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幕間「旅の途中~ワイバーン討伐~」4/4

 つがいで寝ていた2匹は巣から出て、こちらに向かって飛び立とうとしていた。

 既に飛び立った1頭目は無視して、石動はもう一頭の飛び立とうと羽を広げたワイバーンの羽の付け根を狙って撃つ。


 4発目は飛び立つ寸前だったワイバーンの羽を片方吹き飛ばしたので、撃たれたワイバーンはバランスを崩し転倒し、倒れ込む。

 石動は5発目を、倒れたことで無防備になったワイバーンの頭に撃ち込み、頭の半分を消失させた。


 怒り狂って飛来した生き残りのワイバーンは、こちらを襲おうとするが、林立する岩柱が邪魔で、狭い隙間にいる一行を襲えないで苛立っている。

 どうしても下に降りられずに、空中で喚いていた。


「任せて」

 ロサが石動に短く声を掛ける。

 そしてホバリングするような形になっているワイバーンに、ロサが腰だめでマリーンM1895の連射を浴びせた。


 至近距離で45-70弾を5発も胸に撃ち込まれたワイバーンは、たまらず逃げようとするが、途中で力尽きて地面に落ちてしまう。


 再びダムダム弾のクリップをとると、素早くモーゼルライフルに再装填した石動は立ち上がって周りを見渡し、もはや動いているワイバーンがいないことを確かめた。


「イェーイ! やったね!」

 近寄ってきたロサと笑顔でハイタッチを交わす。


 そして、呆然としてこちらを見ているフィリップ達護衛騎士と冒険者に向かって、微笑む。


「さあ、止めを刺しに行きましょうか」



 他のワイバーンはフィリップ達に任せて、石動とロサは黒いワイバーンに向かった。

 

 漆黒のワイバーンは巣の中で横たわっていたが、まだ息があった。

 石動達が近づくと、ブフーッと鼻息を荒くし、威嚇するように口を開ける。


「全くたいしたものだ。徹甲弾を5発も喰らっているのに、威嚇してきやがる」

「こいつが万全な状態で襲ってきたら、と思うとぞっとするわね」


 石動が最初に撃った徹甲弾は、ほぼ狙い通り額に命中して穴を空けていた。

 近くで見るとやはり他のワイバーンとは違い、身体中にある鱗が分厚くて硬そうだ。


 石動は徹甲弾で正解だったと、心の中でうなづく。

 動けない漆黒のワイバーンの傍に立つと、石動は額の穴に被せるようにモーゼルライフルの銃口を向け、引き金を引く。


 ダムダム弾が額に開いた穴から入ると、漆黒のワイバーンはビクッと全身を振るわせた。

 そして鼻や目、耳や口からも血を流しながら、ゆっくりと全身の力が抜けていく。

 まるで魂が抜けていく様を見るようだ。

 

 もう石動が開いたままの眼球を銃口でつついても反応は無い。

 漆黒のワイバーンは、完全に死んだようだ。

 石動はホッとして、小さく呟く。


「状況終了」


 フィリップは信じられない思いだった。

 死んだと聞いて、漆黒のワイバーンを見に行ったが、間違いなく亜竜だった。

 胸を開いて魔石を採ってみたが、他のワイバーンとは大きさも色も全く違うものだったのが証拠だ。


「なあ、フィリップ。亜竜ってこんなに簡単に倒せるもんだっけ?」


 ワイバーンを捌いて魔石を取り出しながら、ヤコープスが話しかけてくる。

 ヤコープスの顔にも"信じられない"と書いてあった。


「そんなわけないだろ。帝国内で亜竜が出現したら、第一師団か第二師団が出動して、100人規模の討伐隊が組織されるに違いない。ましてや、まだ小規模とはいえ群れでいるワイバーンだと、更に難易度は上がって大人数になるだろうよ。犠牲や怪我人もかなりの数になるだろうな」


