２ とりあえず転生したっぽい
そして、唐突に歌が流れた。しかもアニメーション付き。
こ、これは、まさに90年代アニメOP！？
可愛くて強そうなヒロインを中心に画面が、背景動画でぐるぐる回る。これはCGじゃない。止めるとこはぴたっと止まる、気持ちのよいアクション。
ヒロインが無駄に明るく走ってる。次々と現れるのは、きっとこれから仲間になったり手助けをしてくれたりするキャラクターたち。
立ちはだかるのは、敵キャラっぽいキャラクター。
ああっ！！ 最後に仲間たちに囲まれたヒロインとラスボスっぽいキャラが対峙しているシーンが止め絵になっている。
これはまさに90年代アニメにありがちな、OPでこれからの流れがめちゃくちゃわかっちゃうやつ！！
て、私こと早川直美はさっきトラックにひかれて死んでなかったか？
ということは、これは走馬燈というやつか？
それにしては、見たことがない作品だった。好きな要素はめちゃくちゃにぶっ込んであった感じではあるけれど。
あと！ OPの歌が！ あの有名女性声優だった！！ と思われる。
死ぬ前に神様が見せてくれたものだとしたら、私にとっては最高だ。
死んだら三途の川とか渡ったり、死ぬ直前には人生であったよかったことをばばーっと思い出したり、そういうもんだと思ってた。
でも、私にはこれでよかった。
ありがとう、神様。
グッバイ、人生。
て、思ったけど、どうせならこのアニメ本編も見せて欲しい。
OPだけ見せて本編見せてくれないなんてなんの拷問だよ。そりゃ、好きなアニメのOPだけ見てテンション上げることもあるけどさ。
で、いつ私の意識は無くなるのだろう。いつまで経っても意識がシャットダウンされ気配は無い。
そして、気付いた。
OPが終わってから真っ暗だったと思っていた世界。その下に出ているゲーマーの私には、めちゃくちゃ見覚えのある文字。
しかも、これ、最近のやつにしては簡素すぎる。そういえば、ディスクで読み込むゲームの黎明期にはこんな感じだったなーなんて思って感慨深い。
真っ暗な画面に白い文字だけが延々表示されている。特にキャラクターのシルエットが一緒にくっついているわけでも無く、一言アドバイスみたいなものが表示されるわけでも無い。
そう、その文字とは。
『Now Loading』
唐突に、身体の感覚があった。自分の身体を認識出来る。これは、重力。
それで、私はさっきまで身体の感覚が無かったことに気付いた。
思い返せば、ぷかぷかとどこかに浮かんでいたような？
だけど、今も世界は真っ暗だった。私は泣いていた。どうして泣いているんだろう。
自分で自分がコントロール出来ない。ここがどこなのかわからない。
身体が上手く動かない。眠い。泣き疲れた。
でも、泣くのを止めたらそれまでな気がして泣くことを止められない。
不意に、光が射した。私は目を細める。
どうしてだろう。なんだか、その光がとても優しいものに見える。
今度は影。けれど、もう真っ暗にはならない。
誰かが私のことをのぞき込んでいるのだと気付いた。
私は声を出そうとした。
今の状況がわからない。
だから、誰かが近くにいるのなら助けを求めようとした。
だが、
「あ、うう」
私の口から出たのは、弱々しく言葉にすらなっていない声だった。喉がおかしくなっているのだろうか。なんだか、いつもとは声が違う気がする。
私は光のお陰でようやく見えるようになった自分の姿を見てみる。身体が上手く動かない。
もしや、トラックにひかれて大怪我でもしているのか？ ここは病院で、私はベッドの上で包帯ぐるぐる巻きにでもなっているのか？
と、ここまでは常識的な想像。
もう一つは突拍子も無い妄想。
転生しちゃっているということも考えられる。
ま、よくあるといえばよくあることなんだが。ラノベとかアニメならって話なんだけど。
ようやく手が見えた。
まんまるでもちもちっとした、ちっちゃなおてて。
可愛らしいね！
ア、ハイ、やっぱり後者の方でした。ありがとうございます。
私、子ども(幼児)になっているの確定です。
ということは、転生ですかね。
出来れば異世界がいいです。
異世界だとしたら、もしかして、さっきのOPの続きが見られるんですか！？
ってことは、OPは転生するときの特典だったんですかね？
