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異世界スナイパー  ~元自衛隊員が剣と弓の異世界に転移したけど剣では敵わないので鉄砲鍛冶と暗殺者として生きていきます~   作者: マーシー・ザ・トマホーク
第三章 帝都編

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カプリュスとの再会

 長く退屈な馬車の旅の果て、ようやくクレアシス王国の王都である、虫食いのような穴が数え切れないほど空いた巨大な岩山が見えてきた。

 夕日をバックに、虫食いのような穴からは、それぞれ白く細い煙がたなびいているのがはっきりと分かる。


「ここから帝都に向かったのは、ほんの数カ月前なのに、なんだか懐かしいや・・・・・」

「そぉ? 私はそうでもないけど?」


 そんな王都を見た石動は思わずそう呟く。

 ロサは首を傾げて、そんな石動を不思議そうに見つめた。


 馬車が巨大な城門へと近づき、石動が通行証代わりに衛兵に名誉マイスターの証を見せると、衛兵はそれまでの不愛想な態度を急変させて敬礼し、笑顔を浮かべて通行を許可してくれた。


「やはりこの国では、マイスターって言うのはよっぽど偉いんだねぇ!」

「そうだそ。ザミエル親方と呼ぶといい」

 アハハと石動はロサと馬車の中で笑い合いながら、王都の城門をくぐる。


 相変わらず裾野の街は賑やかで栄えており、人通りも多く、なかでも商人や冒険者の姿が目立つ。


 石動は以前ノークトゥアム商会に紹介された「双月亭」に馬車を停め、部屋が空いているか聞いてみることにした。

 するとクロークの奥からわざわざ支配人が出てきて、石動を覚えていたようで笑顔で歓待してくれた。


 さすがに前と同じ最上階のスイートルームは空いていなかったが、支配人の厚意により四階のセミ・スイートルームともいえる広い部屋が、石動とロサへと割り当てられる。

 同じ階にフィリップ騎士らが泊まるツインルームの部屋もふたつ確保できた。四階にはシングルルームの部屋は存在しないらしい。


 もう日が陰っているので、今日は石動の部屋で、皆でそろって夕食を摂ることにした。

 明日は久しぶりにカプリュスの工房を訪ねてみよう、と石動は心の中で呟く。



 フィリップ騎士らはドワーフの工房街には入ったことがないというので、石動はロサだけでなく皆でカプリュス工房を訪問することにした。

 岩山の麓にある検問所の衛兵も、石動が名誉マイスターの証を見せると愛想よく、カプリュス工房に使いを出してくれた。


 石動は以前、銃造りのため毎日カプリュス工房に通っていた時のように直接カプリュス工房へ訪問しようかとも考えた。

 しかし今回は三人の騎士達もいるし、急に大勢で押しかけるのも何なので先に許可を取ったほうがいいのでは、と考え直したのだ。

 

 使いの返事を待つ間も、検問所の中にある待合室のような部屋に案内され、座って待つことができた。

 最初に訪れた時には不愛想な上に放置プレーをされたことを思い起こせば、まさに天と地ほどの待遇の差だ。


「ねぇ・・・・・なんだか、バタバタしてない?」

「そうだよね・・・・・。衛兵の数が多いし、何かあったのかな?」


 大人しく待合室に座って待っていると、高炉へ向かう通路を衛兵たちが血相を変えて走っていく姿が見えた。それが一度だけではなく繰り返され、なにか非常事態が起こったのではないかと部外者にも分かるほどだ。


 五人でひそひそと話していると、待合室にラビスが駆け込んできた。


「ザミエルさん! いや、今はザミエル名誉マイスターとお呼びしなければ・・・・・」

「やあラビス! 久しぶりだなぁ! 面倒だし長いから、今まで通りザミエルでいいよ」

「わかりました! 本当なら初対面の皆さんにもゆっくり挨拶したいところですが、ちょっと今、それどころでは無くて・・・・・。ザミエルさん、戻って早々申し訳ありませんが、力を貸していただけませんか?!」

