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閑話ー過去・アフガニスタンー 1

先週は持病の悪化で体調崩してしまい、更新できず失礼しました。


今回含め三話ほどは閑話として、石動の自衛隊時代の過去のお話になります。


筆者はガンオタではありますが、ミリオタとしては修行不足なので、結構難産でした。

アメリカ軍や自衛隊の描写において、荒唐無稽な設定や行動など、ガチ勢の方から見ればありえないと思う箇所も多いと思います。

突っ込みどころ満載でしょうが、所詮ガンオタの妄想として、鼻で笑って許して頂ければ嬉しいです。


*物語の進行には大きな影響はありませんから、銃オタ・ミリオタの呪文オンパレードになりますので、苦手な方は32話へ飛ばして頂いても大丈夫です。

引き続き、物語をお楽しみください。



 異世界転移より遡ること5年前・・・・・・

 201●年某月某日 アフガニスタン上空


 

 米軍のUH60ブラックホークの機内はエンジンの爆音やバタバタと響くローター音で喧しく、相変わらずロクマルの乗り心地は良くないな、と石動二曹は思う。

 身体を捻って外を見ても茶色い岩山ばかりが眼下を流れ、面白くもなんともない。


 石動はつい先日までUSA本土のワシントン州のルイスマコード統合基地で行われていた、毎年定例のグリーンベレー第1特殊部隊グループと自衛隊特殊作戦群の合同訓練に参加していたのだが、訓練最終日の夜、参加チーム代表の大山一佐の命令で石動他4名が選別され、急遽米軍機でアフガニスタンのカブール空港まで飛んで現地での演習に参加することになったと聞かされたのだ。


 翌朝早くにアメリカ空軍のC-17輸送機にアフガニスタン向けの車両や物資と共に詰め込まれた石動達4人は一路アフガニスタンのカブール空港へ飛び、到着後も休む間もなくUH60ブラックホークに乗り換えて、アメリカ軍とアフガニスタン正規軍の合同基地へと向かうことになった。


「で、結局、ここで何をするのか聞いてますか?」

 石動は隣に座る成宮曹長にヘリの爆音に負けない音量で尋ねた。

「いや、一佐からは着いてからのお楽しみ、としか聞いてないな」

 成宮曹長は苦笑いしながら答えた。石動よりも年上でもうすぐ30歳になると聞くが、甘いマスクと鍛え抜かれた身体を持つイケメンで、婦人自衛官をはじめ女性陣の人気の的だ。

 ただし、本人は結婚していて美人の妻と五歳になる娘を持つ善きパパであり、至って妻一筋の堅物である。本人の身持ちの堅さや子煩悩ぶりに、他の男性隊員も曹長のモテモテぶりにムカつきながらも、つい許してしまうような愛嬌があった。


「ひょっとして実戦だったりして」

 ニコニコしながら会話に参加してきたのは相馬一曹だ。いつも笑顔を湛え、温和そうな相馬一曹は身長165センチと特殊作戦群の隊員としては小柄ながら人並外れた筋力と持久力を持ち、作戦時には誰よりも頼りになる存在だ。腕の太さなどは石動の倍近くあって、隊員たちの間での秘かな通称は"豆タンク"だが、愚か者が本人を前にその言葉を言うと、その太い腕から繰り出される神速のボディブローを喰らって悶絶する羽目になるだろう。


「ありえますよね。アフガニスタンではタリバンやアルカイーダへの掃討作戦が激化してるらしいし」

 細面の顔にゴーグルの様な眼鏡を掛けて、大学院生の様な知的な雰囲気を漂わせ、戦闘服や銃器の似合わない感じの細身の男が伊藤二曹だ。冷静沈着とは伊藤二曹のためにある言葉だと石動は思っていて、訓練中はもちろん作戦行動中にどんなトラブルがあっても冷静に処理してしまう。見かけによらず気質は戦闘民族で、果敢な行動をとることを厭わないところが石動と気の合うところだ。不思議と動物に懐かれる男でモフモフに弱く、猫に赤ちゃん言葉で話し掛けているところを石動に見られた時には、口止めに一週間食事を奢ってくれた。


「いずれにせよ、20代の生きの良いのが選ばれたんだ。いつもの訓練ではなさそうだが・・・・・・」

 成宮曹長がそう呟いた時、ローター音が変わり、米軍兵たちが動き出した。

 石動が外を見るとテントや車輛が並ぶ大きな基地が見えてきていた。

 着陸が近そうだ。



 基地のヘリポートに着陸したUH60ブラックホークヘリのローターが巻き起こす砂埃交じりの風を受けながら、地面に降り立った石動達は米軍兵に指示された場所で整列し待つことになった。

 待つ程もなくハンヴィーが2台現れ、石動達の前で停まると、そこからラフな格好をした4人の男たちが降りてくる。


「ハロー、済まない。待たせたな。私はリチャードだ」

 にこやかに笑いかけてきた大柄で髭を蓄えた金髪(ブロンド)の白人男性がサングラスを外しながら話しかけてくる。慌てて敬礼していた石動達に対して握手を求め、右手を差し出してきた。軍服の階級章は陸軍少尉となっている。

 部隊章はナイフに正三角形の稲妻マーク「DELTA FORCE」だ。


 デルタフォースとは、第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊の通称であり、他に戦闘適応グループ、陸軍別動エレメント等の名称があり、主に対テロ作戦を遂行するアメリカ陸軍の対テロ特殊部隊である。

