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異世界スナイパー  ~元自衛隊員が剣と弓の異世界に転移したけど剣では敵わないので鉄砲鍛冶と暗殺者として生きていきます~   作者: マーシー・ザ・トマホーク
第三章 帝都編

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会合 ②

誤字報告をいつもありがとうございます。

「おおっ、ラタちゃん久しぶり! ていうか、薄情とか勝手言ってるけど、お前しばらく居なかっただろ? なんとなくだけど存在を感じなかったし」

「へー、そこは分かっていたんだ。まぁ、イエロシアンテラのことがあって、そっちに気が向いちゃったから、分体とのリンクがしばらく途切れがちだったのは認めるけどね。でも、ちゃんとツトムの活躍は見てたんだよ」

「帝国からクレアシス王国までの道中、結構ヤバい時もあったんだけど、何も言ってこないからどうしたんだろう、くらいは思っていたぞ。いなくなるなら、せめて一言くらい言って欲しかったなー、薄情なのはどっちだろうなー?」

「ぐぬぬ、仕方ない、お互いさまということにしといてやる」


 久しぶりに会った石動たちが賑やかに談笑していると、部屋のドアがノックされ、ドア近くに控えていたラビスがドアを開けた。

 

 開いたドアから、カプリュスが部屋に入ってきたのちに、皆に一礼する。

 手に細長い木箱のようなケースを持っていた。


「皆さま、アウルム王太子様が間もなくこちらに参られます。ご起立してお迎えください」


 石動たちがその言葉に立ちあがるのと同じくして、アウルム王太子が戸口に姿を見せた。


「ザミエル名誉マイスター、久しぶりに会えて嬉しく思います。息災のようですね?

 またエルフの郷から錬金術マスターのノークトゥア殿までいらっしゃるとは、お会いできて幸いです」

「ありがとうございます。こちらこそわざわざご足労頂き、恐悦至極に存じます」

「私の方こそ、王太子殿下にお目通り頂き、光栄に存じます」

 

 入室するなり笑顔を見せて挨拶してきたアウルム王太子へ、お辞儀をしながら石動とノークトゥアが返礼する。


 アウルム王太子が席に着いたのを確認したのち、出席者が揃ったのを見て取ったラビスが一礼し、応接室を出てからドアを閉めた。


 王太子の隣の席に座ったカプリュスが、一同の顔をぐるりと見回した。


「では、皆さん、ようこそおいでくださいました。御揃いのようですので、早速会合を始めると致しましょうか」


 そう宣言したカプリュスが、笑顔で石動を見て促す。


「ではまずこの会合の発起人であるザミエル殿、お願いします」


 頷いた石動は、挨拶も早々に、マクシミリアンからの依頼について話し始めた。


 今日の会合に参加する前まで、石動はどこまで詳しい話をするべきか悩んでいたが、この際正直に全て話すことに決めたのだ。

 そうしないと石動を信用しているドワーフやエルフ達を裏切ることになるし、その方が結果的にマクシミリアンの依頼を叶えるのに一番有効だと判断したからだ。

 

 石動はエルドラガス帝国でのシャープスライフルのデモンストレーションで大きな反響を得たことから話しはじめ、帝国内の勢力争いやマクシミリアンから受けた依頼について説明した。

 現帝王の健康状態や第二皇子と第三皇子の確執についても伝え、そのために第三皇子であるマクシミリアンが銃で武装しようとしているのだと話す。


「フム、そこまでの話はよく分かった。ザミエル殿が帝国に行くと聞いた時から、そういう申し出がいずれ来るだろうというのは誰もが予測していた話だ。さほど驚くに値しない。

 問題はその申し出を受けるべきか、断るべきか、どちらが我が国益にかなうのかということだろう。もちろん、これは当然、エルフの郷やノークトゥアム商会にとっても同様にという意味でだが」


 アウルム王太子が考え込みながら発言する。

 

「メリットとしては、現在生産している紙薬莢弾仕様のシャープスライフルを大量に販売する商売の好機であるということでしょう。クレアシス王国にもノークトゥアム商会にもエルフの郷にも全てに利益のある話です。

