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異世界スナイパー  ~元自衛隊員が剣と弓の異世界に転移したけど剣では敵わないので鉄砲鍛冶と暗殺者として生きていきます~   作者: マーシー・ザ・トマホーク
第三章 帝都編

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カルクルスの店

なんとか復活しました。しばらくは、更新が不安定かもしれませんがご容赦ください。

なるべく遅れないように努める所存です。

「そう言えば、師匠に会ったら見て貰いたいと思っていた物があるんですよ」


 エルドラガス帝国へのライフル売却の正式な契約などはまた後日行うことになり、会合が終了してアウルム王太子は王宮へと帰っていった。

 石動たちはカプリュスの執務室に場所を移してラビスが振舞う紅茶を飲みながら、しばしの間、寛ぐことにしたのだ。


 堅苦しい会議の後の解放感もあってか他愛のない話に花を咲かせていたが、石動はふと思い出してノークトゥアに見せようと、マジックバッグからあるものを取り出してテーブルに置く。


 それはそら豆大の薄青色の石が嵌めてある台座に、細い鎖が三重になったベルトと留め具がついていて、同じものが二つあった

 マクシミリアンから報酬の前払いとして貰った「亡霊(ファントム)」が使用していた魔道具のアンクレットだ。


「ほう、これは何かね?」

「帝国情報部暗部の名持ち(ネームド)が使っていた魔道具らしいんです。そいつはこれを足首に填めて、まるで瞬間移動のような動きをしていました。

 どうやら風魔法の魔道具らしいのですが、試しに私も填めてみたけど全然動かないので、もし壊れているなら修理したいと思っているんですよ。

 出来れば詳しい人に見てもらって、壊れてないならこれをどうすれば作動させられるのか、教えてもらえたらと思いまして」

「なるほど、それは興味深いね」


 ノークトゥアはテーブルの上からアンクレットを取り上げて、しげしげと観察し始めた。


「この青い石は魔石じゃないのかな?」

「ええ、風属性の魔石のようです」

「やはりね。魔石はその石が持つ魔力を全て消費してしまうと使えなくなるので、定期的に魔力を補充するか、新しい魔石に交換する必要があると聞くよ。魔獣は自分で魔力を創り出せるから交換など必要ないんだけど、人間には魔力を創り出すなどできないからね。

 もしかして動かないのはそのせいではじゃないかな?」

「なるほど、でも魔力の補充ってどうやるんでしょうか?」

「錬金術の魔法陣で使うのはあくまでスキルの力であって、魔力とは違うんだよねー。

 だから、私もどうやったら魔石に魔力を補充するのかは知らないな。いっそのこと、新しい魔石を購入する方が早いのかもしれないしね」

「使ってない風属性の魔石なら、一応持っているのがあるんですが・・・・・・」


 石動は再びマジックバッグに手を入れると、野球のボールほどの大きさを持つ薄青色の透き通った石を取り出した。


「おおっ、これはまた立派な魔石だねー、一体全体、どこで手に入れたんだい?」

「そうか、親方には前に話したけど、師匠にはまだでしたっけ。これは緑の盆地というところに硝酸を取りに行ったときに遭遇した、デカい鳥の化け物を倒した時に取り出したものなんですよ。あの時はそいつに殺されそうになったところをマクシミリアンに助けられましてね。あの鳥も暗部の者と同じような瞬間移動みたいな動きをしていました」

「ハハハ、いろいろと聞いていない話がまだありそうだ。これはじっくりと聞かせてもらわないといけないねー」


 もう一つのアンクレットをしげしげと見ていたカプリュスが口をはさむ。


「錬金術で駄目なら、明日ワシの知り合いに魔道具に詳しいヤツがいるから、そこに行ってみるか。一緒に行ってやるから、そいつに尋ねてみるといい」

「それは助かります。ありがとう、親方」

「お役に立てなかったようですまなかったねー」

「いえいえ! 師匠もありがとうございました」


 そこからは束の間のつもりだったのが、ノークトゥアやカプリュスが打ち上げと称して酒を飲み始めたので、石動は酒の肴に緑の大地での冒険に始まり最近の帝国内での闘いに至るまでを話をさせられた。

 石動がノークトゥアの好奇心をやっと満足させ、酒宴から解放されたときには、既にとっぷりと夜も更けてしまっていた。

 ほぼ徹夜明けなのに加えて、連日の酒宴と会合ですり減った精神的な疲れにより、石動は流石にフラフラになる。

 宿に戻った時には帰りが遅いと心配していたロサがいろいろと話しかけてきていたが、石動はそれすらろくに返事もせず、よろよろとベッドルームに向かうと倒れ込むようにして眠りに落ちてしまった。



