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19 子どもの嫌いなものは異世界共通

「それにね」


 今、思った。けど、それはきっと楽しい。絶対楽しい。


「私、テネリと冒険したい!」

「えう!?」


 一人より二人。大体冒険者のパーティーって何人かいるし、どうせならバランス良く揃えたいよね。旅は道連れ世は情け。どういう意味だっけ? とりあえず、わいわいしてた楽しいってことだ。


「テネリなら私よりしっかりしてるから、いてくれたら安心だしさ。森の中でも迷子にならないし、一緒にいると楽しいし!」

「あ、あうあう」


 しまった。また詰め寄ってしまった。


「あ」


 そして、重大なことを思い出した。


「エルフって、成長速度が人間と違ったりする?」


 ファンタジー世界においてエルフは長寿の一族だ。だったら、私が冒険者になれるような年齢になってもテネリはこのままだったりして……。テネリが旅に出られるようになる頃には、私はおばあちゃんになってるとか……。


「ううん」


 テネリが首を横に振る。

 ほっ。だったら、この世界のエルフってどうなってるの?


「確かに僕たちエルフは人間に比べたら長寿だよ。でも、成長のしかたはちょっと違うんだ。青年くらいになるまでは人間とほぼ同じ速度で成長して、それからは青年期が長いんだよ。だからリュリューとあんまり変わらないと思う。今は」

「へえ、そうなんだ」


 この辺、ファンタジーでも作品によってエルフの扱いは違う。説明してもらって納得する。それなら、一緒に旅に出るのは問題ないってことだ。

 神様ありがとう。都合のいい設定にしてくれて!


「それなら、一緒に大きくなれるから問題ないね!」

「そこは、そうだけど……」


 言いにくそうに、テネリが口籠もる。なにか他に問題でも?


「リュリューって、すごく強い魔法が使えるとか、剣の修行をしてるとか強いとか、そういうの、ある?」

「ないよ」

「そうだよね」


 あっけらかんと答えた私にテネリが、がくりと肩を落とす。


「ああ、そっか! 冒険者になるにはそういうのいるか!」


 突出した才能とか、勇者の素質とか、主人公にはありがちだ。チート能力ないな~とは思ってたけど、何も無いと冒険者ってなりにくいか。


「別に大丈夫じゃない?」

「ええ~、そうかなぁ」

「そうそう」

「だって、お話の中の冒険者はみんな何かすごいことが出来たりするよ」

「それはお話の中でしょ。別に何も無いと旅に出られないわけでもなし大丈夫だよ。やろうと思えばなんとかなるって!」


 あっはっは、と私は笑う。

 そういえばファンタジーの主人公って大体何か持ってるか。村人Aじゃ、なんも出来ないよね。スローライフ系の異世界転生でも結局、主人公にはなにかしらの能力があるわけだし。めちゃくちゃ地味な能力だったりするけど、それが意外と重要だったりするやつだ。

 でも、無いものはしょうがない。そんでもって、無いからって諦めるのは嫌だ。

 諦めなければなんとかなる。それも、アニメや小説、ゲームから学んだものだ。主人公は何があっても自分のやるべきことを絶対に諦めない。最後までやり通す。

 現実なら打ち砕かれることもある。だけど、ファンタジーなこの世界ならきっと!


「そういうテネリは? 何かある?」

「う、……僕も、無い……」


 テネリが下を向いてしまう。そんなテネリの背中を私はばんばん叩いた。


「あう~、なにするの」


 テネリは恨めしそうな目で私のことを見る。なんだかすでに諦めモードに入っているようだ。


「大丈夫、大丈夫。元気があればなんでも出来る!」


 無駄に胸を張って堂々と宣言。

 マジで子どもになってから元気も有り余ってるし、何でも出来る気がしてくる。子どもの頃ってこんなに身体が軽かったんだなぁ。アラフォーの身体、今思うと結構重かったから。


「全く、リュリューはしょうがないなぁ」


 くすりとテネリが笑った。


「そうだよね。やる前からあきらめてちゃダメだよね」

「テネリ!」


 アニメならちょっと感動的な音楽が流れてくるところだ。


「テネリー!」


 テネリをがばぁっと抱きしめる。


「ふわああああぁぁぁぁ!」


 テネリの悲鳴が響き渡る。全く照れ屋さんなんだから。


「大きくなったら一緒に冒険者になろうね! 約束だよ!」

「わ、わ、わ! なるよ~、なるから離して~~~~」

「やったー!」


 身体を離してテネリの顔を見ると、彼女は耳まで真っ赤になっていた。エルフってわかりやすいな。

 こほん、とテネリが大人みたいに咳払いする。


「もう、リュリュー一人だと不安だから、僕もがんばらないとね」

「なにそれ~。私そんなに頼りない?」

「頼りなくはないけど、なんか心配」

「むう。テネリだって弱そうなのに」

「う、ひどい」


 あれ? 冗談で言ったのに意外と傷付いてる?


「ごめんごめん。だって身体弱いって言ってたし」

「うん。でも、大人になったら大丈夫になるって言われたもん。僕、がんばる。ニンジンも食べる! 強くなる!」

「じゃあ、私もピーマン食べる!」


 あ、ほうれん草の方が強くなりそうかな? 缶詰のやつ。


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