サンシャイン‐花が好きなボクと、笑いかける君‐
ボクの名前は、藤原ゆうき。小学五年生です。
ボクは、花が大好きです。
今日もいつものように、学校の花だんに来ています。
そして、花たちに、水をあげています。
「早く大きくなれよー」
ボクが水やりをやっていると、同級生たちがやってきました。
「おーい、あいつまた、花のところにいるぜ」
「みんなと遊べばいいのに、おかしなやーつ!」
そう言って彼らは、笑いながら遠くへ走って行きました。
「ふんっ、花のところにいて何が悪いんだ」
毎日からかわれるけど、そんなの気にしないもんね。
つぶやきながら横を見ると、一本ひまわりがさいていた。
「あれ、ここにひまわりさいていたっけ?」
ボクは考えましたが、それよりも気になることがありました。
「うーん、ちょっと元気がないな……」
考えていても、仕方ない。ボクは立ち上がります。
「待ってて、すぐ水をあげるから!」
ボクは水道まで走って、ジョウロに水を入れました。
そして、ひまわりの所に戻って、水をあげます。
「はい、これで大丈夫だよ。すぐ元気になるからね!」
ふと時計を見ると、午後五時でした。
もう、帰る時間だったのです。
「しまった、もうこんな時間だ。そろそろ帰らなきゃ!」
ボクは片づけをして、ひまわりに振り返ります。
「じゃあ、またね!」
ひまわりに手を振って、ボクは小走りで校門に向かいます。
だけどボクは気になって、一度だけ振り向きました。
すると、ひまわりはユラユラと風にゆれていました。
次の日、ボクはまた花だんに行きました。
でも、そこにひまわりはなく、茶髪で黄色いワンピースを着た女の子が座っていました。
「こんにちは、ボクはゆうき。君はだれ?」
ボクが声をかけると、女の子はこっちを向いて、にこっと笑いました。
「私は、あおい。最近ここに来たの」
「へぇー、君も花が好きなの?」
「えぇ、あなたも好きなのね」
「えっ、なんで……」
「だって、毎日ここに来て、水やりをやっているって聞いたから」
そんなことまで知っているのか。たぶん、あの同級生たちが話したんだろう。
ボクがうつむいていると、あおいが手を取ってきたのです。
「ねぇ、私と一緒に遊びましょ!」
「いいけど、水やりをやった後でね」
「じゃぁ、私も手伝うわ!」
「あっ、ありがとう……」
ボクは少しためらいながら、あおいと一緒に水やりをしました。
その後は、遊具で遊んだり、かけっこをしたりしました。
ブランコにも乗って遊びました。
友だちと遊ぶって、こんなに楽しかったんだ!
ふと時計を見ると、もう帰る時間でした。
水やりをしている時と一緒ぐらい、時間がたつのが早かったのです。
「ごめん、そろそろ帰らなきゃ」
「あら、本当。じゃぁ、また明日遊びましょう!」
「うん、じゃぁまたね!」
それからは、毎日あおいと遊びました。
ある日、ボクはあおいに、とっておきの場所を教えたくて、急いで学校に行きました。
「あおい、今日はボクのとっておきの場所を教えてあげるね!」
「とっておき?」
「そうだよ。ここから少し遠い所にあるから、早く行こう!」
「待ってよ、ゆうき!」
早く行かなきゃ、時間が足りないよ。
ボクはあせりながら、あおいをひっぱっていったのです。
ボクらは裏門を出て、裏通りを走っていました。
ここは、たまにしか車は通らないし、大丈夫だよね。
「あおい、早く……」
すると、パアァーッと、車のクラクションが聞こえたのです。
まさか、今日に限って、こんな所を車が通るなんて……
ボクは、頭が真っ白になりました。
その時、あおいの声が聞こえたのです。
「ゆうき、危なーいっ!」
そして、強い力で、反対側につきとばされました。
そのため、ボクはすり傷ですみました。
「あおい!」
ボクはすぐに起き上がって、辺りを見回しました。
でも、そこにあおいの姿は、どこにもなかったのです。
すると、車のまどを開けて、おじさんがどなってきました。
「危ないだろ、いきなり飛び出してくるな!」
おじさんはそれだけ言うと、車を発進させてどこかへ行きました。
残されたのはボクと、少しつぶれたひまわりだけでした。
「これは、この前のひまわり?」
ボクはそっと、ひまわりを抱いて学校に戻りました。
そして、花だんの所に行って、穴をほってうめました。
「あおいは、君だったんだね」
ボクは、なんだかさみしくなって、うめた所をさわります。
「ありがとう、助けてくれて……」
ボクはお礼を言って、少し泣きました。
そして日々は流れて、ある夏の日。
ボクは、あいかわらず花だんで水やりをしていました。
その花だんには、たくさんのひまわりがさいています。
「あおい、君も見ているかな。こんなにも、君の仲間が増えたよ」
僕は、ひまわりを見つめながらつぶやきます。
「また遊ぼうね」
僕がそう言ったら、ひまわりたちがユラユラとゆれました。
どこかで、あおいが笑ったような気がしました。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!