 デメリットとしては銃で武装したエルドラガス帝国が、将来的に他国に侵略戦争を行う可能性を否めないことです。

 その戦争相手がウィンドベルク王国であるなら多少マシですし、こちらとしては更なる商売拡大が見込めるかも知れません。

 ただ、矛先がクレアシス王国にだけ向くとは限らない。というか、シャープスライフルを帝国の仮想敵国には渡さないようにするため、銃の供給元であるクレアシス王国やエルフの郷を占領して独占しようと考える確率は高いように思われます」


 石動はアウルム王太子の疑問に答える形でメリットとデメリットをあげてみる。

 眉間のしわが深くなったアウルム王太子が石動に尋ねた。


「今の話だと、デメリットの方が大きすぎるのではないか? 無用な戦火を招きかねない申し出など、多少の利益があったとしても受け入れられるものではない」

「では、今回この申し入れを断って銃を売らなかったとしたら、どうなるでしょうか? 

 あくまで可能性ですが、第三皇子を排除した第二皇子が帝国による大陸統一を掲げて進軍してくるかもしれない。そうなればウィンドベルク王国だけでなく、クレアシス王国やエルフの郷、サントアリオスなど全ての国に軍勢が押し寄せる可能性があります」

「・・・・・・どちらにせよ、確かにその可能性はあるな。ではどうすればよいのだ?」


 石動は一同の顔を見回す。

 アウルム王太子は渋面だが、ノークトゥアとオルキス支配人は話の行方に興味津々の様子で、目を輝かせて石動を見ていた。カプリュスは既に話の行方が分かっているのでしたり顔だ。


「答えは簡単です。こちらが帝国より強力な武力を持つことで侵略させる気を起こさせなければ良いのです」


 石動の言葉が一同に染み込むのに少し時間がかかった。

 アウルム王太子が、咳払いしてから石動に尋ねる。


「ンンッ、ザミエル殿、強力な武力とはどういう意味かね?」

「文字通りの意味ですよ。現在クレアシス王国で製造中のシャープスライフルが旧型になるような新しいタイプの銃を装備する事で、仮に帝国が侵略してきても簡単に跳ね返せるだけの武力を持つということです」


 石動はポケットからシャープスライフルに使用している50-90紙薬莢弾を取り出す。


「これが現在、こちらで造られているシャープスライフルに使用している弾薬です。ご存じの通り、弾頭に巻いた蝋引きした紙の中に黒色火薬を入れたのちに閉じたものです。発射するためにはエルフの郷で造っている雷管をライフルに填めてから、ハンマーを起こして引き金を引く必要があります」


 ここまで言って、石動はまたポケットからもう一発の銃弾を取り出す。


「そしてこれが新しい50-90金属薬莢弾になります。ごらんの通り、紙薬莢弾だと紙で出来ている部分が真鍮製になっていて、弾の底に直接雷管を埋め込んであるのが特徴になります。

 したがって、雷管をいちいち銃に填める必要が無いので、装填から発砲までの時間と手間がその分短縮できます。慣れた射手なら紙薬莢弾を一発撃ち終わって次弾を撃つまでの間に、金属薬莢弾なら三発から四発は撃つことができるでしょう。

 そのうえ、弾薬の燃焼ガスの漏れが少なくなるので、より長距離の狙撃が可能になります」


 石動は金属薬莢弾を全員に見せながら、カプリュスに合図をする。


「そして紙薬莢弾よりも雨などの湿気に強いのは当然として、最大のメリットがこれです」


 石動がそう言って言葉を切ると席を立ったカプリュスが、入室の際に持参した細長い木製のケースを持ってきてテーブルに置く。

 パチッと留め金を外して木製ケースの蓋を開けると、ビロードの布地の上に置かれたライフルが姿を現した。


 昨夜、徹夜で石動とカプリュスが造ったウィンチェスターM1886ライフルだ。


 石動はケースからウィンチェスターM1886ライフルを取り出して手に取り、皆に翳して見せた。


「金属薬莢弾を使えば、銃に複数の銃弾を装填できるので、連続して射撃する事が可能になります。つまり紙薬莢弾では不可能だった連発銃を軍に装備する事で、たとえ帝国より少ない軍勢でも火力では圧倒することが可能になるのです」

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