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17 それってフラグですよね?

「やっぱり、冒険者になるのって難しいのかな」

「ぼ、冒険者!?」


 呟いた私に、テネリがいい反応を返してくれる。思っていた以上に冒険者になるのは珍しいことなんだろうか。

 エルフのテネリなら人間とは常識が違うかもしれないのではないかと思って話してみたのだ。あるいはお父さんが極度の心配性だから止めていただけかもしれないと、ちょっぴり勘ぐっていたのもある。

 せっかく命を救った子どもが自ら危険な目に遭いに行きたいなんて言い出したら止めたくなるのも当たり前かもしれないが。


「ぼ、冒険者になるなんて、僕、考えたことも無くて……」

「そうなの?」

「エルフはあんまり自分たちの住んでる森の外には出ないしね」

「そっかあ」


 テネリと並んでふかふかの草むらに座っていた私は、ごろんと転がった。ここでラジオとかあればいい感じなんだが。

 テネリとは、初めて会ったときから数日後に森の中で再会することが出来た。薬草摘みをお父さんが私に任せてくれるようになったからだ。テネリは私との約束が気になって家の近くまで来ていて、私はテネリにもう一度会いたくて迷子にはならない程度に森の中を探していた。で、運良く会うことが出来たというわけだ。

 それからテネリとはこうして何日かに一度、森の中で会って話をしたりしている。テネリが薬草摘みを手伝ってくれるから、本来の仕事の方は早く済ませることが出来る。さすがエルフ。


 今日もすでにカゴの中はお父さんに頼まれた薬草でいっぱいになっている。おかげでゆっくり話す時間も取れて万々歳なわけです。薬草を採りに行くという理由があればお父さんにも怪しまれないし。


「そんなこと言って、お父さんは心配しないの?」

「してる」

「そうだよね」

「というか大反対されたよ。絶対ダメです! なんてさ」

「当たり前だよ。冒険者なんて危ないこと。この辺は大丈夫だけど、他の場所には怖いモンスターがたくさんいるんだよ」

「そうなの?」

「え? 知らないの?」

「そういうの、お父さんあんまり話してくれないから。魔王がいたことだって最近知ったくらいだよ」


 はあ、と私はため息を吐く。


「いた? 魔王はまだいるよ?」

「え!?」

「あ、あう」


 思わずがばっと勢いよく起き上がってしまった。テネリがびくんと震える。なんというか、少しのことですぐに驚くのは可愛い。私と違って、か弱い女の子感がすごい。可愛くて羨ましいくらいだ。

 て、そんなことより、


「魔王って、まだいるの?」

「え、う、うん。封印されてるだけって聞いたよ。人間のところには伝わってないのかな?」

「封印……、それなら、また復活するって可能性も……」

「え、ええっ!? 怖いこと言わないでよう」

「あ、ごめん。ちょっとわくわくしちゃって」

「わくわく!? 今の話のどこで!? リュリュー、変だよ」

「でへへ」


 テネリが困惑している。私は誤魔化すように笑ってみせた。

 確かに、魔王が復活するなんて話をしてわくわくするなんて頭がおかしいと思われるかもしれない。村で他の子どもには話さなくてよかったな、なんて思う。

 それにしても、魔王って倒されているわけではなかったのか。確かにもういないとは聞いたけど、倒されたかどうかは聞いてなかった。


「そっか、封印かぁ」

「そうだよ、封印だよ。勇者様とそのお仲間がちゃんと封印したから安心なんだよ」

「安心かぁ。でも、何事も絶対は無いよね」


 封印は続編へのフラグ。完全に倒さないのはワンチャン作品に人気が出たら続きを作る為なのだ。


「あ、あう。リュリュー、さっきからどうして怖いことばっかり言うの?」


 テネリが涙目になっている。


「ごめんごめん。はい、ハンカチ」

「うう」


 ちょんちょん、と可愛くテネリが涙を拭く。

 そうだよね。魔王って怖いものだよね。モンスターだってそうだ。私の、この身体の両親を殺したような存在なんだから。いまいち実感が無いのがいけないんだが。

 確かに復活なんかされたら、この世界が大変なことになってしまうのかもしれない。テネリもこんなに怖がっているし、本当に恐ろしい存在なんだろう。


「それじゃ、魔王のことは一旦置いといて」

「置いとくの!?」

「冒険者には、なりたいなぁ」

「どうして? 怖いモンスターもいるのに?」

「そりゃ、モンスターもいるかもしれないけどさ、せっかくこの世界に生まれたんだから(正確には転生したんだけど)色んな場所を、色んなものを見てみたくない? 私、知らないところに行くのってわくわくするんだ。だから冒険者になりたいの。だって冒険だよ。ああ、冒険って言葉だけで背中がぞくぞくってするよね」

「……ぼう、けん?」


 テネリが目をぱちくりさせている。


「うん、冒険!」


 私は、ばっと手を広げて立ち上がった。


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