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伝説の婆さん達は今日も騒がしい  作者: 神谷洸希
5章

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5-2 現状

「来週までには帰ってきてほしいんだがな」


「そうかい?」


「当たり前だろ。まだ講義の準備してねえぞ俺は」


「あは、大変だねぇ」


「笑いごとじゃねえ」


 生徒の貴重な時間を浪費させるわけにはいかないのだ。


「結構上手くやってたと聞いているけどね」


「俺的にも悪くない。つうか上手くやれすぎて生徒から話しかけられるのが嫌だ」


 失望されそうで。楽しく会話するには失敗体験を積みすぎている。傭兵相手なら別にどうでもいいが、未来ある学生に嫌われでもしようもんなら俺は泣く。


「……そうかい」


「ああそうだ。だからヘリング先生には一刻も早く帰って来てもらわないと」


「道理だね」


「……」


 話はこれで終わりだと言いたげだ。


「要はヘリング先生に勝てるだけの火力を用意できればいいんだよな?」


「……ん?」


「大丈夫だ。心当たりはある。あれとあれを組み合わせて……。面白いことになってきたぞ」


「へえ?」


 アルマが気になった時の顔をしている。

 説明しろということだろう。


「最近ドラゴンと仲良くなったからドラゴン一体引っ張って来れるだろ?」


「……は?」


 この説明じゃ足りないらしい。ジルちゃんから聞いてないのか。別に口止めしてないからさっさと話してるもんだと思ってたぜ。まあアルマも忙しいしな。


「俺ドラゴンだったらしいぞ。知らなかった?」


「知らなかったよ」


「ってことで移動手段が手に入るだろ」


「ああ」


 納得のいかなさそうな顔で首を捻っている。


「ドラゴンってのは人間よりも魔法を使うのが上手いからなぁ。ブレスは魔法に起因するものだっていう話は知られて久しい。威力だけなら人間には届かない領域だよな」


「それをお前がやるのかい?」


「やれるわけあるか」


 アルマが納得がいかなさそうに眉をしかめた。


「移動手段に使うドラゴンにやってもらうんだ。前試しに俺の言う通りに魔法を使ってもらったら辺り一帯の木が焼失した。これ、すごくないか?」


 ドラゴンでも才能がある方なのかは不明だ。


「んで、アルマの弟子に転移魔法のスペシャリストいるだろ?まだ許可は取ってないが、彼女の魔法で魔法を転写する。枚数を重ねられることは確認済みだ」


「ああ……」


 誰か分かったらしい。


「ここを組み合わせれば大災害が起こせるって俺は思ってたんだよ。ちょうど良さそうじゃね?」


 俺がニヤリと口角を上げてアルマを見ると考え込んでいる。


「面白い。けど、問題がありすぎるね。上空からの確認で状況把握はできるのか?それは氷に有効なのか?とか」


「それは……そう」


 ぐうの音も出ない。……。


「いや、上空から状況は分かる。俺はそういうの得意だから。多分誰よりも」


「そうだったねぇ。じゃあヘリング先生とコンタクトを取るところから考えようか。戦力はあればあるほどいいから積んで行こう。私も行っていいよね?」


 あ、はい。


「いいよね?」


「いい」


「ありがとう」


「いいよ」


 なんだろうなこれ。


「声を増幅させて届けるくらいなら余裕だぞ」


「それじゃ敵に届きそうじゃないか?いたらの話だけど」


「伝説の魔法使いったって話だけ聞くなら肉体だけ動いてんだろ?聴覚なんて機能してないんじゃねえの」


「仮定だけで行動するのは危険だ。ってのは私が言えたことじゃないけど、全く違う脅威の可能性もある。何しろあの場所は人がいない。大きな計画をたてるにはお誂え向きの場所なのさ」


「あー言えてるー……」


 その可能性は考えてなかったな。


「んじゃ、悪魔に伝達すりゃいいか。一応念話用のパスワード?教えてもらってんだよ」


「抜け目ないね」


「悪魔の方がな」


 俺に興味を示しているなとは思っていたが、去り際に契約を持ちかけられたのだ。契約内容は……なんだったっけ、俺が魔法を使えるようにするからいざという時の招集に応じてほしい、だったっけ。悪魔と契約するのは黒魔術とかそういうあんまり良くない事柄な気がしたので断ったが、俺の求めているものを的確に与えようとしてくるのはさすが悪魔だなとなんだか感心したのだった。


 そういやヘリング先生だけじゃ戦力として心もとないっつってたな。だから戦力を増やしたいと言っていた。俺に目をつけるとはお目が高い。にしても世界で5番目に強い?んだったか?の魔法使いがいてそれは、いったい何を想定しているんだか。気にならなくもない。


「じゃあちょっと集中するわ」


「え?ここからでもできるの?あのさ、それをもっと前にやれば良かったんじゃないの?」


「えー、悪魔と話したくねえし。俺って甘言に乗せられるタイプだろ?」


「それは否定しないけど」


 アルマがため息をついて俺を見ている。さっさとやれと言いたげだ。


「あー、テステス。えーとヘイデンさん?聞こえてます?」


『声にしなくてもいいですよ。というかしないでください。厳かであるべき契約締結に支障が出ますので』


 高めの男の声が聞こえる。ふむ。悪魔というのは性別がないのかもしれない。デヴィンみたいに。

 アルマに話の内容を伝えられないのは少々心細いが仕方ないか。


『契約はしない。前に言っただろ』


『そうでしたか?忘れてしまいました』


『そういうのいいから。今そっちはどういう状況だ?』


『私の状況であれば、現在逃亡中です。移動範囲に限界があるので隠れることしかできていませんが』


『へえ。ヘリング先生は?』


『私のことは興味が無いんですか?』


『女の声ならあったかもな』


『ははは!貴方は冗談がご上手だ。……切り替えはリソースが必要なのでまたの機会に』


 俺が不機嫌になったのが分かったのか言い繕ってきた。


『マスターは謎の魔物集団の足止めをしておられます。それ以上のことは見る前に逃げてしまったので知る由もありませんが』


『主人を守らなくていいのか』


『それは契約のうちではありませんので』


『へー!?』


 どんな契約なのか気になるが今はステイだ、俺。


『とりあえず助かったぜ。お前はそのまま隠れてろ、魔物は俺が制圧しに行ってやる』


『楽しみにしております』


 っと。

 念話を切る。


 そういえば魔物ってなんだ?


「アルマー。ヘリング先生はなんか魔物を止めてるらしいんだが、魔物って何?」


「魔法による干渉が認められる生物は総じて魔物と呼ばれる。要は人為的な改造が認められる生物のことだね」


「そんなものが」


「うちにもあるよ、魔物を研究する分野」


「へー」


「ここで働くんだからもう少し調べようよ」


「ふーん。っつうことは、魔物を殲滅できればヘリング先生は帰ってくるんだな?」


「そうだね」


 本当にそうか?


 まあとにかく魔物ってのは俺が知らないだけできちんと名が通ったものらしい。

 結局伝説の魔法使いとやらは無関係っぽいな。

 魔物研究の研究者が世界征服でも考えて、生き物を改造、増産、そしていざ動こうというところにヘリング先生遭遇って感じか?


 なんかよくできてる気がしないでもないが、悪魔と契約しているヘリング先生だ、そういうこともあるのだろう、多分。


「アルマは当然、俺んとこの転移魔法陣の見張りの人、説得してくれるよな?」


「……。仕方ないなぁ」


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