1.貴方は
貴族のお嬢様アマンダは、豪華な宮殿で優雅に過ごすのが日常だった。
「今日も麗らかないい天気
午後の予定もないし
のんびりお茶会でもしようかな」
そんな風に考えていると、
携帯に会社からのメールが届いた。
ー今日の午後、第3宮殿のお庭に集まってください。
新しい演劇をします。
貴方は今回の主役に決定しました。
ぜひ、お待ちしております。ー
アマンダは驚きつつ、喜びを隠せない。
また新しい演劇が出来るんだ。
何だかんだでアマンダは優雅な生活も好きだが
こういった演劇のような心躍る行事もとても好きだった。
急いで支度を済ませると、宮殿の庭には
既に演劇のスタッフたちが集まっていた。
主役であるアマンダの姿をみて
彼らは彼女を歓迎し、
今回の演劇の趣旨を説明した。
「ええ…アマンダさん。
今回は、モテない女性が幸せを掴む役を演じてほしいのです」
アマンダはモテない女性…というのが少し引っかかった。
私が!?
モテないなんて、そんな筈はない。
ただ、普段の私とは違う役柄…というのだったら
わかるけど、やっぱり可愛らしい女性の役が良かったな。
そう思いつつ、でも主役の役は降りたくないので
言いたいことをグッと飲み込んだ。
「その…相手役の男性はどんな方なんですか?」
一番、気になる事を聞いてみる。
相手が、汚いおじさんだったら
さっさとモテない女性の役を降りてやろうとも思ったからだ。
「相手役の男性は、今一番人気の役者ですよ。
きっと上手くいくと思います」
それを聞いてアマンダは安心した。
相手役が人気役者なら問題はなさそうだ。
するとスタッフの一人がこう聞いてきた。
「アマンダさん。相手役の役者さん、ご存じじゃないんですか。
たしか、昔、一緒に仕事されていたって聞きましたけど」
そうだろうか?
昔?いつだろうか?
アマンダは思い出せずにいると
「まあ彼、まだ無名のアマチュア役者だったらしい頃だったし
覚えていないならいいですよ」
アマチュア役者…か。
アマンダは役者の候補生を、過去に何人か面倒を見ていたことを思い出した。
スター候補生を探すのが目的とか。
「確かに、会っていたかもしれない。
こんなところで、再会するなんて」
アマンダは、”再会”という響きに、
ちょっとした運命めいたものを感じた。