 統合特殊作戦コマンド(JSOC)の指揮下に置かれているが、その実態は秘密のベールに包まれている。


 石動達が先日までアメリカ軍基地で合同訓練を行なっていたグリーンベレーも特殊部隊だが、米軍広報などでも公認されているグリーンベレーと違い、デルタフォースはその存在を公的には米軍は認めていない。

 従ってその任務も極秘であることが多く、任務の中では民間人に偽装する必要もあるため、頭髪は他の部隊に比べて自由度が高いのが特徴だ。また、服装も任務の性質によっては必ずしも軍服を着るとは限らないようで、民間軍事会社の警備要員のように私服に近い服装に武装して任務に当たることも多い。


 そしてチームは通常、四人一組で行動する。近接戦闘等のほか、現地の語学に精通するなど頭脳面でも高い水準が要求され、演習時には他部隊の一般の兵士に容易に作戦内容を知られぬようにわざとドイツ語やフランス語を使って作戦会議を行うほど、隊員の語学水準は非常に高いと言われている。


 初めて見るデルタチームに緊張しながら自己紹介する石動達らと握手を交わしたリチャードは、笑みを浮かべながら続けた。

陸軍特殊作戦軍団(フォートブラック)からしばらく君達と行動を共にするように言われている。よろしく頼むよ」


 特殊部隊に属する者なら、デルタチームと合同訓練出来るなど願ってもないチャンスだ。

 石動達4人は喜びに顔を見合わせると、リチャードに揃って敬礼した。

「アイ・アイ・サー!」



 それからというもの、石動達はデルタチームから様々な訓練をし、教えてもらった。


 まずは基地の一角にある無人となった石や土造りの建物群を「恐怖の館2(ハウス・オブ・ホラー2)」と称して、石動達はデルタチーム相手に市街戦や近接戦闘の演習を毎日行う。

 石動達も今までの訓練経験から、市街戦はもちろん、屋内への侵入や狭い場所での近接戦闘等、充分身についているはずの技術がデルタチームには全く通用しない。

 何度も全滅させられ、甚振られ、簡単にあしらわれた。

 他にも実地で同行したパトロールの方法だけでも目から鱗が落ちる思いだったし、岩山の多いアフガニスタンでの山岳戦のやり方や待ち伏せの見破り方、逆に待ち伏せする方法などなど・・・・・・。

 

 爆発物の発見や処理、又は仕掛け方などは赤毛のスコットランド系白人のブロディ上級曹長が教えてくれる。デルタチームに所属する前にはEOD(爆発物処理班)にも所属していたらしく、イラク派遣時にはありとあらゆる爆発物を処理した、と笑っていた。

 

 アフリカ系アメリカ人とアイルランド人のハーフというリーアム陸軍曹長は、格闘技の達人だった。

 世界中を回った時に武術を習ったというリーアム曹長は、イスラエルのクラヴマガやインドネシアのカリ、果てはロシアのシステマまで習得したという猛者だ。日本の横田基地に居た時に合気道や古武道の柔術を教わって楽しかったと言い、合気道をやっていた石動と話が合った。


 でも石動が一番為になったのは、デルタチームの中で最も小柄で無口なヒスパニック系のエメリコ陸軍曹長だ。エメリコ曹長はデルタチームに入る前は海兵隊でスカウトスナイパーをしており、イラクで実績と経験を積んだベテランだった。本人は詳しくは語りたがらないが、噂では200近い射殺実績を積んでいるらしい。


 岩山が多く開けた土地で戦うため、長距離で撃ち合うことが多いアフガニスタンでの戦闘では、アメリカ軍制式のM4小銃の5.56×45弾では威力不足を指摘されていた。

 そのため、エメリコ曹長はナイツ・アーマメント製のM16小銃を7.62×51弾にして狙撃銃に仕立て直したナイツSR-25を使用することで、チーム内のマークスマン的な役割を果たしている。

 そんなエメリコ曹長から実弾射撃のレクチャーを受けることができたのは、石動にとっては得難い経験だった。


 岩山から岩山まで超長距離の狙撃など、日本の演習場では全く考えられないシチュエーションで、マンツーマンでエメリコ曹長が石動に狙撃を叩きこんでくれた。


 実践的な風の読み方から、陽炎や気温・湿度が与える弾道への影響、1,000メートルを超える狙撃の場合は地球の自転の影響まで計算に入れて考えるなど、詰め込まれる内容に石動は頭がパンクしそうになりながら、エメリコ曹長の「授業」についていくのに必死だった。


エメリコ曹長が「SEALS(ネイビーシールズ)の奴からせしめた」と、冗談かどうか判別しにくい笑顔で持ち出したのが50口径のマクミランMk-15だった。

 それを使って、刻々と風向きが変わる難しい谷越えの2000メートル先の標的にバンバン命中弾を浴びせるのを見せられると、石動は空いた口から塞がらず同じ人間業とは思えなかった。

 石動も撃たせて貰ったが、10発に1発も当たればいいほうで、己の実力不足に悔しい思いをする。


 狙撃に使う銃は、石動の持つ特殊作戦群の使用小銃であるHK416自動小銃が5.56×45弾なので、デルタの武器庫にあったHK416を大型化して、7.62×51弾が使用できるようにしたHK417自動小銃にリューポルドのスコープを付けたものを借りて使用している。


 ちなみに他のデルタ隊員たちは、サイレンサーを付けたMK12 Mod 1を使用していた。

お読みいただきありがとうございました。


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