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伝説の婆さん達は今日も騒がしい  作者: 神谷洸希
4章

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幕間

「へー。イーディスさんの姪っ子っすか」


「ええ、お初にお目にかかるわね」


 小さい女の子がふふんと俺の前で胸を張った。

 そう言えば年の離れた弟がいるっつってたな。その娘か。


「なんでわざわざヘイマーの家に?」


「いい質問ね。私はセイン・ヘイマーに会いに来たの!」


「今日はいねえけど……」


「そんな!?」


「暇な時にサイン送っとくよう言っとくんで」


「それは……ありがたくもらっておくわ!」


「うん」


 素直で可愛いいい子じゃないか。


「おい、兄さん。俺とチェスやってるってこと忘れてんじゃないの?」


「くはっ、おらルークを取ってクイーン3つ目」


「はあ!?」


「このままだと俺のポーンが全部女王様になっちまうぞ?」


「兄さんさては僕で遊んでるな!?」


「バレた?」


 ボードゲームは楽しむことを至上主義としている俺はクイーンでテオのキングを取り囲んでいた。ギリチェックメイトにならないよう調整してある。


「おじ様、そういうのは良くないわ。正々堂々戦うべきよ」


「俺はおじ様じゃないが、そうだな、今回は3つで我慢しとくか。ほらチェックメイト」


 ビショップが控えてるのでもうどこにも逃げられないぞ。


「うわ……」


「テオはチェス弱いなぁ。姉貴相手だと5手でチェックメイト取られてそう」


「5、手、はさすがにない、ないよ」


 目を泳がせながらテオが言う。俺の言ったことは的外れじゃなかったらしい。


「俺はお兄さんな。老け顔だけどお前の従兄弟より年下なんだぞ」


「兄様?」


「じゃあそれでいいよ」


 高貴な妹ができちまったぜ。


「兄様チェス強いのね」


「……いや俺は強くないが。こっちのテオ兄様が弱いだけだ」


「おい!」


 ってのはさておき。


「いつまで滞在するつもりなんだ?」


「……」


 下を向いてしまった。


「帰れってことじゃなくてだな。こう、滞在する期間次第じゃ部屋とか食事とか色々あるだろう?」


 言ってて思ったがイーディスさんのところにふらっと寄って、ふらっと帰った俺が言えたことでもないな。


 その少女は顔を上げてぱあっと笑った。

 ……リーヌスには近づけないようにしなきゃな。


「2日が条件だったの!」


「保護者はいないのか?」


「いないわ。執事は連れて来たけれど」


「へー。ばーちゃんには挨拶した?」


「した!」


「そうか」


 俺が言うことはもうないな。


「なんで俺たちのところに来たの?」


 立ち直ったのかテオが椅子から立ち上がって、かがんで少女に聞いている。任せていいだろうか。俺は子どもの扱いが分からない。


「パウラ様が2人に遊んでもらえっておっしゃったの!」


「そ、そうなんだ」


 テオも流石に顔がひきつっている。うん。説明くらいよこしてほしいよな。情報聞き出したのほとんど俺じゃねえか。


「しょうがねえなあ。姫様が昔置いてった服あるから着るか?」


「ひめさま?」


「オリヴィア姫様」


「兄さん!?さすがにそれはまずいんじゃないのか」


「いいだろ別に。捨てて良いって言ってたくらいだし。名前なんだっけ」


「クララ」


「クララはプリンセス好きだろ?」


「好きよ」


「ほら」


「何がほらなんだよ」


 レースのふんだんに使われたドレスに盛られた髪。姉貴ならこうはいかない。プリンセス好きの可愛らしい女の子に違いないと踏んだわけだが合っていそうで良かった良かった。


「1人で服は着れるか?」


「……?」


「ああ、うん」


 貴族のお嬢さんは1人で服を着たりはしないらしい。女の使用人捕まえなきゃな。


「あ、ロッテさん。今いいか?」


「え?はい」


 廊下で控えていた中年女性に声をかける。

 若い頃はさる貴族のお屋敷でメイドをしていたらしいと昔聞いたことがある。うってつけだろう。