 翌日、一晩寝て体力が回復した石動は、宿に迎えに来たカプリュスと落ち合って、カプリュスの知り合いが経営するという魔道具店へ向かう。


 ただ、今朝の石動はちょっとした問題を抱えていた。

 石動が朝目を覚ましてからずっと、ロサが口をきいてくれないのだ。

 どうやら二日も宿に放置されたうえ、昨晩疲れていたせいで石動がロクに返事もせず、無視したように寝てしまったのがマズかったらしい。

 ロサはすっかりむくれてしまって機嫌が悪いオーラを隠そうともしないので、石動はロサの機嫌をとりなすのに相当苦労しているのだ。


 ロサは今もずっと黙ったまま、石動の後ろをついてくる。

 石動の背中や後ろ頭に突き刺さるロサからの視線が、精神的にも物理的にもチクチクと痛く感じる。

 魔道具の用事が済んだら、帰りになにか美味しいものをロサに御馳走しよう、と石動は心の中でメモしておく。


「おお、ここだ。カルクルスというヤツがやっている店なんだが、相当な変わり者でな。

 ドワーフだというのに武具などには興味を示さず、魔道具に惚れ込んであちこちから集めまくった挙句、ついには店まで開いたという偏屈者だ。

 よほど気に入られんと、商品を売ってすら貰えんらしいぞ。気を付けろよ?」


 街中のある店の前で立ち止まったカプリュスが石動たちをみて、ニヤリと笑う。

 店の構えは街並みに溶け込んだ石造りの古びた造りだが、店だというのに看板すら見当たらず、入り口のドアに店名が書いたプレートが無造作に貼ってあるだけだ。

 事前に教えてもらわねば、魔道具店とは夢にも思わないだろう。

 なんとなく敷居が高そうな店にも見えるし、もし一人で来ていたら中に入ることすら躊躇っていたに違いない。

 カプリュスの言葉に、石動はやや緊張した面持ちで頷いた。


「おーい、居るか―!」


 店のドアを開けると、カプリュスは大声で中に向かって呼びかけた。

 石動は店の中に一歩入って驚く。外観とは違い、中は雑多な道具が無秩序に積み上げられていて、一見すると倉庫のように見えたからだ。

 しかし、改めてよく観察すると、人が一人やっと通れるような通路がいくつもあり、奥のカウンターへたどり着くまでに様々な魔道具を品定めできるようなレイアウトだと分かってきた。

 飾り気は全く無いが、無造作に高価な魔道具が積んである。それがなんとなく宝探し感があってワクワクさせられる。

 なるほど、ここは高級店とかではなく、前世界のドン〇ホーテみたいな感じなんだ、と石動はひとり納得した。確かに変わり者だ。


「なんじゃ、騒々しい。喧しいと思ったら、やはりお前か」

「オウッ、ここに居ったか。丁度いい。ちょっと見て欲しい物があるんだ」


 カウンターの奥まった場所に衝立で囲まれたブースがあり、その衝立の向こう側からヒョイと顔を覗かせた髭面のドワーフが顔を顰める。

 カプリュスは気にせず、ズカズカと近づいてカウンターに凭れかかった。


「カルクルス、紹介するぞ。こちらはザミエル殿だ。ワシの友人であり、名誉マイスターの称号を持っている。ザミエル殿、こいつがカルクルスだ」

「カルクルスさん、初めまして。ザミエルと申します」

「・・・・・・フンッ、モグラ退治の話は聞いているよ。鉱山の危機を救ってくれて感謝する」


 石動がカルクルスに挨拶すると、思いがけずカルクルスが右手を差しだしてきたので、あわてて握手に応じた。


「甥っ子が鉱山で働いていてな。モグラのせいで仕事ができず、困っていたから助けてやりたかったんだが、儂の魔道具ではどうしようもなくてな。そしたらお前さんたちが全部やっつけてくれたので、仕事を再開できたと甥っ子も喜んでいたよ」


 カルクルスはゴソゴソと衝立の中から出てくると、カウンター越しに石動たちと向き合った。


「それで、見て欲しい物ってのはなんだ?」

「はい、じつはこれなんですけど・・・・・・」


 石動はアンクレットとディアトリマの魔石を取り出した。

 カルクルスがそっとアンクレットを取り上げるとビロードの台の上に置き、虫眼鏡を取り出して検分し始めた横で、石動が話せる範囲で手に入れた経緯を話す。


「ふーん、なるほど・・・・・・いや、珍しいな。初めてみるが、これは多分、遺跡から出た古代遺物の類だろう。今の人間や亜人のレベルでは、到底造れない代物だな」

「古代遺物って・・・・・・昔の遺物の方が今の魔道具よりも優れているということですか?」

「魔法に関しては魔族が跋扈していた大昔の方がだいぶ進んでいたからな。当然、魔道具にも優れたものが多い。中には魔族自身が造ったという言い伝えのものもあるくらいだ」


 そう言いながらカルクルスはアンクレットを子細に検分していたが、顔を上げて石動の方を見る。


「ちょっと調べる時間がほしい。魔石とこいつを一緒に預かっても良いか? 少し分解して調べてみたい。魔石も加工してもいいか?」

「分解ですか・・・・・・わかりました。どちらも信用してお任せします」

「壊しゃしないよ、安心しな。二日もあれば大丈夫だと思うから、その頃また来てくれ」

「わかりました。ではお願いします」


 石動はカルクルスの言葉に頷き、頭を下げてお願いしておく。

【作者からのお願い】


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