モディファイ
銃身長は取り回しの良さを考えて短めの18.5インチ、レバーアクションのフィンガーループは手袋をしていても操作しやすいよう、少し大きく卵型にしてある。
銃身下のチューブマガジンには6発入り、チャンバーに1発入れれば7連発だ。
ハンドガードも木製ではなく、薄い鋼板にスロットを入れて、M-LOKシステムを模したものを銃口近くまでのばして取り付けている。
そこに本当ならシュアファイアのフラッシュライトを取り付けたかったが、蝙蝠の洞窟で電池を使い果たしてしまい、使用不能のため諦めた。
かわりに右側に予備弾薬差しを付けて6発の弾薬を差せるようにする。
ストックもスケルトンストックを真似したかったが、普通の木材ではその形状から強度が足りず、金属で造ると重くて使いずらいので、やむなく石動も普通の木製銃床にするかと諦めかけていた。
そこへラタトスクが『世界樹の枝がまだ残ってるんじゃない? あれなら軽いし鉄より丈夫だよ』とアドバイスをくれる。
そこで早速、マジックバッグの奥で眠っていた世界樹の素材を加工し、スケルトンストック風にして取り付けてみた。
するとさすがに世界樹の素材だけあって、ストックの真ん中をくり抜いた様な形状でも、45-70弾の反動にビクともしないだけの強度があった。しかも非常に軽い。
ストックの右側にもクィーバーを付け、6発の予備弾薬を差しておく。
フレームの上部には20ミリレールを模したものを取り付けた。
今はダットサイトすらないけど、将来的にスコープを取り付けられるような拡張性を持たせたかったのだ。
さしあたってはサイトとして、前世界の特殊作戦群時代に制式小銃のHK416に取り付けていた、ナイツ・アーマメント社製のフリップアップ・サイトをコピーして取り付ける。
当時はダットサイトが壊れた時の予備として取り付けていたものだが、折り畳み式の小さなサイトなのに600メートルまでの照準を調整できる優れもので、石動が愛用していたものだ。
こうして出来上がったマリーンM1895モディファイドモデルをみて、石動は満足する。
「(う~ん、カッコいい・・・・・・。早く撃ってみよう)」
こうして郊外の岩山地帯に来た石動は、例によってM1895のサイトイン調整から始めた。
いざ撃ってみると、100メートルくらいなら弾着が握りこぶし程度にまとまるのに驚く。
この精度なら、100メートルでのヘッドショットは全く問題ないと石動は判断する。
200メートルでも人間の上半身くらいなら確実に命中させられることが分かった。
光学照準器も付けていないレバーアクション銃でこの成績は悪くない。石動が慎重に狙って落差を計算して撃てば、ほぼ狙ったところに必中弾を送り込めるだろう。
300メートルになると弾薬の落差が大きく、人間のシルエットのどこかに当てるのが精一杯という感じだ。銃身長が短めのせいもあるし、200メートルくらいまでなら問題ないと思っていた方が良さそうと判断する。
45-70弾の反動はかなり強いが、クリス・コスタが動画で見せた「コスタ撃ち」と言われる、左手を伸ばしてハンドガード前方を掴むやり方で撃つと、かなり抑えられる。連射も楽だ。
石動はしばらくコツを掴むまで撃ち込み、素早くフレーム右にある装填口から新たに装填する練習をした。
今回はロサも一緒なので、M12トレンチガンとマリーンM1895を撃たせてみる。
まずM12トレンチガンを撃ったロサは、顔を顰めて石動のところまで戻ってきた。
「う~ん、なんとか散弾なら撃てないことは無いけど、一発弾は私には反動が強すぎて無理ね。痛くて肩に痣ができそうだわ」
M12を石動に返しながら、ロサが続ける。
「それに長くて重いわね。長いのは銃剣がついてるからかもしれないけど。私には向いてない感じ」
頷いた石動は、次にマリーンM1895を渡す。
たちまちチューブ弾倉の中の弾を打ち尽くしたロサは、楽しそうに石動を振り返る。
「これ、いいわね! 銃が軽くて私でも振り回せるし、なによりよく当たるのがいい!」
「反動キツくない?」
「さっきのトレンチガンに比べれば、私でもなんとかなる範囲だわ。ねぇ、もっと弾ちょうだいよ!」
石動はロサに45-70弾を渡すと、装填の仕方などの操作法を教えながら考えていた。
「(これはもう一丁、M1895を造って、ロサに持たせるのもアリだな。ふたりの方が単純に火力が上がるし、バックアップも期待できる・・・・・・)」
ロサが銃の操作に慣れてきたので、最後に石動は、後でおやつに食べようと市場で買ったスイカのような果物をマジックバッグから取り出した。
スイカを20メートルほど先の岩棚の上に置き、ロサにM1895で撃たせてみる。
ドパンッ!
ロサが撃った45-70弾は見事にスイカに命中し、その途端、スイカはキレイに爆散して跡形もなくなった。
さすがはダーティハリーが持つ44マグナム弾の約2.5倍のエネルギーを持つだけのことはある。
人間の頭を撃っても似たような結果に終わるだろうな、と石動は物騒な感想を持った。
このパワーなら、鹿や熊でも撃ち倒すことができるだろう。
「うわ~、食べるとこ全然残ってないね」
「次からは食べてから撃たないとな」
石動とロサは顔を見合わせて笑い合うと、スイカは諦めて空薬きょうを拾い、帰り支度をふたりで始めるのだった。
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