「このクララお嬢様に姫様の服を着せてあげようと思ってな。頼めるか?」


「もちろんいいですが」


 イマイチ状況がのみこめていなさそうだ。


「公爵家の一人娘だから扱いには気をつけるんだぞ」


「え!?」


「お嬢様。あちらのお姉さんについていくといい」


「分かったわ!」


 さて。


「いやー、テオ。今日は忙しないな」


 せっかくの休日に大変だ。俺は今年年中休日だったのでなんてことはないが、テオは毎日がんばっているのだ。休みたい時もあろう。


「兄さんにはなんて言っていいか分からない」


「頼りになるお兄ちゃんじゃないのか」


「鏡見ろよ」


「いつも通りの男前だな」


「あ゛ー!」


 テオはいつもなにかにイライラして大変だなあ。


「ほらデヴィンでも見て落ち着け」


『ピュイ』


 セキレイになったデヴィンが俺の腕の上をちょこまかと走り回っている。


「頭がおかしくなる……」


 頭を抑えている。


「ええ?デヴィン、癒し効果になってないらしいぞ」


『そんな!?ボク調べのデータでは小鳥には80%以上の癒し効果が認められているのに!?』


「鳥が喋った?いや、気のせいだ気のせい。いくら兄さんだからってそんな胡乱な芸当はできないはずだ……」


 さらに呻くので、俺とデヴィンは顔を見合わせてお互いに首を捻った。


「そうだな、気のせいだ。ほらデヴィンはメタリックな文鳥だからな」


『ピュイ』


「…………」


 テオはどうやら考えることを放棄したようだった。テオで遊ぶのはこの辺にしておくか。


 パタパタ飛んでいるデヴィンをつまみ肩に載せる。そろそろ着替え終わった頃だろうか。

 ……時間かかってるな。レディの身支度は時間がかかるのかもしれない。知らない。

 デヴィンをつつきながらそれなりの時間遊んでいたら扉が開く。


「終わりました」


 ピンク色のワンピースに身を包んだ少女が出てくる。似合っていて大変可愛らしい。俺は使用人の人選を間違えなかったようだ。

 髪も動きやすいように2つ上の方でくくられている。


「どうかしら」


「可愛いよ」


「そう?」


 テオに褒められて照れている。……引き離した方がいいかな。

 とりあえずこれで外を出歩けそうな格好になった。


「じゃあなにして遊ぶ?玉蹴り?かけっこ?」


「おままごとがいいですわ!」


「……。そうだな!それがいい!」


 やべえ。ここまで女の子女の子してる少女は初めて見たかもしれねえ。


「ああでも、おままごと用のおもちゃねえんだよな」


 姫様もそんな柄じゃなかったし。


「フリーハンドでやるからいいの」


「へー」


 ▫


「クララがママで、テオが息子で、俺は?」


「わんちゃん?」


「犬かぁ」


「あはははは!」


 テオが機嫌が良さそうに笑った。


「いいじゃん兄さん犬はお似合いだよ」


「まあ働かなくていいってのはいいな」


「働かなきゃダメよ。兄様は黒くて大きい犬なんだから、狩りをして鹿肉を取ってくるの!」


「それは……犬なのか?」


 狼とかじゃなくて?


「おかえりなさいテオ。ご飯を作るから早く手を洗って来なさい」


 突然のスタート。


「は、はーい」


 テオも戸惑い気味だ。


 手刀で空気を切っている。何を切っていることになってるんだこれは。


「む。見てても兄様はこれ食べれないのよ!玉ねぎが入ってるんだから!」


 らしい。


「兄様には後でちゃんと肉をあげるからいい子にしてなさい」


 呼び方が兄様固定だからカオス極まっている。どういう状況やねん。


 テオが笑いをこらえてんな。今度チェスやったら遊び倒してやるよ。


『ピュイ』


「あらあなた、お風呂に入ってくるの?夕飯には間に合うようにしてね」


 デヴィンは父親役らしい。メタリックな文鳥にも一切動じてなくて貴族としての素質を感じます。

 しかし夕飯前に風呂ってあんまり聞かねえな。


「貴族とかじゃなく普通の家庭なんだな」


「犬がしゃべったのよ!?」


「わ、わん」


 そこはちゃんとやるんかい。

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