「ちょっとラビス、一旦落ち着こうか。深呼吸でもする?」


 慌てているラビスの話をまとめると、こうだった。


 つい先日、突然、鉄鉱石を採掘している坑道に土竜(モグラ)の魔物が現れた。

 ミルガルズ山脈のどこからかモグラ共が掘り進めてきたのが、ドワーフ達の坑道にたまたまぶち当たってしまったようだ。

 問題なのはモグラ魔獣が結構な群れで現れたことで、確認できているだけでも200匹以上はいるらしい。


 カプリュスらは坑道の責任者からその話を聞いて、早速この国で生産し始めたシャープスライフルを持った部隊を編成し、昨日から坑道に入って駆除を始めたという。

 四人一組で前衛と後衛を担当し、数組が坑道内を手分けしてモグラ魔獣を駆除する計画だった。


 ところが実際には、狭い坑道内では長いシャープスライフルの取り回しが困難なうえに、発砲すると黒色火薬のため銃口から噴きだす発射煙が凄くて視界が奪われてしまう。

 それに加えて多数が同時に発砲すると、発砲音と衝撃波の振動で場所によっては坑道が崩れそうになり、討伐隊の安全が確保できないと撤退してきたそうだ。

 かわりの槍や弓矢ではモグラ魔獣の分厚い毛皮を貫通できず、駆除に苦慮しているらしい。


「今も別の坑道にもモグラの魔物が現れて、鉄鉱石を掘っていた坑夫が襲われ、怪我人が多数出ています。このままでは被害が広がるばかりなので、親方は一人ででも中に入ってモグラを撃ち殺してやる!と息巻いていて、皆から羽交い絞めされて止められているところなんですよ。ザミエルさんも親方を止めるのに力を貸していただけませんか?」

「分かった! じゃあ、すぐに行こう」


 

 鉱山の坑道へは、高炉から居住区へ向かう通路とは反対側に設けられた通路を通る。

 石動も高炉横の居住区への道は何度も通ってきたが、こちらは初めて通る道だ。

 ラビスに先導され、駆け足で通路を進むと、カプリュスらしき人物が怒鳴る声が聞こえてきた。


「ええぃ、放せと言うのに! あの糞モグラ共ごときワシが一人で皆殺しにしてやる!」

「無理だ! 危ないぞ! モグラの数が多すぎる! アンタひとりでなんて、自殺するようなもんだ」

「じゃあどうするって言うんだ! このまま怪我人が増えるのを黙って見てるって言うのか! それにこのまま鉄鉱石が掘れなきゃ、直に干上がっちまうぞ!」


 坑道の入り口で数人のドワーフ達が揉めていたが、やはり中心で暴れていたのはカプリュスだった。

 右手にはシャープスライフルを握り、顔を真っ赤にして怒っている。


 ラビスがそんなカプリュスに駆け寄っていき、何やら耳打ちした。

 バッという効果音が聞こえそうなほどの勢いでカプリュスが石動の方へ振り向くと、石動の姿を認めたカプリュスの表情が怒りから喜びへと変わっていく。


「ザミエル~~ッ!! 会いたかったぞ!」


 ダァ―ッと駆け寄ってきたカプリュスに、石動はあっという間に抱きしめられ、ハグというよりサバ折りされるような態勢になってしまった

 相変わらずの馬鹿力で締めあげられ、石動は息が止まりそうになる。タップしようにも両手ごと抱き抱えられていて不可能だ。

 それを見たロサが慌てて、カプリュスの耳元で喚いた。


「ちょっと親方! ザミエルを絞め殺す気なの?! 早く放して!」

「おおっ、スマン。嬉しさのあまり、つい力が入っちまった」


 石動を放すと、頭を掻きながら謝るカプリュス。

 放してくれたおかげで息をすることができ、石動もようやく一息付けた。


「お久しぶりです、カプリュス親方。積もる話もありますが、その前に片づける問題がありそうですね。簡単な事情は聞きましたが、詳しく教えてくれますか」

「本当によく来てくれたな。ザミエルが助けてくれるなら、これほど心強いものは無い。来たばかりで申し訳ないが聞いてもらって良いだろうか?」

「もちろん良いですとも。親方と私は友人なのでしょう? 友人とは困った時は助け合うものなのでは?」


 石動がそう言うと、カプリュスは薄っすらと眼に涙を浮かべて頷く。

 それからキリッと表情を引き締めると、カプリュスは石動を見た。


「では、場所を変えて話そう。こっちに来てくれ」

【作者からのお願い】


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