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襲撃2

戦闘場面で少し残酷な描写があります。

苦手な方はご注意ください。

 下品な笑い声を上げ、金髪ロン毛は歩み寄りながら片手剣を抜き、剣をグルグルと振り回している。

 よく見ると、額に赤黒い痣がある。昨日の夜は無かったので、暖炉の角に頭をぶつけた跡に違いない。

 石動は薄笑いを浮かべて呟いた。


「見ないうちにずいぶんと男前が上がってるじゃないか?」


 石動の言葉に金髪ロン毛が顔色を変えると、怒りも顕わに怒鳴り散らす。


「うるせぇ! 神殿で治癒魔法を掛けてもらっても、しばらくは跡が消えないって言われたぜ! このお礼は何倍にもして返してやる!」


「それで付いてきたのか、ご苦労なことだ。そう言えば衛兵が呼ばれてたはずだか?」


「ふん、衛兵なんざ、酒場のいざこざごときで手を煩わされたくないんだよ。少し金を掴ませれば見逃すさ。そうだ、その金も取り立てないとな」


 金髪ロン毛の後ろでは、スキンヘッドの大男がハルバートを持ち、ひょろい長身男は弓矢を構え、馬鹿のように顔に下品なニヤニヤ笑いを張り付けていた。


「昨日は油断したんだ。今日は油断もしないし、得物を持っての戦いでお前らなんかが俺達に勝てるはずがねぇ。今のうちに地べたに頭擦り付けて謝って、金と女を渡せば苦しまずに殺してやるよ」


「謝らないと言ったら?」


「こんな森の中じゃ誰も助けには来ねえ。国と国の間の森で人が獣に食われて居なくなるなんざ、珍しくもねえさ。まずお前をなぶり殺しにして、女もたっぷり楽しんでから獣の餌にしてやるよ」


「そうか、それを聞いて安心したよ。お前らが罪悪感を持たずに済むクソ野郎だと分かって」


 石動の言葉に僅かに眉を顰めたが、金髪ロン毛がヘラヘラした態度から次の瞬間、思った以上の素早さで踏みこみ右手の剣を袈裟懸けに撃ち込んできた。


 その動きを予測していた石動は、銃剣を左斜めに構え、金髪ロン毛の剣戟を銃剣の刀身で受けると同時に右足を踏み出すと、相手の打ち込んできた力を利用してシャープスライフルの銃床をくるりと回転させて銃尾を金髪ロン毛の左こめかみに打ち返した。


「ギャッ!」 


 知覚できないスピードでこめかみに打撃を受けた金髪ロン毛は悲鳴を上げて態勢を崩し、左手を思わずこめかみに当てる。


 腕が上がったことで左脇が開いたのを見た石動は、素早く下がって間合いを取り、金髪ロン毛の左胸を銃剣で二回、目にもとまらぬ素早さで刺した。


「グッ、カハ・・・・・・」


 心臓にダメージを受けた金髪ロン毛は力なく地面に膝をつき、朽木が倒れるように地面に伏した。


 見る間に血だまりが広がり、濃厚な血の匂いが立ち込める。


 石動は倒れる金髪ロン毛は放置し周りを見渡して警戒すると、弓を構えて石動に矢を放とうとしていた長身男がロサの矢を首筋に受けて倒れ、大男は雄叫びを上げながらハルバートを振り回して樹の上のロサを攻撃しているところだった。


 金髪ロン毛が石動を足止めし、ロサを二人掛りで捕らえて人質にするつもりだったようだが、当てが外れた上に仲間がやられてパニックになっている大男は、やたらとハルバートで樹の枝を切り落としながら振り回す。


 ロサも最初は上手く樹の影に隠れたりして凌いでいたが、運悪くハルバートの先が靴の踵を掠め、バランスを崩して樹から落ちてしまった。


 石動が駆け寄る合間の僅かな間の出来事で、しまった!と思った石動が大男を撃とうか、と一瞬迷った隙に、ハルバートを手放した大男は腰の短剣を右手で抜きながらロサに走り寄り、左手で落ちて倒れたロサを抱え上げると盾にして石動に向かい合う。


「来るなっ!」


 ロサの喉元に短剣をあてた大男は、スキンヘッドの頭の先から汗をかき、眼は金髪ロン毛や長身男らを見てキョロキョロと落ち着かない。


「落ち着きなよ。もうあんた一人だぜ。まだやる気かい?」


 石動は長身男を見るもピクリとも動かない。首の矢キズから大量の血が流れているので、生きていてもそう長くはないはずだ。止めを刺しておきたいところだが、先ずはこちらからと大男を見る。


 ロサを盾にしているが、細身のロサでは大男の身体は半分以上はみ出している。何ならヘッドショットも可能だが、その結果まともに脳漿を浴びることになるロサに怒られそうだ。


 では・・・・・・と石動は大男に話しかけながら、ロサに合図を送ることにした。


「あんたらが襲ってきたから、自分たちも反撃したまでだ。これ以上、戦うつもりが無いなら争う必要も無いだろう?」


 石動はしゃべりながら右手で自分の左足を擦り、それからシャープスライフルを持ち上げた。それからロサをジッと見る。


 ロサも石動を見て、しばらく考えていたが微かに頷く。


「ロサを離すなら、俺たちはこれ以上なにもしない。あんたは好きなとこに行けばいい。どうだ?」


 大男は追い詰められた者特有の嫌な匂いを体中から発し、脂汗を流しながら答えた。


「断る。信用できない。女は森を出るまで一緒に連れていく」


「そうか、それは残念だ」


 石動はため息をついて見せ、次の瞬間、シャープスライフルを構えて大男の右膝を狙い発砲した。


 バァンッッ!


 50ー90紙巻薬莢の巨弾は大男の右膝を破壊しただけではなく、その巨大なエネルギーで膝から下を切断し吹き飛ばす。


「ギャアアアアアッ!」


 大男は突然左足が無くなってバランスを崩し、ロサから両手を離して身体が倒れるのを防ごうと反射的に地面に手を伸ばした。


 ロサはその隙を逃さず、右手で左腰の剣鉈を抜くと振り返りざまに、倒れ掛かって下がってきていた大男の喉元を切り裂いた。


「クハッ・・・・・・」


 気管や声帯まで切り裂かれた大男は倒れながら両手で噴き出す血を押さえようとしたが果たせず、口をパクパクしたと思ったら目玉がグリンと裏返り、絶命した。


「ふぅ、ツトム、ありがとう」


 ロサが剣鉈の血を拭いながら、礼を言ってきた。


「どういたしまして」


 石動はシャープスライフルのレバーを操作してブリーチを解放し、薬室にポケットから出した紙巻薬莢弾を装填し薬室を閉じる。


 それから念のため、長身男の倒れている場所に向かってみると、なんとまだ息があった。


 石動はうつぶせに倒れている長身男の背中から、肋骨を避けて心臓に銃剣を刺し、止めを行なう。


 長身男はビクンッと痙攣したかと思うと、全身が弛緩し、死んだことが分かった。


「そう言えば、コイツらの名前も何も知らないままだったな・・・・・・」


 膝を突いて長身男の首筋に手を当てて死亡を確認していた石動は誰にともなく呟いた。

お読みいただきありがとうございました。


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