 一番冷静なサンデルが淡々と語る。

 サンデルも理不尽で不可解な状況だと感じているのが、ありありと伝わってきた。


「まぁ、群れが小さいうちにザミエル殿がここを通りかかったのが幸いだったということだろうな。

 もしかしたら、群れが大きくても同じだったかもしれんが」

「「・・・・・・」」


 フィリップがポツッと零すと、ヤコープスもサンデルも言葉が無かった。


 ただ、3人が共通して心の中で思っていたのは「このふたりに護衛って必要?」という疑問だったらしい。




 石動たちが街に戻ると、あまりに短時間で帰ってきたので、ダメだったのかと失望した表情のマーカスだったが、冒険者やフィリップ達の報告を聞いて喜びで飛び上がりそうになる。


 そこからが大騒ぎだった。


 ワイバーンの死体を運ぶために、街の男たち総出で荷車を押し、回収して戻ってきた。


 すると回収したワイバーンの死体を一目見ようと、町中の老若男女が広場に繰り出したので、祭りのように出店まで出る騒ぎとなる。


 夜になってもその騒ぎは収まらず、領主や商業ギルドが酒を振舞ったりしたので、本当の祭りになってしまった。

 石動やロサ、フィリップ達は主賓として担ぎ出され、飲めや歌えの大騒ぎとなる。


 石動は途中で何とか抜け出して、深夜には宿に帰ってベットに倒れ込んだが、その騒動は明け方まで続いたようだ。


 翌日、マーカスから報酬として金貨100枚とワイバーンたちの魔石に、亜竜をそのまま素材として貰う。


 ほかのワイバーンの素材や肉は街に寄付した。それだけでも相当な価値があるだろう。

 マーカスの笑みが更に深くなった。


 報酬の中から、何もしてないからと固辞するフィリップ達にも、無理矢理金貨10枚づつボーナスを支給して押しつけた。金貨の残りをロサと分ける。


 亜竜と魔石はマジックバックに仕舞っておいた。


 二日酔い気味の頭を抱え、これからまだまだ続く揺れる馬車の旅、と思うと石動は気が重かった。

 これならワイバーン討伐の方が気が楽だと石動が零すと、フィリップ達が引き攣ったような笑みを向けてきたのはなぜだろうか。


 ロサはサッサと馬車の中で横になって寝てしまった。


 街中の人々から盛大な見送りを受けながら、石動達一行は国境を目指して出発した。


 あと2日もすれば、目的地の帝都に着くのだろう。


 石動はロサを見習って、揺れる馬車の中でなんとか寝られるよう、長椅子に横たわる。


 馬車が進む谷間の街道を、そろそろと冬の到来が近いことを告げる、冷たい風が吹き抜けていた。


<参考>

◆クレアシス王国出発時における石動のステータス

 

 職業 「????」

 職業スキル

 ・錬金術師  11/99 → 48/99

 ・鍛冶師   15/99 → 45/99

 ・鑑定    10/99 → 32/99

 ・暗殺者   32/99 → 48/99

 ・銃使い   30/99 → 55/99

 ・狩人    8/10  → 9/10

 ・兵士    6/10  → 8/10


*黒い死神を倒したので、狩人がカンスト寸前です。暗殺者や兵士も上がっています。

 無煙火薬や雷管の作製で錬金術師や鑑定が、連発銃の製造で鍛冶師や銃使いも爆上がりしました。



◆現在の石動のステータス

 職業 「????」

 職業スキル

 ・錬金術師  48/99 → 48/99

 ・鍛冶師   45/99 → 45/99

 ・鑑定    32/99 → 33/99

 ・暗殺者   48/99 → 55/99

 ・銃使い   55/99 → 59/99

 ・狩人    9/10  → 10/10

 ・兵士    8/10  → 8/10


*ワイバーンへの狙撃で、鑑定・暗殺者・銃使い・狩人が上がっています。

 遂に狩人のスキルはカンストしました。



幕間はこれにて終了です。


年内と1月の第一週までは、持病の治療や書き溜めのためにお休みさせていただきます。

申し訳ございませんが、何卒ご了承ください。


第三章の開始は1月12日頃に再開の予定です。

新作にも取り掛かっておりますので、その頃にはご報告できるかもしれません。


是非、ブックマークなどしてお待ち頂ければ嬉しいです! 

イイねも頂ければ励みになります!



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