、講義資料があるのは救いだ。悪魔も俺についてくれて、とか言いたくないけど、協力してくれている。


「俺は使えねえけど、広範囲攻撃魔法はまず範囲を設定するところから始める。理由は?」


「予想外の事故を避けるためですか?」


「だな。ここを疎かにして、自分が被弾した……という事故は起こり得る。あと魔力の節約にもなるんで、きちんとやるように。何事も詳細に設定しておくといいぞ、使える魔法の幅は広がる。まあ合う方を選べ」


 アンばあちゃんから借りた投影機械で手元を黒板全体に映す。少し歓声が上がる。


「ここに砂がある。そうだな、この辺りにしようか」


 指で線を引く。


「広範囲だとこうもいかないから、脳内で線を引いとくといいぞ」


 そのまま丸を描く。

 中心部に指を突き刺す。そして同心円状に振動を伝えていく。もちろん線の中の外には行かないように。


「円の中が丸く削れてるの見えるか?俺が今やったのは、この線上の部分は俺の魔法が干渉しないよう設定したものだ。おそらくこれが1番直感的で、分かりやすいと思う」


 これをヘリング先生は教室全体でやってたらしいんだから凄まじい。


「教科書に図が載ってるから見とけよ」


 砂をならした後、もう1回同じように魔法を使う。今度は線の外に行かないよう威力を調節した。


「谷みたいになってるのが見えるか?今回は線の枠組みに入るよう、つまり魔法の影響がこの中に収まるよう計算して設定し魔法を使った。面倒だが魔力消費量は少なくてすむ」


「先生ー、教科書に載っていませんが」


「ああ、これは俺のオススメだからな。今図を書くから書き足しておいてくれ」


 生徒達が軽い笑い声をあげる。

 それを聞きながら黒板に線を引いていく。

 なんで俺こんなことしてるんだろうなぁ……。


「その他には、もう1つ魔法を使ってぶつけて相殺する方法もある。一応実験するか?」


 生徒達が頷いている。

 やるかぁ……。



 ▫



「ルドルフ先生、授業上手いですね」


「授業だけっすよ……」


 話しかけられてもあまり返せないのはすごく申し訳ない。悪魔が答えてくれて助か……とは言いたくないが、とにかくどうにかなっている。


 俺の希望で女の姿になっている悪魔がどうしたのかとでも言うように身体を傾けた。

 なんかこう艶かしいな。


 俺のだるそうな態度を見てか、話しかけてきた先生が違う先生の話している。

 こうやって俺の意志を尊重してくれるのはありがたいな。ヘリング先生が帰ってきたら研究室に篭ろう。


「ヘリング先生はどんな感じ?」


「何かを書き留めるのに忙しいようで、私に目も向けてくれません」


「……来週には帰ってこれそ?」


「さすがにそこまではかからないと思いますが」


 そりゃ良かった。

 1回見に行った時は、尋常じゃない様子でブツブツ呟いていて怖かったので、何も言わず帰ってきたのだ。魔法の才能が高いやつってのはああいう怖いところがあるんだよな。


 まあ授業はプレッシャーだが、今の状況も悪くはない。悪魔を見る。光を吸い込むような漆黒の髪と目、血を感じない白すぎる肌。手足は長く、彫刻のように美しいバランス。男の姿の時と特徴が全く同じで複雑な気分だが、美しい女を従えているのは気分がいい。


「そういう反応を見せてくれるのは新鮮です。マスターはどちらの私も興味が全くなさそうでしたから」


 俺の視線に気づいたのか、悪魔がニンマリ笑ってそう言った。自分の見た目に誇りを持っているらしい。


「見た目じゃなくて中身を見てるんじゃねえの」


「……私の中身が悪いと?」


「さあ……?」


 気軽に煽っといてなんだが、そんなにこの悪魔のことを知らない。


「今の印象だけで言えば人外って感じるな。俺に恐怖心も嫌悪感も抱かずに好奇心だけを向けてくるやつってあんまりいねえから」


「マスターのことじゃないですか」


「……確かに」


 ううむ。ヘリング先生にヤバいやつが集まってくるのってそういうとこなんじゃね?

 俺がヤバいやつ側に入れられそうなのは置いておく。


「いや騙されねえぞ。嫌悪感はある。ヘリング先生は俺のことちょっと治安の悪いヤツだと思ってるから」


 それで最初侵入者だと思って攻撃されたわけでな。

 性格的なものか、それとも貴族だからか知らないが、俺の粗野な振る舞いは警戒されているようだ。下手な敬語よりタメ口が良いのも本当らしいが。


「そうなんですか?」


「そうなんだよ。意外だな。悪魔ってのは感情に敏いもんだと思っていたが……」


 ああ、もしかして悪意には鈍いのか。


「実際俺が危ないやつなのは事実だしな」


 そうか、悪意に鈍いから俺に警戒心がないわけね。なるほどね。


「敏くない、と言うより常に共にある感覚でしょうね」


 悪魔が首を傾げる。


「悪意というのは私にとってあまりにもありふれたもののようです」


「なる、ほどな」


 悪魔が住まう世界への興味と、行きたくないなという少しの恐怖心が湧いた。


 感情が読み取られまくってるの居心地悪すぎる。

 これが俺と話してる相手の見える世界かぁ。


 っと、着いた。

 扉をガッと開ける。


「アルマ、魔法陣の解析は終わった?」


「まだに決まってるよね?」


「そろそろデヴィン返してほしいんだけど」


 魔法陣を覚えているのはデヴィンなので貸していた。


『ラウル〜!』


 目をウルウルさせてみる喜んでいる気がするぜ。目とかないけど。スライム状にくたっとなっているデヴィンがぷるぷるしている。


「まだまだ書き記せていませんよ!」


 クマがすごいフェリスヴェルタさんがカスカスの声で言った。寝ろ。

 ……このボロボロになっている感じを見るに、一応がんばって速く作業してはいるのか。アルマがピンピンしてるせいでよく分からないけど。


「じゃあデヴィン。また明日」


『そんな〜』


 スライム状のデヴィンがいくつもの触手を出して俺に行かないでと示している。

 ……本気なら今すぐにでも鳥になって飛んでくるだろうしまだまだ余裕あるな。

 俺はデヴィンに手を振った後、扉を閉めた。



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